IBF世界フェザー級10位の阿部麗也、彼の代名詞は「天才」だ。
阿部の好きな漫画、「スラムダンク」の主人公・桜木花道が自身を「天才」と称している姿に影響を受け、自称するうちに周りにも浸透したという。
その阿部のボクシングスタイルはまさに天才的。サウスポーで低いガードが特徴だ。
ガードを下げると、スムーズにパンチが打ち込めるだけでなく、相手にとって軌道が読みづらくなる利点がある。
しかしその反面、パンチをもらうリスクは大きくなる。
私も現役時代の一時期、試したことがあるが、人並外れた運動神経と度胸を併せ持たなければ使いこなせない戦い方だ。
「人と違った戦い方をしたい」と試行錯誤した末にたどり着いた現在のスタイルを、阿部はこのように語る。
「ガードを下げてトリッキーに戦う部分もありつつ、距離やタイミングとか、勘で戦うボクシングが得意です」
対戦相手にとって低いガードというのは、トリッキーなだけではない。
パンチが当たりそうではあるが、打ち終わりに反撃のカウンターをもらいやすいため不用意にパンチが打てなくなる。
優れた距離の感覚と、相手を躊躇させる一発があるからこそ可能なスタイルでもあるのだ。それに加え、練習でも勘の良さとパンチを当てるタイミングに優れているのが垣間見え、天性の才能を感じさせた。
15日には日本王者でIBF6位、WBC8位と世界ランキングにも名を連ねている丸田陽七太と、日本王座、WBOアジアパシフィック王座の2冠をかけて戦う。
タイトル挑戦は実に3度目。「タイトルを取っていない選手が、3回も挑戦できるチャンスってなかなかないと思うので、ここで取りたいし、何より周囲の期待に応えたい。自分のボクシング人生で分岐点になる試合ですね」と話している。
強敵相手にチャンスを物にできるか、阿部のボクシング人生を懸けた試合に注目だ。
阿部麗也(あべ・れいや)
福島県耶麻郡出身、29歳、KG大和ボクシングジム所属、全日本スーパーフェザー級新人王。戦績は26戦22勝3敗1分(10KO)。ラーメンの食べ歩きが趣味。
【木村悠「チャンピオンの視点」】写真提供=©甲斐 誠