女子5階級王者の藤岡奈穂子は9日に行われるフライ級統一戦に向けて、3日、成田空港からアメリカへ飛び立った。
出発直前に行った取材では、前回の試合前に起こったハプニングについて話してくれた。
「航空機のチケットが出発の2日前に来たんです。神経質な人だったら身が持たないかもしれませんね」
海外で試合することが多い藤岡は、このような“想定外”は、ままあることだと話す。ラウンド時間が2分か3分、どちらになるか試合ギリギリになって決定することすらあるそうだ。藤岡の言う通り、神経質な選手であれば耐えられないだろう。
今回試合をするのは、自身初となるテキサス。
「現地に行ってから考えますが、練習できる場所がほぼないんですよね。だからホテルのプールサイドとか、会議室借りたりとか、動ければどこでもいいという感覚です」
タイトルマッチを控えた選手にとって望ましい環境ではないが、藤岡は動じない。
「できないことが多いので、アップも試合前に入念にはやりません。だから、普段の練習の時でもあまりアップはしないようにしています」
そのような状況で、いつでも取り組めるトレーニングがシャドーだ。
見ると、足の動きに連動してパンチを打ち込んでいるのが分かる。中南米の選手に多く見られるスタイルだ。
ステップしながら打つのと違い、足と連動して打つことで手数が止まらず、藤岡の特長である無尽蔵のスタミナでヒット数も比例して上がる。
海外で戦うのはリスクもある反面、大きなリターンもある。自らの能力を最大限に引き出すスタイルにたどり着いたことに加え、プロとしての報酬もそうだ。
「チケットを売らなくていいし、現金でファイトマネーをもらえる。海外で試合をする選手が増えればファイトマネーも増えて魅力的な業界になる」
稼げる選手が増えれば、女子プロボクシングも活性化していく。勝利すれば更なるビッグマッチへの道が開ける。
「最終的には(私を)目指してもらえる存在になればいい」
女子ボクシング界のレジェンド藤岡の挑戦は続いていく。
藤岡奈穂子(ふじおか・なおこ)
宮城県古川市出身、46歳、竹原慎二&畑山隆則ボクサ・フィットネス・ジム所属、元WBC女子世界ミニフライ級王者、元WBA女子世界スーパーフライ級王者、元WBO女子世界バンタム級王者、元WBO女子世界ライトフライ級王者、現WBA女子世界フライ級王者。戦績は22戦19勝(7KO)2敗1分。日本人初の世界5階級制覇王者。
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