最近、写真集に新たな風が吹いている。すでに知名度や実績のある女性タレントが30代になって新たな魅力を発するため、写真集を発売し始めているという。
たとえば“一般人”と名乗っているが、現在もSNSを中心に活動する木下優樹菜(34)は今年3月に「CORRECT」(双葉社)を発売。
“おバカタレント”の代名詞だった鈴木奈々さん(33)も今月に念願のバストアップ達成記念として、大胆に胸元アピールした写真集「Vivace」(講談社)を発売している。
そのほかにも、今年2月には女優の比嘉愛未さん(35)が「本心」(集英社)を発売。6月にはタレントの中川翔子さん(36)の写真集発売が予定されているのだ。
さらに昨年を振り返ってみても、一時は不倫や裁判沙汰といった波乱のイメージもあったゴマキこと後藤真希(36)が21年11月に写真集「ramus」(講談社)を発売。往年のファン層を燃え上がらせていた。
芸能人として一定のキャリアを築きながら名実ともに“ひと肌脱ぐ”というのは、今やそんな不思議なことでもなくなってきているという。コラムニストのおおしまりえさんは「流れのきっかけになったのは、田中みな実さんの成功事例」と分析する。以下、その理由とは――。
■田中みな実の写真集成功が見せた3つの活路
発売前は、批判の声も多かった田中みな実さんの写真集。しかしフタを開ければ、『オリコン年間BOOKランキング2020』の写真集部門で1位を獲得。同ランキングが集計した売り上げ部数も写真集部門で歴代1位を記録し、多くの注目を集めることとなりました。
この成功は、現在続く30代女性芸能人の写真集ブームのきっかけになっていると思います。
理由は3つあります。1つは、写真集を販売することで新たなファン層の獲得につながるという前例ができたことです。
田中さんは写真集発売によって男性ファンだけでなく美意識の高い女性ファンをもガッチリつかみ、現在の美容インフルエンサーとしての立ち位置を確固たるものにしました。
写真集で魅力を遺憾なく発揮することで、新しいキャラ付けができる。そうした狙いから本来はセクシーさを前に出さなくても十分やれるのに、あえて戦略的に出している人たちはいるのではないでしょうか。
2つめは、“ヘルシーなセクシーさ”は年代に関係なく歓迎されるという事実です。
田中みな実さんであれば、自身もかなりこだわりぬいたと公言していたヒップラインが話題になりました。本来であれば“エロ”の一言で片付けられてしまいがちな要素です。しかしそれも見せ方によっては“ヘルシーなセクシー”として表現でき、そして歓迎されるという事実があの写真集にはありました。
筆者も田中さんの写真集は購入しましたが、非常に美しく、かつ生々しいエロさはまったく感じさせない作りだという印象を持ちました。
現在も続く写真集ブームも同じです。それぞれが度合いは違いますが、健康的なセクシーさをウリにしています。
セクシーさは年齢などの垣根を超え、多くの人に好意的に伝わるコンテンツである。そんな認知が、今のブームにもあるように思います。
3つめは、良くも悪くも話題を取れるという良さでしょう。
木下優樹菜さんや鈴木奈々さんといった意外な人物の写真集は話題の大きさに差はありますが、どちらも注目を集めました。タレントとしての活動は今や「話題づくりをどうするか」が重要です。写真集販売という選択はある意味、当たり前すぎて見逃していたチャレンジと言えるのかもしれません。
■増え続ける写真集販売の2つの懸念点
こうして振り返ると、実は写真集販売というのはきちんと売らなくてはいけないリスクこそあれど、チャレンジ自体はタレントにとって良い側面のほうが多いように思います。
とはいえ今後も増えるであろう30代芸能人の写真集販売には、いくつか懸念もあります。
1つはそもそもブームが続いて数が増えていくなかで、本来の良さであったヘルシーなセクシーさがどんどん過激になることです。
こうなると、本来のメリットであった新たなファン層の獲得や好意的な印象といったものは削がれていきます。
2つめは写真集をきっかけにエロさへの需要がタレント自身に増えてしまうという、本来の目的とは違うキャラ付けがなされてしまうリスクです。
田中さんの場合は写真集でセクシーな体を披露したものの、現在は美容としてのバストやヒップアピール以外での露出は封印している印象です。戦略的にアピールしても、その後はセクシーさをダラダラと引きずらないという潔さも感じます。
ブームに乗る人たちは、ここまで考えているのか。たとえばすでに写真集を発売し、貧乳コンプレックスを脱却したという鈴木奈々さんは今も大きくなったバストをアピールしています。美しいバストは素敵ですが、果たしてそればかり推す彼女に人は魅力を感じるのか。キャラ付けの難しさを覚えます。
YouTuberやインフルエンサーとタレントの垣根がなくなっていく昨今。写真集という従来のアピール方法が新たな活路として注目されるのには、このような理由があるのかもしれません。今後は誰が写真集というチャレンジに乗っかるのか。皆さんの頭の中には、予想がありますか?
(文:おおしまりえ)