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冷たい風が吹く皇居・東御苑で、1月20日に皇宮警察本部の年頭視閲式が行われた。この行事はコロナ禍のため中止されており、3年ぶりの開催だった。
護衛官のシンボルである赤い肩紐を着けた総勢280人が、険しい面持ちで並んでいる。彼らが緊張していたのは、天皇皇后両陛下が、初めてそろってこの式典に出席されていたからだ。
「年頭視閲式は1985年に初めて実施され、皇宮警察の新年を飾る恒例行事となっています。創立100周年だった1986年に、皇太子となられる前の天皇陛下が出席されたことはありましたが、天皇皇后両陛下のご出席は初めて。これまで一度もなかったわけで、きわめて異例のご臨席であるといえます」(宮内庁関係者)
天皇陛下とともに会場に到着された雅子さまは、淡いベージュのロングコートをお召しになり、帽子を目深にかぶられていたが、時折厳しい表情も見せられて――。
「昨年6月に『週刊新潮』が、皇宮警察内部で皇族方への悪口が横行していると報じました。幹部職員が学習院初等科時代の愛子さまを、陰で侮蔑的な言葉で呼んでいたり、渋滞にはまって苛立つ紀子さまの表情を“般若”と揶揄する職員もいるなど、皇室の方々を守るための組織で“皇族誹謗がはびこっている”という記事の内容は衝撃的でした」(皇室担当記者)
報道から半年がたったが、皇室の方々と皇宮警察の間にできた溝は、浅くなかったようだ。
「報道後に、両陛下や秋篠宮家など各宮家に対して、皇宮警察幹部が“お詫び行脚”を行いました。特に愛子さまへの誹謗は幹部職員によるものと報じられており、陛下と雅子さまもひどく心を痛められていたと聞いております。以来、宮内庁内では皇宮警察への不信感が高まっていました」(前出・皇室担当記者)
雅子さまは“母の覚悟”を固めて年頭視閲式に臨まれていた。
「皇室の方々の護衛を担当する護衛官のことを側衛官といいます。彼らは時間と場所を問わず、常に安全を守るために皆さまの側にいます。お互いの信頼関係がなければ、公務もスムーズに行えません。
またそうした背景から、側衛官人事は護衛対象となる皇室の方々の意向も考慮しつつ行われます。ある皇族が、こんなことをおっしゃっていました。
『家族よりも一緒にいる時間が長く、いつも話をしています。気が合う人でなければ、一緒に行動できません』と……。
雅子さまも同じ気持ちをお持ちだと拝察しますし、一時は大切な愛子さまを傷つけるような言葉が飛び交っていたとしても、失われた信頼関係を再生しなければならないと、かねてお考えになっていたのだと思います。式典での真摯なご姿勢からは、改めてそのご覚悟の強さを感じました」(前出・宮内庁関係者)
■両陛下もご心痛を…始動した意識改革
2019年には皇宮警察学校の懇親会での未成年飲酒、護衛官4人が飲酒後にみだらな行為に及んでいたという不祥事が起きた。2020年には男性護衛官による入浴中の女性護衛官に対する“のぞき事件”と、“誹謗はびこり報道”のほかにも皇宮警察の失態がたびたび報じられてきたが――。
「昨年1月に、天皇ご一家を担当する護衛1課の護衛官がパチンコ店で上着3点を盗み、窃盗容疑で逮捕されています。毎年のように不祥事が起こっていることから、2022年度から首席監察官というポストが新設されたほどでした。
こうした状況にもかかわらず、陛下と雅子さまは“皆さんを信頼しているし、これからもお世話になる感謝の気持ちを表したい”というお考えを示すために、年頭視閲式へ初めて出席することをお二人で決断されたのです。
そのことが皇宮警察全体の意識改革につながり、愛子さまをはじめ皇族への悪口に代表されるような、規律の緩みやモラルの低下もなくせると考えられたのです」(前出・宮内庁関係者)
皇室ジャーナリストの久能靖さんはこう語る。
「コロナ禍のため、両陛下は御用邸でのご静養を中止されていますが、それは皇宮護衛官など多くの人員へ感染対策などで負担をかけたくないというご配慮があったからなのだと思います。年頭視閲式へのご臨席も、皇宮警察全体に対する特別なご配慮を示されるためだったといえるでしょう」
そんな両陛下のご決意が皇宮警察にも通じたのか、リハーサルには例年とは異なる空気が漂っていたという。前出の皇室担当記者は、
「1月16日、氷雨が降るなか懸命に行っていたと聞きました。何度も取材してきましたが、久しぶりの実施という以上に、両陛下の初めてのご臨席に向けて奮い立ち、かなり力を入れてリハーサルを行ったのでしょう。
年頭視閲式は皇宮警察のなかで最も晴れがましい行事とされています。そうした場を両陛下が視察されるとあっては、栄誉に感じないはずはありません」
皇宮護衛官の赤い肩紐は、皇室への“赤誠”を表すという。雅子さまの異例の陣頭視察が、失われつつあった護衛官の真摯さを再び呼び覚ます。