岸田首相の会見でも具体的な費用については言及されず(写真:共同通信)
報道各社の世論調査では、国葬に「反対」が「賛成」を上回っている。なかでも、国葬に投入される費用(税金)の問題が、国民からの不信感を倍増させている。政府が閣議決定した約2億5千万円の費用に含まれていないことが指摘されているのが「警備費」だ。元警視庁公安部の所属で現在はセキュリティコンサルタントの勝丸円覚氏は次のように語る。
「昭和天皇の『大喪の礼』で警察官が3万2千人動員されて、かかった警備関係費用が24億3千600万円。’19年10月の『即位礼正殿の儀』では、警察官が2万6千人動員され、警備関係費用は28億5千万円でした。これらをベースに算出すると、警備費は35億円と推定されます」
金額が膨らむとした最大のポイントは、安倍元首相が凶弾に倒れたことを受けて行われる国葬警備であること。警察にとって、二度と警備の不手際は許されないからだ。
「G7サミット、米国大統領来日時などの大規模警備でもかなり厳重なのですが、それ以上の警備態勢が敷かれることが予想されます。少なくとも警察官は3万人。警備態勢の規模によっては、4万人以上動員される可能性もあります」
勝丸氏によると、仮に4万人の警察官が動員された場合、全国の道府県警から応援部隊が2万人以上は派遣されるという。
そして国葬費用の“まやかし”は、警備費だけではない。今回海外から参列する要人の「接遇費」についても、政府は「規定の予算で対応する」というのみで、具体的に説明していないのだ。接遇費とは、外国要人のおもてなしにかかる経費。所管するのは外務省である。
内閣府の皇位継承式典事務局(’21年4月1日廃止)の資料によると、外務省は’19年度予算で、191の国と国際機関などの代表が参列した「即位礼正殿の儀」に伴う「接遇等を実施するための費用」を約51億円計上している。昨年7月、東京新聞が「即位礼正殿の儀」等の支出額を独自調査した記事には、接遇等の費用のうち、外国元首らのホテル代を含む滞在費が31億3千万円を超えていたと報告している。
■外交儀礼上、接遇等の経費がかなり使われること……
祝賀行事と国葬とでは当然おもてなしの内容も違ってくるだろうが、今回もおよそ200の国と地域から要人が参列するといわれている。仮に同規模の数の外国要人を「即位礼正殿の儀」と同様に接遇した場合、約31億円の経費が追加されることに。これを政府が発表した2億5千万円、本誌が試算した35億円と合わせると、国葬費用はなんと約70億円に膨れ上がる。
本誌は外務省に対し、この「接遇費」が具体的に何に充てられる費用なのかなどを聞いたところ、書面で次のような回答があった。
《今回の国葬儀に関しては、海外から参列する要人は招待という形はとっておらず、旅費、滞在費等は先方負担の予定です。接遇経費の見込みについては、国外からの参列される接遇を要する要人の数、各国首脳とのバイ会談の有無等が不確定であることから、現時点で確たることを申し上げられる段階ではありません》(外務省大臣官房報道課)
要人たちの旅費、滞在費等は負担しない“予定”ということだが、まだ決定ではないとも読み取れる。そして接遇の具体的な中身についての回答は得られなかった。
「日本側が参列する要人に対して何も負担しないとは考えられません。政府は今回の国葬を“弔問外交”の場であると、ハッキリと言っています。首脳同士が会談する外交の場で、費用はそちら側でお願いしますだなんて、外交儀礼上ありえません。接遇等の経費をかなり使うのではないでしょうか」
こう語るのは、国葬費用を巡り、国会内で政府側と野党合同のヒアリングに参加している、立憲民主党の渡辺周衆議院議員だ。渡辺議員によると、本年度の外務省本省一般行政に必要な経費の中に、「丁費」という名目の予備費が約32億5千万円あるそうだ。さらに「報償費」と言われる、いわゆる「外交機密費」が10億円計上されているという。
「世界中から弔問に来られる要人とともに、各国にいる日本大使館職員も随行するはずです。その旅費は接遇費に含まれるでしょう。外交ですから予備費から捻出されると思いますが、もし予備費で足りなければ、外交機密費からも充当するでしょう。もちろん、すべて国民の税金です」(渡辺議員)
さらに、機密費は使途が明らかにされない項目であり、そこから費用が捻出された場合、その分は国葬の経費に計上されないという。1日、松野博一官房長官は会見で、国葬の経費総額について「国葬儀後に精査のうえ、できる限り速やかに示したい」と、実施前の公表はしないと明言した。
「国葬まで1カ月を切った段階で、政府はどこの国の誰が、何人来るかわからないから金額は示せないと言っている。そもそも国会を通さずに国葬を決め、経費は終わった後に示す。こんなバカな話、国民が納得するはずがありません。おそらく国葬後、国民の関心がなくなったころに経費総額をひっそりと発表するのではないでしょうか」(渡辺議員)
血税がいったいどんな使い方をされたのか、私たち国民には知る権利があるはずなのだが。