3月22日、韓国・ソウルで行われたパドレスとの開幕シリーズを終えたドジャース・大谷翔平選手(29)はロスに戻るため、仁川国際空港のロビーを通り過ぎた。2~3歩後ろには柔和な表情の妻・真美子さん(27)の姿が。だが、エンゼルス時代からの盟友・水原一平氏(39)はそこにいなかった。
「大谷選手は水原氏の事件発覚後、一切ノーコメントを貫き、ロス到着後もメディアの前に姿を見せることなく、空港を後にしたそうです」(スポーツ紙記者)
21日、スポーツ専門局「ESPN」や『ロサンゼルス・タイムズ』などの米メディアが「巨額の窃盗の疑い」で水原氏がドジャースから解雇されたと一斉に報じた。
「報道の概要は、水原氏が違法賭博で連邦政府の捜査を受けているブックメーカー(賭博業者)のM・ボウヤー氏にギャンブルの借金を負っているということ。また、大谷選手名義の銀行口座から、その業者に450万ドル(約6億8千万円)が電子送金されたことで水原氏は球団に解雇されたというものでした。
当初はこの送金について、大谷選手の広報は“水原氏の借金を肩代わりするために大谷が払った”と明かしていました。水原氏も『ESPN』の電話インタビューで、巨額の借金の返済を大谷選手に頼み、快く思われなかったが補填を承諾してくれたと話していました」(スポーツ紙記者)
水原氏は20日の試合後、ドジャースの選手たちの前で謝罪し、「すべては自分が悪い。私はギャンブル依存症だ」と語ったという。
「その後、大谷選手側が“肩代わり”を否定すると、水原氏も『大谷選手は賭博による借金について何も知らなかった』と発言を撤回したのです。さらに大谷選手の代理人弁護士は新たに《翔平が巨額な窃盗の被害者であることが判明し、捜査当局に問題を引き渡します》と声明を発表しました」(前出・スポーツ紙記者)
■「ベットする? 勝ったらいいなあ」
水原氏のスポーツ賭博は、現地の野球関係者の間では知られていた話だったようだ。在米ジャーナリストはこう語る。
「水原氏と親しい人によれば、2年前ほど前から、バスケットボールとサッカーの試合で『どっちが勝つかベットする(賭ける)? 勝ったらいいなぁ』といった会話が何度かあったそうです。スポーツ賭博はカリフォルニア州では違法ですが、38州では合法。ゲーム感覚なので水原氏もハマっていたのかもしれませんが、まさかそれほど巨額の賭けだったとは……」
今後、水原氏にはどのような処罰が下されるのだろうか。ニューヨーク州とカリフォルニア州の弁護士資格を持つ国際弁護士の清原博さんはこう語る。
「日本の法律とは違い、アメリカの法律は量刑が詳細に分類されているので、どういった罪状になるのかで変わってきます。カリフォルニア州の刑法で違法賭博罪となると、6カ月以下の禁錮刑または1千ドル(約15万円)以下の罰金刑になります。大谷選手の代理人は窃盗を主張していると報じられていますが、カリフォルニア州の刑法では窃盗罪は3年以下の禁錮刑または1千ドル以下の罰金刑です」
捜査が行われ、水原氏が起訴されれば裁判ということになる。
「また今回の件は、FBIの違法スポーツ賭博についての捜査の過程で発覚しています。水原氏は米国では外国人ですから、捜査の上で逃亡の恐れがあると捜査当局が判断した場合には逮捕状が出る可能性もあります。横領罪となれば量刑は重くなり、6年以下の禁錮刑または50万ドル(7千500万円)以下の罰金刑です。今後は水原氏が違法性を認識していたのか、大谷選手が賭博について知っていたのかが捜査の焦点となるでしょう。
また、当初の説明のように大谷選手自身が違法性を知ったうえで送金したのであれば、違法賭博に加担したと見なされ、責任を問われる可能性もあります」(前出・清原弁護士)
昨年6月、本誌は大谷を長年支えていた水原氏の奮闘を“10刀流”と報じた。(1)通訳、(2)ボディガード、(3)グルメ情報収集、(4)キャッチボールの相手役、(5)運転手、(6)トレーニングサポーター、(7)動画撮影カメラマン、(8)審判の心理分析、(9)メンタルサポーター、そして(10)友人――突然、その相棒を大谷は失ったのだ。
「ロッカールームで水原氏の告白を聞いた大谷選手は激しく動揺していたそうです。盟友のトラブルで想像を超える事態に巻き込まれたことに、とても傷ついたと聞いています」(前出・スポーツ紙記者)
傷心の大谷を支えるのは、やはり家族だった。水原氏の解雇で騒然となった開幕第2戦、観客席には大谷の父・徹さん、母・加代子さんの姿が。そして、間に挟まれる形で、左手薬指の指輪が輝く真美子さんが声援を送っていた。
「試合後、真美子夫人はグラウンドに降り、『ドジャース夫人会』の記念撮影を行いました。
同会の公式インスタグラムに投稿された記念撮影写真では、30人近い夫人たちが集まり、真美子さんは3列目の右端に。隣の夫人の肩に腕を回したり、笑い合ったり、素晴らしいコミュニケーション能力を発揮していました」(前出・スポーツ紙記者)
■傍らにいることが妻である自分の役目
大谷が水原氏と親しくなったのは日本ハム在籍時代の’14年だった。当時を知る元日本ハムの打撃コーチ、柏原純一さんは言う。
「一平は当時在籍していたメンドーサ選手の通訳をしていて、2人の仲がとてもよかったんです。その輪に翔平が入ったようですね。翔平が渡米を意識し始めてから、一平との距離が近づいた感じがしました。英語やメジャーの流儀など、わからないことが多かったからでしょう。だから僕は、一平の最大の功績は、翔平の“不安感”を取り除いてあげたことだと思っています」
スポーツジャーナリストの小林信也さんも言う。
「大谷選手のいままでの発言からは奥さんに“これを期待する”といった部分がないです。水原氏のほうが、女房役でもありましたね。むしろ奥さんがこれから、“水原ロス”の空白を埋めなければならない感じがします」
冒頭の仁川国際空港では、硬い表情の大谷に対し、真美子夫人の笑顔が際立っていた。前出の在米ジャーナリストは言う。
「水原氏の件は本当にショックで、感情豊かな真美子夫人は思わず涙を流してしまったようです。ただ、すぐに“誰よりも悲しいのは翔平さんだ”と思い直し、彼のつらさや今後の不安をどうやったら取り除けるか考えたそうです。の結果、今季は全試合、大谷選手に同行して観戦し、彼の傍らにいることが妻である自分の役目だと心に決めたといいます」
『メジャーリーグ・完全データ選手名鑑』の著者で、スポーツライターの友成那智さんは言う。
「水原氏の不在で当面、大谷選手は日常生活の不便さを感じるはずです。特に遠征先では、ほとんど水原氏が買い出しなどの手配をされていたようですから……。メジャーリーガーは専用機で移動しますから、家族を連れて動く選手は多数います。特に夏休み中は、約3カ月間あるので子供連れが多いです。1カ月ぐらいは同行するケースも少なくないです。スター選手は、大谷選手も含めて遠征先は全部スイートルームに泊まる契約になっています」
真美子夫人は“覚悟”を決めているというが、さすがに全試合、現地観戦する夫人は珍しいようだ。
「奥さんと新しい通訳の方がタッグを組んで、大谷選手を支えることになるでしょう。もちろん愛犬・デコピンも現地に連れていくはずです」(前出・友成さん)
水原氏との突然の別れは、大谷夫妻にとって大きな転機になると前出の小林さんも言う。
「通訳や運転手業はともかく、実は水原氏が球場内で大谷選手とキャッチボールまでやっていたことに現地では“やりすぎ”だと批判の声もありました。“プロに小学生レベルが相手なんて……”と一部で指摘されていたのです。
ですから今後は、球団のピッチングコーチが堂々と彼の前に現れることもできます。逆に大谷選手の偏った面が改善される機会かもしれません。奥さんの必要性を改めて感じることも増えるでしょう。好きな人の声援を毎日感じられること。それは傷心の大谷選手にとっても自分の再発見につながると思います」
大谷選手なら立ち直れるはずだ。愛する真美子夫人がずっとそばにいてくれるから――。