住んでいた場所は違っても、年齢が近ければ「そうそう! わかる」って盛り上がれるのが、青春時代に感動で涙した映画の話。活躍する同世代の女性と一緒に、“80年代”を振り返ってみましょうーー。
「スティーブン・スピルバーグ監督が手掛けた『ジョーズ』(’75年)や『未知との遭遇』(’77年)は大人向けの作品といえますが、『E.T.』は一転、子どもも笑顔で楽しめる内容になっています。そして、当時のSFでは“怖い存在”として描かれることの多かった“宇宙人”ですが、E.T.はそんなイメージからかけ離れた、かわいいキャラクターです」
そう話すのは世代・トレンド評論家の牛窪恵さん(53)。
「ストーリー的にも、仲間とはぐれて地球に取り残された宇宙人と心を通わせる少年たちの温かい友情がテーマとなっており、SF映画に新風を吹き込みました」
だからこそ、仲のいい友達と人さし指を突き合わせる遊びが学校ではやるなど、子どもたちからの人気は絶大だった。
「ポスターやぬいぐるみ、ジグソーパズル、文房具などのキャラクターグッズも売れに売れました」
さらに『E.T.のテーマ』を聴けば、自転車が空に飛び上がる名シーンがすぐに浮かぶように、音楽も特徴的だ。
「E.T.は当時の映画の興行収入記録を塗り替えましたが、さらにサウンドトラックやビジュアルブック、キャラクターグッズなど、2次収入にも結びついています。ハリウッド映画の底力を、世界中が知ることとなったのです」
■映画好き感あふれるスピルバーグの邸宅
映画で描かれるアメリカのライフスタイルも興味深いものだった。
「E.T.がテレビで『セサミストリート』を見るシーンなどもあり、子どもたちの日常生活がていねいに描かれています。子どもたちが宅配ピザを食べるシーンをきっかけに、日本でも宅配ピザのチェーン店を立ち上げる企業があったほど、食文化にも大きな影響を与えました。SFとはいえ遠い宇宙の話ではなく、身近な生活に落とし込まれていたので、物語の世界に入りやすかったのではないでしょうか」
世界にインパクトを与えた同作は、’83年のアカデミー賞で作曲賞などを受賞し、作品賞や監督賞、脚本賞にもノミネートされた。
「当時、フジテレビの社員でアカデミー賞の番組制作を担当していた私の父は、スピルバーグ監督の自宅に取材に伺ったんです。プール付きの大邸宅には、口を大きく開けたジョーズのオブジェが飾られ、監督が所有するマニアックなカメラや編集機材のそろった工房があったそうです。純粋な映画少年だったからこそ、E.T.のように親しまれるキャラクターを生み出せたのでしょう」