(写真:時事通信)
「ルールを変えていただかないと。みんな、そういうルールのなかでやっていると思うので。返還するようなもんでも僕はないと思いますよ」
12月15日の会見で、大阪府の吉村洋文知事(46)はこう語気を強めた。
2014年12月2日、大阪市長選出馬のため大阪市議会議員を辞職した吉村氏。12月も2日在職したことで、満額の期末手当約238万円と12月ぶんの議員報酬約77万円の計316万円を受け取っていた。
このことを、12月16日発売の「週刊文春」が「吉村知事 市議のときも在職2日で316万円!」と報じたのだ(「文春オンライン」に記事が出たのは15日)。
もちろん吉村氏の行為になんら違法性はないが、これが問題とされたのは、吉村氏本人と彼が副代表を務める日本維新の会が「文書通信交通滞在費(文通費)」について、厳しく追及を行ってきたためだ。
■「人をシロアリ呼ばわりしたくせに……」
国会議員に毎月100万円が支給される文通費。在職が1日でもあれば、その月ぶんが満額支給される仕組みになっていて、今年10月31日の衆議院選で当選した新人議員たちも在職1日で満額の100万円が支給されていた。それを維新の新人議員が問題視すると、それに乗っかったのが吉村知事だった。11月13日にはこうツイート。
《どうやら1日だけでも国会議員の身分となったので、10月分、100万の札束、満額支給らしい。領収書不要。非課税。これが国会の常識。おかしいよ》
しかし、吉村氏自身も衆議院議員時代の2015年に、在職1日で文書交通費の満額である100万円の支給を受けていたことが発覚。反省の弁とともに100万円を“日本維新の会に”寄付したばかりだった。
今回、新たに報じられた市議時代の「在職2日で316万円」問題では、吉村氏は会見で冒頭のように開き直ったのだ。さらに、辞職は衆院選出馬による自動失職で、「辞職日を操作したわけではない」と弁明した。これにはツイッター上で疑問の声が……。
《ルール内なんやから騒ぐ必要はないって言うなら文通費も同じことやろに。自分は良くて他人はダメっていうダブスタばっかやん。》
もちろん今回の衆議院選挙で初当選した議員たちも、“当選日”を操作した訳ではない。そもそも辞職日と違い、当選日を操作することなどできない。
また国会で文通費の法改正が遅々として進まないことについて、「本当に税金に群がるシロアリだと思います」と吉村氏が批判していたことについてはこんな意見が。
《「システムの問題。それを見直せばいい」なら、他の政党もシステムの問題で、不当に報酬を得てきた訳ではありませんよね。それをシロアリ呼ばわりしておいて、自分の後ろ暗い過去が複数出てきたらそれですか。》
■会食で職員1,474人を処分したのに…
多くの人の目に“ダブルスタンダード”に映った吉村氏の態度。だが、維新の会が“ダブスタ”と批判されているのはこれだけではない。
今年7月、大阪府と市の職員計1,474人が、府民に少人数での会食を要請しているにもかかわらず、これに反した会食をしていたとして処分を受けた。うち58人は地方公務員法に基づく懲戒処分(戒告)という重い処分だった。
だが、12月2日、日本維新の会の代表も務める大阪市の松井一郎市長(57)が、維新議員らと大宴会を開いていたことを12月10日発売の「フライデー」がスクープ。大阪府はいまも「同一テーブル4人以内」「2時間程度以内での飲食」の会食とするように呼びかけているが、出席者約30人、3時間にわたる宴会だったという。
松井氏は9日の会見で、宴会ではなく“衆議院選挙の反省会だった”と強弁。記者に「2時間以内を守ったか?」と問われると……。
「2時間をめどにやろ!(実際の要請は「2時間程度以内」)まぁ、そこはちょっと時間をオーバーしてるけど。何時間というか……。まぁ、やっぱ反省会なんで、挨拶30分くらいかかるんでね。食事出してもらって、デザートまで2時間半くらいかかったかな」
約30人という人数も、4人ごとのテーブルに分かれていたから問題ないと主張。ただ席の移動はあったというから、感染対策という要請の趣旨を無視していたことは間違いなさそうだ。それでも、最後は「なんか問題はありますか?」と逆切れ。
■処分理由を忘れた松井市長
14日の会見では、松井氏は会食が2時間を超えたことについて「緩みというものがあるんではないかと、市民のみなさんに捉えられれば、そこは申し訳ないと思います」と“謝罪のようなもの”はしたものの、7月に要請に違反した職員を処分したことについて記者に問われると……。
「要請自体を、どこが違反した? (要請は)時間は2時間程度…“程度”だし!(しつこいようだが実際の要請は「2時間程度以内」)いま緊急事態中の話でもないし。当時は、とにかく緊急事態なんで、飲食そのものをダメよというルールをやってたわけでしょ? だから、それとこれとまったく一緒にされることはないと思います」
だが、実際、職員たちが処分されたのは、二度目の緊急事態宣言が解除された3月1日から4月6日の間の飲食について。当時の要請も「4人以下でのマスク会食の徹底」「歓送迎会、謝恩会、宴会を伴う花見は控えること」などで、“飲食そのものをダメよというルール”ではなかった。市職員の処分の責任者なのに、なぜ処分したかの記憶はないようだ。
最後まで「要請違反」を認めなかった松井市長。これにはツイッター上でこんな声が。
《おいおい松井くん。キミが処分した職員の会食も緊急事態宣言期間“外”なんだよ。それを、要請事項を守ってない!と処分したんだよ》
《約1500人もの大阪府市職員が処分されたのは記憶に新しいが、松井市長は問題ないと開き直り。身を切らせるのは他人ばかり。維新の体質そのもの。》
■橋下氏も!?“ダブスタ”は維新の体質?
今年5月に、約1万5千人もの府民が自宅待機し、在宅死も続出するなか、症状が重くないにも関わらず、大阪維新の会所属の大阪府議がすぐに入院できたことについても、“ダブスタ”だとの批判があった。
《入院できずに自宅や療養施設で亡くなる人も多い中、維新の会の議員が簡単に入院できてしまう入院判定基準こそダブルスタンダードではないのか?》
そういえば、大阪維新の会の初代代表の橋下徹氏(52)も、知事時代の2008年、教育予算の削減反対や教育支援の拡充を訴える高校生と面会したとき、こんなことを言っていた。
「あなたが政治家になって、 そういう活動をしてください」
「国を変えるか、日本から出るしかない」
現在は評論家として、政治にさまざまな批判や注文を付けている橋下氏。“自分だけは別”というのは、結党以来の党是なのかもしれない。