(写真:4月に退所すると報じられたフジテレビの久慈アナ)
フジテレビの久代萌美アナ(32)と久慈暁子アナ(27)が、それぞれ3月と4月に退社すると報じられた。
世間では人事異動や転職、退職の話が増えるこの時期。アナウンサー業界でも例年、退職・独立の話が後を絶たない。久代アナに関しては昨年、ネットワーク局への異例人事が発表されていた。また久慈アナについては、同局で一時問題となった“ステマ疑惑”に名前が挙がっていた。
退社の真意は定かではないが、コラムニストのおおしまりえさんは人気アナウンサーの独立が続く現状について「会社員というジレンマが明るみになりつつあるから」と指摘する。以下、その理由について語ってもらったーー。
■会社員なのにタレント性を求められることのジレンマ
一昔前であれば“勝ち組”などと呼ばれることもあったアナウンサー職。しかし近年、各局で有名アナウンサーの独立が止まらなくなっています。この流れにはテレビ局に所属するアナウンサーに求められることが変わりつつあることも、1つの要因なのではと思います。それは、“よりマルチに、より多彩に”といった方向です。
もともとアナウンサーというのはニュース原稿を正確に読んだり、現場から適切な情報をリポートしたりするといった“不特定多数に情報を伝える専門家”でした。それにスポーツや政治、バラエティといった強みを持つことで“その人らしさ”がさらに際立っていたように思います。
しかし近年はこうした分野の強みとあわせて、タレント性やキャラクターも非常に重視されるようになっていました。
日本テレビの水卜麻美アナ(34)に大食いや食いしん坊のあだ名がつき、テレビ朝日の弘中綾香アナ(31)には毒舌やぶっちゃけキャラといった称号がついているのも“今の時代の流れ”といえます。
会社員なのに、マルチさや芸能人らしいキャラクターが求められる。これは考えてみれば制約ガチガチのなかで、新しい成果を上げろと言われているようなもの。今のテレビ局所属のアナウンサーという立場は、そうしたジレンマのなかにあるのかもしれません。
■フリーになるのは簡単でも維持するのは難しい
またマルチさ追求のために自分を伸ばそうとすると、会社員という立場は非常に不利な側面があります。それは仕事や身の振りのタイミングが選べないという難しさです。
会社員ですから当然、会社からの指示には従わねばなりません。伸ばしたいジャンルを決めたとしても、まったく異なるジャンルの仕事を振られたら応じなくてはいけません。また出たいと思っても前に出られないといった、そもそもの問題もあります。
さらに「じゃあ自分の場所を作ろう」と思ってSNSなどで発信をしようとしても、いろんな制約がついて回ります。アナウンサー職に限った話ではありませんが、こうして考えるとマルチさとか自分が思う自己成長を求めたとき、会社員は非常に不利な側面が多いといえます。
旬がどうしてもあるアナウンサーという職業に対して、身の振り方やタイミングが会社に任せられている。それって実はリスクが高いことであり、おまけに給料も社内ですごく高いわけではない。
“テレビ離れ”も叫ばれる昨今。“テレビだからできること”以上を求めた場合、「勢いがあるうちに独立して、広いフィールドで活躍したい」と望むのは当然の流れでしょう。
一般人の間でも加速するフリーランス・独立の流れ。とはいえ、最近は「フリーランスに1回なったけれど、もう1回会社員に戻る」という事例も増え始めています。フリーになるのは簡単でも、それを維持するのは非常に難しいということです。
アナウンサーの独立は男女どちらも増えつつありますが、今後は別の会社組織に所属したフリーアナウンサーが出てくる日も近いかもしれません。
例えば先日退社を発表した日本テレビの桝太一アナ(40)は、まさにその代表です。大学での研究職を極めながら、アナウンサーとしての仕事も自分の強みが生かされる部分である程度続けていく。研究職とアナウンサーがどれほど両立できるものかは非常に興味がありますが、アナウンサーも多様性という流れのなかで「新たな流れ」が始まっているといえそうです。
(文:おおしまりえ)