フジテレビアナウンサー採用試験にアイドルグループ「欅坂46」の現役メンバー・原田葵さん(21)が内定したと、11月18日発売の週刊新潮が報じました。
原田さんは現在も現役アイドルとして活動中。一部ファンからは驚きとともに混乱の声も出ています。
キー局アナウンサーといえば例年、“アイドルアナの誕生”に話題が集まってきました。しかし近年は、“元アイドルのアナウンサー採用”も活発化しています。
2011年にテレビ東京へ入社した元「モーニング娘。」の紺野あさ美さん(34)を筆頭に、2018年に日本テレビへ入社した元「乃木坂46」の市來玲奈さん(25)、2019年にテレビ朝日へ入社した元「乃木坂46」の斎藤ちはるさん(24)と続きます。
今回の原田さんはまだ現役アイドル。元アイドルよりもさらにフレッシュな現役アイドルの採用にフジテレビが乗り出したとすれば、アナウンサーの新たな時流が生まれる可能性を秘めています。
しかし昨今のような業績の振るわないテレビ業界において、こうした“すでに人気を得ている芸能人”を採用することは吉と出るのでしょうか。
■「すでに活動中の芸能人」をアナウンサー採用するメリット
ここへきて「アイドルや有名人採用枠があるのかな」思うほど、局によっては積極的な採用状況が見て取れます。そのメリットはどこにあるのでしょうか。
・テレビに「人」と「売上」を呼び込む効果
最大のメリットは、ファンがそのままテレビの視聴者になってくれるという点です。最近の女性アナウンサーはカレンダー出演やイベント活動などの仕事も多いので、会社へ直接的に売上をもたらす効果もあるかもしれません。
アナウンサーとしていちばん大切なスキルはアナウンス力ですが、近年はテレビ局もなかなか厳しい情勢が続いています。アナウンス力に加え、+αの能力を手っ取り早く求める傾向が強まっているように感じます。
・テレビ慣れしているため即戦力
芸能人として仕事をしていると業界の空気やタレント同士の距離感、カメラの前でも動じない度胸などの「必要な能力」が入社前からついているものです。
アナウンサーという人気商売の旬を早める上で、これは大きなメリットと言えるでしょう。ただ逆に言えば「ゆっくりと成長を待つことができない」というテレビ業界の余裕のなさから来る選択でもあるのかもしれません。
■「人を育てなくなったテレビ局」はどうなっていくのか
こうしたアナウンサー採用の新たなトレンドを見ていると、「芸能人発掘の流れ」と通じるものを感じます。
近年、テレビ業界ではネットの影響力を大いに意識しています。そのため、ネットで話題の人を積極的に呼び込むようになってきました。
たとえば今では誰しも知っているタレントのフワちゃん(28)。彼女はもともと芸能事務所に所属こそしていましたが、人気のキッカケはYouTubeでした。
そのほかにも彼女のような大ブレイクを夢見て、多くのインフルエンサーやユーチューバーがテレビ進出を目論んでいます。テレビ局としても、その流れを歓迎しているようです。
ただこうした“すでに知名度のある人を効率的に刈り取る”といった行為を続けていると、テレビ局にとっては危険な側面もあるように思います。それは出演者が、メディアサイズに収まった人ばかりになってしまう可能性もあるということです。
なかなか時代的にも、“生え抜きを育てる”という余力はなくなってきているのかもしれません。しかしテレビ局がネットで勝手に育った人ばかりを使っていると、今はよくても中長期的に見るとどんどん規模感が小さくなっていく可能性もあります。それは、テレビという場を退屈にすることにつながるのではないでしょうか。
変わっていくテレビ業界の人選基準。11月25日には、フジテレビが希望退職者を募集するというニュースも報じられました。局の存在意義が問われているからこそ、こうしたアナウンサー採用の傾向の変化も起きているのかもしれません。
(文:おおしまりえ)