2023年3月、農林水産祭天皇杯の受賞者から説明を受けられる天皇皇后両陛下(写真:時事通信)
「3月22日のWBC決勝は天皇皇后両陛下と愛子さまも御所で観戦されました。日本代表が14年ぶりに優勝したことを喜ばれ、全力を尽くして試合に臨んだ監督や選手たちの姿に感銘を受けられたご様子だったそうです」
そう語るのは宮内庁関係者。天皇ご一家が熱戦に感動されたのは喜ばしい限りだが、この関係者の口調は嘆息まじりだった。
「天皇陛下と雅子さまは’06年と’09年にはWBCの日本戦を東京ドームでご覧になりました。愛子さまもふくめ、ご一家は皆さまが野球ファンですし、今回のWBCも球場で観戦いただければよかったのですが……。
しかし両陛下は現在もご公務での外出であっても、細心の注意を払っておられます。前例もありますし、天皇ご一家へのご招請は来ていたと思われますが、きっとお断りになったのでしょう。
また、コロナ禍前は毎年3月に長野県でスキーを楽しまれていましたが、今年も見送られました。こうした自粛状況に側近たちも再三私的なお出かけをお勧めしています。ですが両陛下は首を縦に振られないのです」
コロナ禍以前の天皇ご一家は、夏は静岡県・須崎御用邸や栃木県・那須御用邸で静養され、3月には長野県・奥志賀高原のホテルに滞在されていた。
「こうしたお出かけは、ご多忙な日々を過ごされている両陛下にとって、お仕事から解放される時間であるとともに、ご家族の思い出を作られる貴重な機会でもあります」(皇室担当記者)
愛子さまも昨年3月の初めての記者会見で、ご両親とのひとときについて語られていた。
「静岡県の下田市にある須崎御用邸に行き、海で泳いでいる時に、綺麗なお魚の群れを発見して皆で観賞しましたり、また、須崎はほとんど波のない穏やかな海でございますけれども、サーフボードを浮かべて、そこに3人で座る挑戦をして、見事全員で落下した思い出など、お話しし始めると日が暮れてしまうかもしれません」
だが’19年8月の那須御用邸ご滞在以降、ご一家は地方でのご静養を休止されている。
前出の宮内庁関係者によれば、
「昨年、3年ぶりに行動制限のない夏休みとなり、那須御用邸でのご静養が検討されましたが、両陛下のご意向で実現には至りませんでした。また昨年10月から観光庁が『全国旅行支援』を実施しており、国内の旅行者や海外からの観光客も増えています。それでも両陛下はこのたびも長野県へのスキー旅行を見送られたのです。
側近たちは、ずっと休みをとられていない両陛下のお疲れを憂慮しており、昨年からご静養をお勧めしているのですが、ご裁可がないかぎりは準備を進めるわけにもいきません。
世間ではゴールデンウイークとなる5月も、春の園遊会や全国植樹祭のご準備があります。ご一家で地方にお出かけできる機会は、今年夏までありません。47カ月も“ご静養なし”という、前例のない事態となっているのです」
■両陛下が地方ご静養を再開されるタイミングは?
精神科医の香山リカさんは次のように語る。
「雅子さまはこの20年近く、ご公務と並行して適応障害のご療養も続けていらっしゃいます。一般の方でも同じですが、環境に変化がなく、毎日同じことを繰り返すと精神が硬直し、体調にもよいとは言えません。
ご公務とご療養という日々にも、ちょっとしたお休みや変化は大切なのです。自然の中を散策して日常とは異なる景色を見る、好きなものを食べ、いつもと違う時間に寝起きする……。旅行が難しくても、日常生活にアクセントをつけ、気分を変えることも重要です」
1月23日には東京国立博物館、2月2日には静嘉堂文庫美術館と、天皇陛下は雅子さまをお連れになっておしのびでお出かけになっている。
両館では、雅子さまの干支でもある“うさぎ”をテーマにした特別展を開催中だったのだ。天皇陛下も“日常生活のアクセント”の重要性はお感じだったのだろう。
「それにもかかわらず、3年半もご静養を休止されているのは、陛下と雅子さまの強いご決意ゆえだと思います。
エリザベス女王は21歳で“生涯を国民にささげる”と宣言しましたが、お言葉にはなさらずとも天皇陛下と雅子さまも、“この命を国民にささげる”という覚悟を固められているのです。
もし天皇ご一家が地方にお出かけになるとすれば、多くの地元の人々がお出迎えに集まりますし、警察官も動員されます。“万に一つでもコロナ感染拡大の原因は作らず、国民を守り続ける”というお気持ちなのでしょう。
両陛下が地方でのご静養を再開されるのは、国民がもっと自由に旅行を楽しむようになり、コロナ感染者数がさらに減った状況になってからだと思われます」(前出・宮内庁関係者)
“不休の日々”にあって、テレビでとはいえWBC観戦で国民と同じ時間を共有できたことは、天皇陛下と雅子さまにとってもお心が震えるような出来事だったに違いない。