ご成婚前、外務省に出勤される雅子さま(写真:共同通信)
「天皇陛下と雅子さまは3月27日に、市川恵一・外務省総合外交政策局長からご進講を受けました。もともとは天皇陛下お一人でのご予定でしたが、当日は雅子さまもごいっしょされたのです」
そう語るのは皇室担当記者。
総合外交政策局長は外務事務次官や外務審議官に次ぐ要職とされ、市川氏は昨秋まで、かつて雅子さまの職場だった北米局の局長を務めていた。前出の皇室担当記者が続ける。
「昨年3月当時、市川氏が、訪日中だったアメリカの国務次官補と、日米同盟のさらなる強化や、ウクライナ情勢をはじめとする地域情勢について意見交換を行ったと報じられています。
雅子さまも、戦禍にあるウクライナの人々のことを心配されていますから、それで急きょご進講を受けられることになったのかもしれません。入省では、市川氏は雅子さまの2年後輩にあたります。いっぽうで最近、宮内庁内での大きな人事異動が注目されています。雅子さまの“元上司”にあたる人物が新たに式部官長に就任したのです」
式部職は、皇室の祭典、儀式、国際親善などに携わる部署であり、そのトップである式部官長が天皇皇后両陛下の側近ナンバーワンである侍従長になることも多い。
いわば“新側近”となった伊原純一氏は外務省時代に、北米局長、アジア大洋州局長、フランス大使などを歴任した人物だ。
雅子さまはご成婚直前まで北米局北米第二課に勤務されていたが、そのころ伊原氏も北米局北米第一課で首席事務官を務めていたのだ。
外務省の事情に詳しい、「インサイドライン」編集長の歳川隆雄さんは次のように語る。
「式部官長は、天皇皇后両陛下にご進講経験があるなど、何らかの接点があって選ばれるケースが多いのです。
伊原氏と雅子さまは同じ時期に北米局に在籍しており、直属の関係ではないにせよ、面識があるのは間違いありません。前式部官長の秋元義孝氏と伊原氏を比べれば、経歴では伊原氏のほうが“格上”ということになりますね」
■陛下が難民を受け入れるルーマニアに敬意を
即位後もコロナ禍のため、天皇皇后両陛下は、エリザベス女王の国葬参列以外の海外ご訪問を自粛されている。
「しかしコロナ禍も落ち着きつつあります。在ジュネーブ国際機関日本政府代表部特命全権大使なども務めた“欧州通”でもある伊原式部官長も加わった新体制で、令和皇室の国際親善もあらたなスタートをきるということでしょう」(前出・皇室担当記者)
また名古屋大学大学院准教授の河西秀哉さんは、
「皇室には、各国の王室や要人との交流によって国際親善を進め、『平和』を実現してきた実績があります。ご訪問先の候補としては、エリザベス女王からも招待されていたイギリスや、王室のある国々が挙げられます。コロナ禍で少なくなってしまった皇室・王室間の直接的な対面再開に期待しています」
世界の王室との連帯強化を目指される天皇陛下と雅子さま。それを後押ししているのが、雅子さまのご関心も高い“ウクライナ難民たちの悲劇”だ。
「3月7日に両陛下は皇居・御所でルーマニア大統領夫妻と会見されました。大統領がウクライナの隣国として多くの難民を受け入れていることに言及すると、天皇陛下は『人道的な見地から(難民を)支援されていることに敬意を表します。戦争により、多くの人が亡くなっていることに心を痛めています』などと、お話しになったのです」(前出・皇室担当記者)
ヨーロッパ各国の王室も難民の支援に尽力している。世界の王室事情に詳しい関東学院大学教授の君塚直隆さんはこう語る。
「イギリス、ベルギー、オランダ、スペインなどの王室は、ウクライナからの難民のために王室の施設を提供したり、国王や王族が避難先を訪問したりしています。
具体的には、ベルギーのフィリップ国王やマティルド王妃は、ロシアの侵攻直後に、難民センターや緊急避難所を訪問し、彼らから話を聞いています。オランダのウィレム=アレクサンダー国王とマキシマ王妃は、王室が保有する城にウクライナから避難してきた家族を受け入れることを表明しました。
またイギリスのウィリアム皇太子は、この3月下旬にポーランドのウクライナ国境付近を訪問し、避難者を支援しているイギリス軍兵士を激励しています。
日本もウクライナからの避難者を受け入れています。天皇皇后両陛下が、政治的な意思を示されることは難しいと思いますが、宮内庁が事前に丁寧な説明をすれば、戦火で日本に避難せざるをえなかった人々に寄り添われることはできるのではないでしょうか」
ロシアの侵攻を受けたウクライナから、欧州各国に逃れた難民は800万人余に上り、日本にも、これまでに2300人以上が避難してきたという。
戦火がおさまったとしても、彼らが祖国に戻り、以前と同じような生活をするためには長い年月が必要となる。“世界の王族たちとともに、難民の涙を止めたい”……、欧州王室との連帯をより強めるため、雅子さまは新しく側近となった元上司とともに国際親善を加速されていく。