(写真:CTK Photo/アフロ)
侍ジャパンが14年ぶりに王座を奪還するという最高の形で幕を閉じた第5回WBC。代表メンバーへの注目が高まっているが、今大会で日本中にその名を轟かせた一人といえばラーズ・ヌートバー(25)だろう。
アメリカ人の父と日本人の母を持つヌートバーはアメリカで生まれ育ち、2018年にドラフト8巡目で大リーグのルイス・カージナルスから指名されプロ入り。昨シーズンにメジャーで14本塁打、40打点の活躍を見せ、初の日系人選手として侍ジャパンの一員に選出された。
WBC本大会が始まると、攻守にわたって勝利に大きく貢献しただけでなく、ムードメーカーとしてメンバーの士気も高めるなどチームに欠かせない存在に。トレードマークとなった出塁時の“ペッパーミルパフォーマンス”も大流行し、日本名である榎田達治から「たっちゃん」と日本のファンたちから愛されている。
ヌートバーも3月23日に日刊スポーツが配信した独占手記の中で、《今回のWBCで日本代表としてプレーできたことは、家族にとっても、僕の母にとっても、本当に素晴らしい経験だった》と綴っており、まさに相思相愛。
今後は再びカージナルスの一員として、メジャーリーグでのさらなる飛躍が期待されているヌートバー。しかし、その裏で決勝前後からネット上では日本の野球ファンからヌートバーを心配するこんな声があがっているのだ。
《WBCでこのまま日本が優勝したらヌートバーはアメリカメディアとかチームから裏切り者にならないのかな?? なんか急に不安になってきた…》
《ヌートバー、アメリカに帰った後裏切り者とか言われないよね?大丈夫だよね》
《インスタとかみてるとヌートバーがアメリカ人に「裏切り者」なんて叩かれててつらい、、、》
ヌートバーはアメリカ国籍を持ち、アメリカ代表としての出場資格も持っている。それ故、日本代表の一員としてアメリカを破ったヌートバーが、今後アメリカ国内で“裏切り者”扱いされないかと心配する声が相次いでいるのだ。
そして、残念ながら野球ファンの恐れは現実のものとなってしまっていた。
22日午後3時前(日本時間)、日本の優勝後にWBCの大会公式Twitterアカウントは《The people love Lars.》と記すとともに、優勝トロフィーを抱え笑顔のヌートバーの写真を投稿。この投稿に多くのファンから感謝のリプライが寄せられる中、こんな声が。
《he is a traitor and should be banned from the USA》
「traitor」とは英語で裏切り者の意味。この文章を翻訳すると、「彼は裏切り者で、アメリカから追放されるべき」となる。
ヌートバーを裏切り者扱いする声はこれだけではない。Twitterには、次のような投稿が並んでいた。
《Lars is a traitor》
《Lars Nootbaar, YOU are a traitor》
中には《Lars Nootbaar is a traitor. He’s a Japanese spy》と「日本のスパイ」呼ばわりする人まで。
大会規定に則って日本代表の一員として闘ったヌートバーをいかなる理由であれ“裏切り者扱い”していいはずがない。これからメジャーリーグのレギュラーシーズンが開幕するが、こうした言説がアメリカ国内で湧き上がらないことを祈るばかりだ。