「10月、気温40℃の秋が来る!」凶悪「蛇行偏西風」で続く「殺人猛暑」熱中症の死者は30年で18倍に
「殺人猛暑ですね」
と語るのは、五良会クリニック白金高輪の理事長で、竹内内科小児科医院の五藤良将院長だ。事実、1993年以前は年平均67人だった熱中症の死亡者数は、2022年までの3年間平均で1223人。じつに18倍だ。
「熱中症だけでなく、外出を控えるせいで運動不足になり、症状が悪化する糖尿病患者の方が増えた印象です。また今季は夏バテで嘔吐し、食欲不振で点滴が必要になる高齢者の方も多かったです」(同前)
「日本から四季は消えました。9月、10月も暑いままですよ」
と絶望的な予言をするのは、三重大学大学院生物資源学研究科の立花義裕教授だ。
「9月も、例年より平均気温が高い状態が続くでしょうね。大型の台風がやってきて、フェーン現象が発生するなどの“悪条件”が重なれば、10月に40度を記録することもあるかもしれません。それほど、異常な気候なんです」(立花氏)
「偏西風とは、北側の冷たい空気と南側の暑い空気の境界線上に流れる西から東に吹く風です。風の中心を境に北側にいれば涼しいし、南側にいると暑いです」(同前)
「偏西風が北側に向けてぐにゃりと曲がっており、その南側に日本列島がすっぽり収まるような状態なんですよ。しかもスピードが遅く、蛇行したまま動かない。だから、延々と暑いわけです」(同前)
「夏にクーラーの効いた部屋の窓を開けると、涼しい空気が外に一気に出るように、温度差があればあるほど風は強く吹きます。偏西風でいえば、赤道付近の温度と北極の温度の差が大切なのですが、北極で温暖化が進んでいるために、風が弱まっているんです。つまり、偏西風の変化の背景には、地球温暖化という大きな原因があるため、少なくとも今後10年はこのような夏が続き、“秋が消える”といえるわけです」(同前)
「お風呂のお湯は、ひと晩明けても冷めないでしょう。同じように、気温と比べて海水温は変化しづらいんです。今年の日本周辺の海は、平年と比べて5~6度高く、新潟沖では30度を記録しました。太平洋はまだしも、日本海でこれほど高い温度は見たことがありません。10月も海水温は平年より高いままでしょうから、上空の空気も、じめじめとした暑いものになります。
「この夏は次々と記録が塗り替えられているわけですから、秋も例年より高そうです。ただ最新の学説では、ここ最近の夏が暑い原因として、意外な理由が挙げられています」
「たとえば、1年間で東京から富士山が見られる日数は、歴史上でいまがもっとも多いんですよ。それほど空気が澄んでいるということです。とくに数年前から、空気をきれいにするために、世界的に船舶の燃料に含まれる硫黄分という成分を厳しく規制するようになりました。その結果、大気汚染が減少し、直射日光の影響を強く受けるようになり、温度が上昇したという説があるんです。もちろん、温室効果ガスを減らす努力は続けるべきですけどね」
「南米ペルーから赤道付近までの、東太平洋の海面水温が高いことをエルニーニョ現象といいます。今年は非常に温度が高く、スーパーエルニーニョ現象が起きると気象関係者のあいだで言われているんですよ。エルニーニョ現象が起きると、日本は雨が降りやすく、暖冬になる傾向があります。いずれにせよ、これまでとはまったく違った季節を迎えそうですね」