「医療崩壊を防ぐには、むしろ逆効果だと思います」
「この薬は、新型コロナ感染症の回復に8日を要するところを、一日早くするというだけの効果です。しかし、国や官僚が供給体制を作ったことによって、これまでは『軽症だから自宅療養でいい』と言われていた患者さんが、外来に殺到するようなことが起きる可能性もあります」(以下、断わりがない部分は岩田教授)
「高血圧の治療薬など36種類もあり、催奇性も確認されているので、妊婦や妊娠している可能性がある女性への投与も避ける必要があります」(医療ジャーナリスト)
「ゾコーバは、『国民の命を守る』『医療逼迫を改善する』といった効果をもたらすものではありません。緊急承認を受ける必要があるほどの薬ではないんです。
「感染症の専門家という立場で登場した、国立がん研究センター中央病院感染症部長の岩田敏医師と、東京大学医科学研究所の四柳宏医師です。お2人とも、会議でゾコーバの有効性を“熱弁”されましたが、利益相反に当たる可能性があるんです」(前出・医療ジャーナリスト)
「岩田(敏)氏は2020年と2021年に塩野義製薬から、講師謝礼金やコンサルティング等業務委託費として合計27万6864円、四柳氏も同じように40万8549円受け取っています。
「審議会での発言は、感染症医という専門家の立場で、参考人として発言をしたものです。ご指摘の講師謝礼金やコンサルティング等業務委託の影響を受けたものではございません」
「さらに役人は、専門家会議の前に各自治体に対して、ゾコーバの供給について説明してまわっていました。ゾコーバは承認されるという前提で動きだしていたわけです。
「ゾコーバの薬価は公表されていませんが、同じく新型コロナの治療薬であるラゲブリオは、5日間の治療で9万円以上と高額です。しかし今は、新型コロナ対策ということで、特別に税金で賄っているため、無料で国民に供給されています。
「たとえば、重症化を防ぐ効果が認められているパキロビッドを入手しやすくすることや、ワクチンの接種をさらに加速させることなど、エネルギーを注ぐべきことはほかにあります。感染症対策の半分はx人間対策”なんですよ」
取材/文・吉澤恵理(医療ジャーナリスト)
写真・共同通信、時事通信