『罠の戦争』草彅剛の“奴隷ぶり”にリアルすぎると共感…現役秘書たちが語る“政界の闇”の実情
「頼りにしてるぞ、鷲津~」
「ご飯を食べながら『あの場面、リアルだったよね』とか、よく話題になっていますよ」
緑川 観ている秘書の方は多いですよね。ただ、長年仕えた秘書が代議士を追い落とす…という話なので、センセイには内緒で観ています(笑)。
青山 久しぶりに秘書という仕事にスポットが当たったので、永田町でも話題ですよね。でも、正直、観る暇がない人も多いんじゃないかな。
赤崎 たしかに。秘書は本当に忙しいんですよ。ドラマで選挙運動期間中の一日の終わりに、事務所の裏でこっそり缶ビールを飲んでいる描写がありましたが、そんなことしない。早く家に帰って寝たい。
緑川 選挙のときは2カ月くらい無休ですよね。
青山 ドラマは息子が突き落とされて……という事件がきっかけの復讐劇なので、少し話が大袈裟かなとは思いました。秘書の仕事は、もっと地味で淡々としたものです。
緑川 でも、私はあの事件が描かれたことで「このドラマはよくできている」と感心しました。昔、選挙中に別の事務所の議員秘書が誰かに突き飛ばされて、交通事故に遭ったんです。そこの事務所では怪我はしなかったけど、もう一人突き飛ばされた秘書がいて……。
赤崎 そういう“闇が深い”話は実際に聞きます。ドラマで選挙中にスパイの仕業で情報が筒抜けということがありましたが、現実の選挙でも「あの人、誰?」というボランティアの人が事務所にいて、スパイを疑うことがありますよ。
緑川 犬飼の失脚後、鷲津がその地盤を引き継ぎ、総選挙に出馬したとき、開票直前に事務所前をパトカーが警戒しているという描写で、“都市伝説”が紹介されていました。「当選したら見逃され、落選したら公選法違反で乗り込まれる」というものですが、この業界では本当に信じられている話です。選挙運動期間が終わった開票前夜に、パソコンとかデータ、資料を選挙区外や県外に全部持ち出しますから。
緑川 裏帳簿はありましたよ。ドラマ同様に、管理する秘書には、センセイも頭が上がらない。
青山 うちには裏帳簿はないですが、「裏USB」というのはあります。太い後援者のリストや次の当選が危うい地方議員のリストが入っています。確実に落ちる候補者の応援は意味がありません。僕らのいちばん大事な情報は「カネを出すところと票を出すところ」ですからね。事務所内だろうと、その情報は大っぴらに出さないですね。
赤崎 僕はまだ見たことないですね。それこそ、ドラマに出てくる「秘書の“秘”は、秘密の秘」という言葉どおり。事務所の重鎮秘書しか知らないんだと思います(笑)。秘書は、足の引っ張り合いが多い世界のように描かれていますが、あれは本当ですね。僕が見たなかでも、センセイのスケジュールが変更になったことを教えずに、あとで「そんなことも知らなかったの?」と責めてくる秘書もいますから。
緑川 新入りの秘書に仕事を教えない、というのもよくあります。教えちゃって、草彅くんみたいに優秀になっちゃうと、自分のクビが危うくなりますから。教えていると、ほかの秘書に止められることも……。
赤崎 秘書にとって大きな仕事のひとつが「パーティ券」の販売ですが、先輩秘書のなかには自分では売らずに、後輩にノルマを課す人がいます。後輩がノルマを達成できないと、自爆営業を強要するロクでもないやつもいます。
緑川 私はドラマに出てくる「秘書は使い捨ての駒」といったことを言われたことがありますよ。当時は何もわからなくて、いっさい抵抗できず。草彅くんやほかの秘書の奴隷ぶりを見ていると自分のようで、涙が出るくらいドラマに入り込んでいます。
赤崎 議員の雑用をやる、というのは“あるある”です。奥さんから「犬が逃げたから探して」と言われて、秘書が手分けして探したとか、センセイが家族で海外旅行に行くときに、航空券からPCR検査の段取りまで手配しました。
青山 それが秘書の仕事ですからね。ゴルフクラブの新調とか、最初は「なんでこんなことまで…」と思いましたけど、議員のためと割り切ったら、苦にならなくなりました。
緑川 大昔、「たまごっち」が流行っていたころに、子供にプレゼントしたいセンセイから「並ばずに手に入れる方法を考えろ」と言われましたね。おつかい系が多いですが、それ以外だとお菓子の補充とか。ドラマで「〇〇のアイスが好きだから…」というのがありましたが、センセイのイライラ軽減のために、本当にそういった銘柄指定でお菓子を用意しておきます(笑)。
赤崎 まあ、リアルすぎます。妻に「竜崎首相(高橋克典)は故・安倍首相がモデルなのかな?」と言われたら、そうとしか見えなくなりました。