ふだんは透明のガラス張り。施錠すると、壁が曇り中が見えなくなる。驚きのギミックで話題になった渋谷区の「透明トイレ」。
日本財団の「THE TOKYO TOILET」というプロジェクトの一環として、世界的な建築家・坂茂氏がデザインしたこのトイレは、2020年に渋谷区の「代々木深町小公園」と「はるのおがわコミュニティパーク」の2カ所に設置され、変わり種スポットとして人気を集めていた。
ところが12月13日に“告発系ユーチューバー”のコレコレが、男子トイレと女子トイレがともに「施錠しても外から丸見えの状態になっている」ことを検証動画で報告。「入っている側としては、見えてないと思いこんでしまう危険な状態だ」と指摘すると、ネット上では「使用禁止にするべき」など、不安の声が噴出した。
12月16日、日本財団は「THE TOKYO TOILET」の公式ホームページに「ガラス壁の不具合について」と題するリリースを発表。13日に起こった両トイレでの不具合について、
《これらのトイレのガラス壁は、通常は通電させることで透明な状態を保っており、鍵を閉めると通電が解除されて不透明になる仕様ですが、今回の不具合は、ガラス壁内の透明・不透明化を作り出す粒子が気温の低下により固まることから、不透明化に時間を要し、通常利用に支障をきたしてしまったもので、お詫び申し上げます》
と経緯を説明したうえで、
《2022年12月14日14時頃より常時、不透明な状態として運用をしています》
と発表した。
とはいえ、12月の東京の平均気温は約10℃。このくらいの寒さで「粒子が固まる」のであれば、暖かい日にしかギミックが稼働しない“欠陥トイレ”だったということになる。
設計段階でミスはなかったのか、坂茂氏の事務所に質問状を送ると、「お問い合わせ頂いた内容については、誠に恐縮ではございますが日本財団の方へお問い合わせ頂けますでしょうか」との返答が。
そこで、日本財団へ質問状を送ったところ、次のような返答が返ってきた。
「調光フィルムは、メーカーの技術資料により-20~70℃までは使用可能と確認しており、施工時にはこのような事象になるとは想定しておりませんでした」
では「使用可能」と答えたメーカーはどこなのか。再度質問を送ると
「調光フィルムを手掛けたメーカーについて確認しましたところ、海外から輸入し、日本でガラス壁に仕立てているとのことでした」
と、社名を“曇らせた”回答が返ってきた。
同財団は「THE TOKYO TOILET」発足のキッカケは「本当の意味でのオープンな公共トイレを作りたい」という思いからだと語っていたが、故障原因すら“透明化”出来ないようなら、普通のトイレでよかったのでは…。
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