原因不明の「小児肝炎」国内で死者 小児科医院院長が広がりとの関連を指摘される「4つの可能性」解説
■アデノウイルス
「アデノウイルスに感染すると、鼻水や咽頭痛、胃腸炎、結膜炎など、風邪のような症状を引き起こします。アデノウイルスによって肝炎が起きることはゼロではありませんが、一般的には抗がん剤治療を受ける患者や免疫不全疾患、HIV感染症など、免疫能低下が著しい患者が発症する傾向にあります。アデノウイルスは子どもが感染しやすいウイルスの代表格でもありますが、ふだん健康な子どもが感染しても、肝炎になることは、まれだと思います」
■薬剤性
「じつは、急性肝炎を引き起こす原因のひとつに『薬剤性』があります。一般的な総合感冒薬(風邪薬)や解熱鎮痛薬、比較的、安全と思われている漢方薬でも急性肝炎になることがあります。また、抗がん剤などの副作用でもっとも多いもののひとつとして、急性肝障害が知られています。重篤になると死亡するケースも見られます。一連の急性肝炎の患者のなかに、薬の服用をしていた患者がいた可能性はゼロとはいえないでしょう」
■「ウイルス干渉」の消失
「そもそもコロナ禍には『ウイルス干渉』が起きていた可能性があります。ウイルス干渉とは、ひとつのウイルスに感染することで、ほかのウイルスへの感染が抑制される、という現象です。コロナ禍にインフルエンザがあまり流行らなかったのは、ウイルス干渉が働いていたからだ、と考える専門家もいます。
■抗体をつけるチャンスを失った
「お子様を育てた方は体験していると思いますが、たとえば保育園や幼稚園に通い出したとき、さまざまな病気をもらってきたこと(感染したこと)があると思います。保育園や幼稚園で、友達や自然と触れ合うなかで、いろいろなウイルスなどに感染し、抗体をつけていくのです。
「国内で、急性肝炎によって、1人の小児の命が失われたことは重大なことです。しかし、医師をはじめ、まわりの大人たちは、冷静になるべきです。過度に恐れるのはナンセンスです。
取材/文・吉澤恵理(医療ジャーナリスト)