元バディ役の吉川晃司がラスボスか?
……と最終話まで引っ張っているものの、どうにも盛り上がりに欠けている気がする阿部寛主演の日曜劇場『DCU』(TBS系)。
水中の事件や事故の捜査のため、海上保安庁が新設した「潜水特殊捜査隊」、通称「DCU(Deep Crime Unit)」の活躍を描くウォーター・ミステリー。
DCUには、真実を解明するためには手段を選ばない隊長・新名正義(阿部)を筆頭に、血気盛んな若手隊員・瀬能陽生(横浜流星)など、少数精鋭ながら水際捜査に特化したエキスパートが集っている。
世帯平均視聴率(※ビデオリサーチ調べ/関東地区)は第1話から第7話まで16.8%、15.2%、15.2%、13.9%、11.8%、13.9%、13.4%と推移し、最終話1話前となる先週放送の第8話は14.6%と復調傾向。視聴率的には今夜放送の最終話に向けて盛り上がってきたかのように見える。
しかし、視聴者の熱量がそこまで高まっていないように感じるのだ。筆者はそこに2つの大きな原因があると考えている。
■原因1:醍醐味だったはずの潜水シーンが少ない&しょぼい
『DCU』はハリウッド大手制作プロダクションと共同制作という触れ込みでスタートし、日本のドラマでは珍しいダイナミックな潜水シーンが醍醐味と思われていた。
実際、第1話では群馬県のダム湖から人間の頭骸骨の破片が発見されたとして、水深100mの湖底を新名たちが潜水捜査し、真相を解明。湖底の水中シーンがスリリングに描かれ、他局のドラマを圧倒するスケールの大きさを見せつけていた。
けれど、たとえば第4話は、一応わずかながら海に潜っての捜索はあったものの、陸上での捜査ばかり。
また、第6話・第7話は神奈川県の「八景島シーパラダイス」の水族館が、第8話は三重県の「ナガシマリゾート」の温泉が舞台。同じTBS系で放送されている土曜お昼の情報番組『王様のブランチ』かと思うようなラインナップではないか。
ちなみに第8話は、水深1mにも満たないレジャー施設の温泉に潜るだけ。いったいどうした? これがハリウッドクオリティか? 予算を前半につぎ込みすぎたのか? と心配になってしまうレベルである。
途方もない肩透かし感を味わっている視聴者は少なくないだろう。
■原因2:「吉川晃司がラスボスか?」という引きが弱すぎる
もうひとつの原因は、冒頭でもお伝えした「吉川晃司がラスボスか?」という引っ張りの弱さ。
15年前、瀬能の父が亡くなった海難事件で、新名とバディだった成合淳(吉川)も殉職したと思われていたが、実は生きていたことが第4話で発覚。成合は、新名たちが追っている国際テロ組織「ブラックバタフライ」の一員ではないかという疑惑が濃厚に描かれている。
新名と対立するような言動や瀬能を翻弄する怪しい言動が散見され、極めつけは第8話終盤で、耳の後ろに「ブラックバタフライ」メンバーと同じマークがあることが明らかに。
これで成合はラスボス確定! ……と考えるのはあまりに早計だろう。
「ブラックバタフライ」の関わる事件を追い、第3話で殺されてしまったDCU隊員の隆子(中村アン)は成合の妹。実妹の仇である悪の組織に所属しているとは考えにくい。
また、新名は第8話で命を狙われており、当初は成合が殺害に暗躍していると考えられたが、殺害指令は成合からではないという言質が取れている。
視聴者目線で考えると、成合の言動はとにかく怪しすぎるので、裏の裏で “いいヤツ” と考えるのが妥当。もしかすると「ブラックバタフライ」メンバーなのかもしれないが、その場合はワルのフリをして潜入捜査している正義側のポジションといったところか。
エンタメ作品として考えたときに、ここまで怪しいキャラクターがそのままラスボスでは面白みがない。裏の裏の裏で、成合がそのままストレートにただの悪者だったら、悪い意味でけっこう衝撃だが、その線はまずないだろう。
――今夜放送の最終話。成合が味方に戻ってくれることを既定路線として考えると、別のビッグサプライズが欲しいところだが、はたして用意されているのか。いずれにしても、日曜劇場の名に恥じぬ極上のエンターテインメントに昇華していることを願う。
●堺屋大地
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『週刊女性PRIME』『日刊SPA!』などに寄稿中
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