ロシア軍のウクライナ侵攻からおよそ1カ月が経過した。ウクライナのゼレンスキー大統領は3月23日、日本の国会に向けてリモート演説をおこない、「アジアで初めてロシアに対する圧力をかけ始めたのが日本です。引き続き継続をお願いします」と語り、危機に瀕する同国への支援を求めた。
国連によると、ウクライナの避難民は1000万人を突破。そのうち350万人が国外に避難し、日本も20日時点で151人を受け入れている。
そんななか、いまもウクライナ国内にとどまる日本人がいる。大阪府出身の高垣典哉さん(56)だ。高垣さんがウクライナで暮らしはじめたのは2009年。きっかけは、日本の結婚相談所を通じて知り合ったウクライナ女性だったという。
「日本の国際結婚相談所に登録していたのですが、紹介された女性がウクライナの方でした。それで、ウクライナに来てみたのですが、実は詐欺だったんです。会いに行ったら、住所もなかった。
そういう経験と、海外で事業したいという気持ちが相まって、ウクライナで本当の結婚相談所を作りたいと考えるようになりました。それから、ウクライナに住むようになったんです」
そして立ち上げたのが、日本人男性とウクライナ人女性の出会いをサポートする「ロシア・ウクライナブライド」だ。現在でも、無料通話サービス「スカイプ」を通じてオンラインお見合いなどのサービスを提供しているという。
「去年は10名のカップルが結婚され、お付き合いに至ったケースが7組ありました。毎年、夏とかゴールデンウィークには10名から15名ほどの男性が日本からウクライナに来て、対面でお見合いされていました。
侵攻が始まって対面はできなくなりましたが、それでも、スカイプを使えばお見合いは可能です。もちろん、この状況ですから、登録女性の7割くらいは参加していません。
でも、残りの3割は、この状況だからこそ海外の男性と結婚したいという気持ちが高まり、日本人男性にアプローチしています。いまでも毎日5組前後の方がスカイプでお見合いをされ、近々、2名の女性が日本を訪れる予定です」
高垣さんはウクライナの庶民生活についてこう語る。
「ここは差別がなく、素晴らしい国です。でも、経済発展していないので、給料が低い。ウクライナ人男性の平均月収は5~6万円。大学を卒業した女性も、その多くがウェイトレスなどの職に就くため、生活面の豊かさに乏しいんです。
だから、日本人と結婚したいと思っている女性も多い。お金持ちになりたいとかじゃなく、あくまでも幸せな家庭を築きながら、普通の生活水準で暮らしたいというのが、ウクライナ女性の気持ちです」
高垣さんも、同国で暮らしながらウクライナ女性と結婚した。現在も、家族の事情で首都キエフ市内に残る高垣さんは、YouTubeチャンネル「ウクライナ情報局」で、日々、現地の様子を発信している。
動画では、鳴り響く銃声や閑散としたキエフの様子、砲撃により破壊された街並みなどを観ることができる。ロシア軍は毎日、時間に関係なく無差別攻撃してくるという。
「7割くらいの市民はすでに逃げています。もともと300万人がキエフで暮らしていたのですが、いまは200万人ほどが避難したと発表されています。残っている人は、体が弱って避難できない老人が多いです。もちろん、ロシア軍と戦うため、妻や子供を逃して自分だけ残っている男性もいます。
キエフに関しては、スマホは普通に使えますし、電気や水道などインフラが止まっている様子はないです。スーパーは11時から16時まで開いています。でも、食料の供給量が少なく、スーパーには行列ができています。しかも、パンなど手軽に食べられるものはすぐに売り切れるので、早い時間に行かないと買えません」
物価については「普段から買う惣菜とかパンとかは、30%ほど上がっているものもあれば、まったく変わっていないものもあります。希少な食品が値上がりしている印象で、特に海外から輸入する肉は10倍ほどになっています」と語る。
街の様子については「市民の方や兵士の方が、街のあちこちにバリケードを作っています。バリケードには銃口を出す穴があったり、塹壕(ざんごう)みたいなものもあります。ロシア軍に市街戦に持ち込まれたときに迎え撃つためです」と冷静に話していた。
「戦争が終わったら、もっと多くの人にウクライナ人女性と出会ってほしい」と話す高垣さん。ウクライナに平穏が戻る日は、いつになるのだろうか。
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