広大病院「小野薬品を使え」贈収賄疑惑メール入手! 寄附講座開設と引き換えに“割高薬”採用の闇
「教授になりたいからといって、患者を蔑ろにしていいはずがない。賄賂だと非難されても、仕方がありませんよ」(広島大学病院関係者)
「M氏は糖尿病の専門医ですが、上昇志向が強く、人望はありません。上司から部下の時間外勤務が多いことを指摘されると、17時以降病棟で働く医師らに『仕事が遅いだけ』と非難するメールを送り、顰蹙(ひんしゅく)を買ったこともあります」(別の大学病院関係者)
「医療分野の場合、たとえば製薬会社が寄附講座を開設することで、大学に治療法などの新技術を研究してもらい、自社の新薬の開発などに役立てるといった目的があります。寄附金には教授や事務員の人件費なども含まれるので、大学側にとってもメリットが大きい」(医療ジャーナリスト)
「糖尿病患者に対し、DPP-4阻害薬という種類の薬を処方することがあるのですが、病院ではMSD社の『ジャヌビア』が採用されていました。
「大学病院の外来や外勤先にて、寄附講座の設立に貢献した、小野薬品、興和創薬、田辺三菱の薬剤をなるべく使ってあげてください。添付は努力目標です。一見したら破棄・削除をおねがいします」
「ジャヌビアとグラクティブは、製造会社が違うだけで中身は同じ薬なんです。しかもグラクティブのほうが、ジャヌビアよりも1錠あたりの薬価が2円ほど高いんです。寄附講座を開講してくれたからといって、やりすぎです」
「効果が同じで、薬価が高い薬をわざわざ処方することはあり得ません。患者の負担が増えるだけですからね」
小野薬品が販売するグラクティブ(左・公式ホームページより)/写真・時事通信
「上司の言うことに歯向かえる部下はいません。グラクティブの使用量はどんどん増えました」(前出・病院関係者)
「これはまずいと思いました。院内採用されると、患者の入院時はもちろん、退院後も処方されるので、決定的にグラクティブの使用量が増えますから。結局、小野薬品は延長する2年分の寄附は“特別な事情”で中止しましたが、一連の寄附講座を手柄として、大学病院の正式な“教授”になることを目指していたM医師は、狙いどおり2023年2月に内分泌・糖尿病内科の教授になる予定です」(別の病院関係者)
「小野薬品には“前例”があるんですよ。自社の薬剤を多数使用してもらうために、研究助成を目的とした奨学寄附金200万円を三重大学医学部附属病院に寄附しました。これが問題視され、2021年1月、社員2名が贈賄罪で逮捕され、同病院の元教授も第三者供賄罪で逮捕されました」
「奨学寄附金は、誰がどこに納めたのか発表されるもので、個人にこっそり渡すものではありません。しかし、大学病院と製薬会社が交わした約束をもとに、賄賂と認定されました。今回の広島大学病院の寄附講座も、実質的には一緒ですので、贈収賄にあたる疑いがあります。刑事事件化されなかったとしても、国立大学の医師はみなし公務員ですから、その倫理を問われるのは間違いないです」(上氏)
写真・馬詰雅浩