保険金不正請求問題などで大揺れの中古車販売大手「ビッグモーター」が、取引銀行から「NO」を突きつけられた。8月半ばが期限の借入金90億円の借り換え要請に、銀行団が応じない意向を示したのである。
「銀行側は、不正発覚後に中古車販売の不振が続いたことや、信販大手『ジャックス』が自動車ローンの新規受付を停止したことから、融資継続に慎重になったようです。
ビッグモーターは非上場企業なので、資産などの開示義務はありませんが、帝国データバンクによると2022年の売上高は推定約5800億円。これは半導体不足などで新車の供給が遅れ、中古車市場が活況だったことで高めの数字になりましたが、問題発覚後の売上は4分の1に低下したという情報もあります。経営は楽ではないと思います」(経済ジャーナリスト)
しかし現預金は300億円以上あるとされ、所有する約3万台の中古車も、いわば「資産」。中古車オークションで売却すれば会社の運転資金になる。すぐに「危機」を迎える状況にはないようだが、モータージャーナリストは「明るい材料もない」という。
「8月9日から施行された、ロシアへの乗用車の輸出規制強化も懸念材料です。日本は2022年4月から、600万円を超える高級車のロシアへの輸出を禁止してきましたが、新しい規制では排気量1900ccを超えるガソリン車とディーゼル車、すべてのハイブリッド車とプラグインハイブリッド車、電気自動車を禁輸対象にしています。
このため、ロシアに輸出できる中古車は一部の小型車のみ。その結果、すでにバイヤーの買い控えも起きていますので、ビッグモーターの売上にも影響があるはずです。
さらに輸出が減れば、日本国内で流通する中古車がダブつき、一気に値崩れが起きる可能性が高いです。つまり、資産価値の下落です。これが、中古車市場で15%のシェアを持っているビッグモーターには大きな問題になるでしょう。中古車不足のときに高値で買いつけた車も多いので、買値を下回ることがあり得ます。
そもそも中古車は、仕入れてから売れるまでの期間が短ければ短いほどいい商品です。年をまたぐと年式が1年古くなり、価格は下がってしまいます。また、人気車の傾向が変わることもあります。客が来ない現状では、そういった車が増えることが予想されます」
一方で「いまは円安ですから、アジア地域などの需要は旺盛です。中古車業界全体にとっては追い風もあります」という一部業者の見方もあるが、ビッグモーターにとっては、厳しい日々が続く。
外部リンク