6月6日、前日に営業が再開されたばかりの北海道幌加内町(ほろかないちょう)の朱鞠内湖(しゅまりないこ)のキャンプ場が、わずか1日で再び閉鎖された。
閉鎖の理由は、巡回していたスタッフが、キャンプ場近くでクマ1頭を目撃したため。当面の間、遊覧船や貸しボートの営業も休止されるという。朱鞠内湖では、5月14日に釣りをしていた男性1名が、ヒグマに襲われて死亡したばかり。
早朝、釣りのため船で渡してもらった男性が行方不明になった。捜索していたハンターらは、釣り人用の胴長靴をくわえたヒグマを目撃することになった。翌日、現場付近で射殺されたヒグマの胃袋から、人間のものらしき肉片や骨片が発見。近くには人の頭部や損傷が激しい胴体部分が散乱していた――。
『日本クマ事件簿』(三才ブックス)などの編著をもつ編集プロダクション・風来堂の今田壮氏が語る。
「5月の事件があった当時、私はこれまでの研究者やクマ撃ち猟師への取材経験から、別のヒグマがいて、その個体が “主犯” である可能性を指摘しました。
日本国内に棲息する野生生物のうち、もっとも巨大なクマが北海道にのみ棲息するヒグマで、100~200キロ、体長は2メートル前後にもなります。
過去に捕獲されたヒグマのうち、最大の個体は1980年に捕獲された『北海太郎』で、体重500キロ、体長は2.43メートルです。一方、今回の朱鞠内湖で射殺されたヒグマは、体重150キロ、体長1.5メートルほどで、ヒグマとしてはやや小さい部類です」
今回、釣り人が亡くなった朱鞠内湖北東の「ナマコ沢」でも、事前に別の釣り人が、クマの足跡を見つけていた。今田氏が続ける。
「今回の遺体の、頭と胴体が切り離された状態で見つかったことを不思議に思っていました。1.5メートルの小さな個体が、1頭だけで、わずか1日半ほどの間に、胴体を切り離すことが可能なのか。『別のクマがいた可能性もあながち否定できない』と、事件当初から述べている専門家もいました」
ヒグマは、一度、味を覚えると同じ獲物を襲ったり、同じ現場に繰り返し捕食目的で現われたりすることがある。もし、「人=エサ」と記憶してしまったクマがほかにも生きているとしたら――。
目撃されたクマが “主犯” である可能性が高くなってきた以上、キャンプ場の閉鎖はやむを得ない措置だろう。
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