もうすぐ11月。例年『紅白歌合戦』の出場者が発表される時期だ。かつては、出場自体がステータスとされたが、1980年代以降は出場を辞退するアーティストも多い。とはいえ、選考をめぐって世間の耳目を集める「国民的関心事」であることに変わりはない。
NHKは選考基準について、CDの売り上げ、インターネットのダウンロード回数、カラオケのリクエストなどのデータ、NHKがおこなう世論調査などから、総合的に判断するとしている。しかし、どのような議論がなされたかは非公開。昨年は『ドライフラワー』のストリーミング再生回数が5億回を突破したシンガーソングライター・優里の落選が話題となった。
またここ数年、毎回のように出てくる批判は「若者に媚びすぎ」「ヒット曲もなく過去の歌ばかり」など。そこで本誌は、大手広告代理店が視聴者に実施した「『紅白歌合戦』で見たい歌手は?」というアンケート結果を入手した。まずは、40代と50代の男性への調査結果から見てみよう。
1位は桑田佳祐。2位のサザンオールスターズと合わせ、圧倒的な支持を得た。桑田には「常に我々の先頭に立って引っ張ってくれるトップランナー」(視聴者コメント、以下同)、「自分の青春は桑田さんとともにあった」、サザンに対しては「バンドとして成熟期だけど常に新しい」「楽曲の多さは図抜けている」と、往年のファンたちがラブコール。桑田がソロとして出場したのは、2010年と2017年の2回。サザンは1979年に『いとしのエリー』で初出場し、2018年までに5回出場している。
3位は中森明菜。今年8月に、個人事務所を設立したことが話題になったばかり。NHKでは、今年たびたび過去のコンサートを放送しており、今年の『紅白』出場への伏線ではという噂もある。デビュー40周年の今年、8年ぶりの出場はあるのか?
5位は、今年ですべての音楽活動からの引退を発表している吉田拓郎。「大御所の引退は寂しすぎる。有終の美を『紅白』の舞台で」と、ウルトラCを期待する声は多い。
6位の矢沢永吉に対しては「日本を元気にしてくれている」「この70歳過ぎはバケモノ」と熱い声。デビュー50周年で、サプライズ出場の可能性はあるのか?
8位は今年11年ぶりとなるアルバムを発表した山下達郎。だが、山下といえば、テレビに一切出演せず、ライブDVDすら発売しないことで有名。「奥さん(竹内まりや)と共演を」と期待する声もあるが、ハードルは高そうだ。
9位には意外な名前で、フラワーカンパニーズ。1989年結成のロックバンドで、昨年、岡崎体育がカバーした『深夜高速』がCMで使われて話題になった。山里亮太をはじめ、芸能界にもファンが多い。「最近CMで聴いて心をえぐられた」「この年になって(50代)『青春ごっこ』とか『生きててよかった』は反則」と、おじさんたちのハートを鷲掴みにしている。
16位にもおじさん世代から根強い支持を受けるロックバンドの名前が。THE BLUE HEARTSだ。「そういえば俺たち少し不良に憧れていたんだよな」「『リンダリンダ』は青春そのもの」と、初出場を期待する声が多数。
10位の長渕剛はこれまで4回出場している。語り草となっているのは1990年の初出場。ドイツ・ベルリンからの中継で、10分の出演予定のところ3曲熱唱し、17分30秒に。その影響で、後ろの出場者は曲を短くされた。しかも中継で「NHKのスタッフはみんなタコ!」と暴言を吐くなど、やりたい放題だった。
次は40代、50代の女性のランキング。メンツはがらりと変わって、1位は福山雅治。昨年まで13年連続出場し、昨年と一昨年はトリを務めた。今年も同じ事務所の大泉洋が司会を担当することもあり、出場は確定的だ。
2位は嵐。活動休止中ではあるが、『紅白』で再結集との噂もなくはない。櫻井翔が『紅白』のスペシャルナビゲーターとして登場するうえに、松本潤は来年の大河『どうする家康』で主演を務めるため、『紅白』出演は確実とみられている。「『紅白』限定でいいから復活してほしい」と、ファンは熱望している。
3位はユーミン。長年出場を断わってきたが、2005年に初出場。以来5回出場。今年デビュー50周年を迎えただけに、出場は濃厚とも。
4位のドリカムは過去に15回出場しているが、2014年以降出場なし。2018年にはNHK朝ドラ『まんぷく』の主題歌を担当し、出場が確実視されていたにもかかわらず不出場。9年ぶりの出場はあるか。
13位のスピッツも同様で、2019年の朝ドラ『なつぞら』の主題歌を担当したにもかかわらず出場なし。じつは『紅白』出場が一度もないのだ。
次に、若い世代の声を聞いてみよう。まずは、10代、20代の男性のランキングだ。
4位のmiletは、生年月日などのプロフィールを明かしていない。2019年にメジャーデビューし、2020年の『紅白』に初出場。昨年の東京五輪の閉会式で『愛の讃歌』を熱唱した姿を見た人も多いはず。「ビジュアルもよくて歌唱力も抜群なアーティストはほかにいない」と、美貌も注目されている“二刀流”だ。
6位のAdoは、2020年リリースの『うっせぇわ』が大ヒット。素顔を出さない覆面シンガーだ。「謎の多いキャラだけど『紅白』の舞台で実物を見たい」と、若い世代から熱烈な支持を集めている。
13位のヨルシカは、男女2人組のロックバンドだが、やはりプロフィール非公開。YouTubeの公式チャンネル登録者数は257万人で、『ただ君に晴れ』などのミュージックビデオの再生回数は1億回を突破している。
続いて、10代と20代の女性。Adoの人気が圧倒的だ。「今年の楽曲はすべてヒット、選ばれて当然」。2位から5位まではジャニーズ勢。
6位のSaucy Dogは、3ピースのロックバンド。2021年には初の武道館公演を成功させ、若い世代からもっとも注目されているバンド。
11位のAimerも、やはりプロフィール非公開の女性歌手。ジャズやブルースをベースにした音楽性や、愁いを帯びた歌声は「独特の世界観で、ちょっとほかのアーティストとは違う」と評価が高い。
アンケート結果の“世代間のギャップ”について、民放テレビ局で音楽番組を担当するプロデューサーはこう語る。
「若年層は今風なアーティストを選び、40代、50代は自分たちの青春時代から馴染みのある歌手を選ぶ。対照的な結果となりましたが、これは当然のこと。昔のような誰もが知るヒット曲は少なくなり、家族がバラバラにテレビを観る時代に、ひとつの基準にあてはめて歌手を選ぶことに無理があるのです。さらに、NHKと付き合いのあるプロダクション、レコード会社との間で“推薦枠”があるというのは業界の常識で、結果、若者に支持されているアーティストが推薦されるケースが増えています。これでは、40代以上の視聴者から不満の声が出るのも仕方ありません」
出場者の発表は間近。この中から何組が選ばれるのだろうか――。
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