いまだに事故原因の解明が進まないなか、一部の人々は不信感を募らせている――。
4月6日に発生した、陸上自衛隊のヘリコプターUH-60JAが宮古島の周辺で消息を絶ち、乗っていた隊員10人が行方不明になった事故。現在、6名まで発見され、水深106mの海底に、胴体部が損壊した機体の一部などが見つかっている。
さらに、海上保安庁が回収したヘリコプターの燃料タンクと思われる円筒状の漂流物には、切断跡のような形状が見られた。危険物質である燃料を入れるタンクが割れるほど、海面に激しく衝突したということだ。
ヘリコプターが最後の通信をおこなってから、レーダーから消失するまでの間は、わずか2分間。その間、救難信号が発せられることはなかった。
「救難信号はパイロットが手動で発信するものと、海水への着水を感知した時点で自動的に発信するもの、2種類が搭載されているはずです。自動発信装置は電源の入れ忘れも考えられますが、手動のほうは、搭乗機が稼働すれば自動で装置に電源が入ります。パイロット席の上部、手を伸ばせば届く場所にスイッチがあります。ひっくり返って海面に激突するくらいの“異常事態”がなければ、救難信号も発信できないような事態にはなりません」(軍事ライター)
つまり、短い時間で海面に激しく衝突するという、なんらかの“異常事態”が発生したということになる。防衛省情報本部の元情報分析官で、現在は軍事評論家の西村金一氏は、「低空飛行をしていたということでしょうが……」と言い、首をかしげる。
「まず前提条件として、ヘリコプターはエンジンがなんらかの不調で止まったとしても、ローター(プロペラ)がしばらくは慣性で回っているので、一気に墜落することはありません。突然、墜落したということは、かなりの低空飛行をおこなっていたということです。
しかし、墜落機は師団長の坂本雄一陸将の搭乗機で、目的は視察です。訓練計画が正しくおこなわれているかを視察するためのもので、島全体を見渡せる位置を周回することはあっても、個別の訓練状況の確認はしないため、低空を飛行する必要性がありません。なぜそのような低空を飛んでいたのか、目的がわからないんです」
ある元陸自幹部は、“体験飛行”をしていたのではないか、と推測する。
「幹部が搭乗した際に、パイロットから『前方にある雲の中に入ってみますね』とか、『急上昇をしてみますか』といった、少しアクロバティックな“体験飛行”を提案することはよくあります。いわば接待を兼ねたようなものです。
そこで、推測にはなりますが、あの海域はクジラのような水生哺乳類の生息地だと聞いています。もしかすると、低空飛行をして“ホエールウォッチング”をしていたのかもしれません。しかし、事故海域は風が強く、海面すれすれだと機体の維持が困難になるときがあります。バランスを崩して突然、墜落してしまったのかもしれません」
宮古島の現地住民も、不安は収まらない。
「真相が分からないから、怖いですよね。事故だといわれていますが、やっぱり中国のスパイがヘリコプターに何かしたのではないか、という噂は消えていません。宮古島は台湾海峡有事の“最前線”ですから。それに、長年の米軍の基地問題が背景にあり、やはり“軍”の公式発表を鵜呑みにはできないという不信感もありますから」
防衛省は民間会社に事故機の回収を依頼しており、うまくいけば、機体とともにブラックボックスも回収される見込みだ。これらが回収されれば、墜落当時の高度や速度、機体の姿勢や、パイロット同士の会話もわかるはず。1日でも早く、事故原因が解明されるのを待ちたい。
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