11月28日、愛知県警察本部で、名古屋市などに拠点のある指定暴力団・六代目山口組と、岡山市に本部を置く指定暴力団・池田組の意見聴取の場が設けられたが、両団体とも関係者は出席しなかった。
NHKは、愛知県公安委員会が、両団体をより厳しい取り締まりができる「特定抗争指定暴力団」に指定する方針だ、と報じている。指定後は、組事務所の新設や立ち入り、構成員5人以上で集まるなどの行為で即、逮捕となる。
「六代目山口組はすでに、神戸山口組との抗争が激化したため、『特定抗争指定暴力団等』に指定されています。池田組は分裂騒動後に神戸山口組に移籍しましたが、2021年9月に神戸山口組から離脱して、独立組織になっていました。
そのため、六代目山口組との特定抗争指定を“かけ直した”形になります」(警察担当記者)
公安委員会の意見聴取は、愛知県警のほかに岡山県、兵庫県、三重県の3県警で予定されている。
今回の「特定抗争指定」の発端のひとつになったのは、2022年10月、岡山市内で発生した事件だ。当時、地元住民はこう話していた。
「現場の理髪店は、すぐ裏に小学校もある普通の住宅街。今もパトカーが来て警戒しているし、市内の池田組の関係先には、警官に加えて組員がパトロールをしている。街は騒然としています」
10月26日の日中、岡山市内の理髪店で、池田組の池田孝志組長(77)が散髪中に襲撃された。襲撃の実行犯として、岡山市内に事務所を置く六代目山口組系妹尾組幹部の吉永淳容疑者(50)が逮捕されている。
「吉永容疑者は、刃物を手に『いけだー!』と叫びながら理髪店内に突入しました。しかし、店内にいた池田組長の用心棒4人から返り討ちに遭って、取り押さえられました。当時、池田組長は個室で散髪していて無傷。吉永容疑者や池田組長の用心棒の命に別状はないが、互いの怪我によって、店内はまさしく“血の海”となっていました」(警察関係者)
本誌は襲撃直後に撮影された写真を入手。返り討ちに遭った吉永容疑者は、用心棒たちにひどく殴打されたのか、頭部に深い裂傷が確認できる。
しかし、事件はこれで終わらない。組長襲撃に失敗したことで収まりがつかなかったのか、同日夜に池田組長の自宅マンションの駐車場で、発砲事件が発生。組長が使う車両に銃弾が撃ち込まれた。
その後、拳銃を所持して出頭、現行犯逮捕されたのは、妹尾組幹部の福岡一彦容疑者(57)。妹尾組は“乱”を繰り広げた一日で、最高幹部2人が逮捕される事態となった。
さらなる襲撃を警戒して、前述のとおり、岡山市内には物騒な雰囲気が漂っていた。暴力団に詳しいジャーナリストはこう話す。
「5月、9月と2度の襲撃事件が起きていました。じつは10月22日にも、池田組長の親族宅に軽自動車が突っ込みましたが、警察は発表していませんでした。この襲撃で今年5回め。6月ごろ和解を模索したようですが、9月以降、再度、激化していました」
背景には、7年以上経過している六代目山口組と神戸山口組の分裂抗争が現在、最終局面に差しかかっていることがある。
前述のとおり、池田組は現在、独立組織だが、現在も絆會(旧・任侠団体山口組)も含めて“三派連合”を組むといわれるほど、神戸山口組と関係が深いとされている。
前出の警察関係者は、こう明かす。
「神戸山口組の解散を目論んでいる六代目山口組の髙山清司若頭は、池田組を潰せば、組織の脱退が相次ぐ神戸山口組は一気に弱体化すると考えている。
『たとえ、六代目山口組が特定危険指定暴力団に指定されようとも、抗争は続ける』という強い意志があることを警察も把握しています」
そこまで池田組が狙われるのは、暴力団屈指の資金力があるからだという。関東在住の暴力団関係者はこう明かす。
「池田組は岡山だけでなく、東京にも多数の不動産を所有している。その資金をもとに、観光や風俗業でさらなる財をなし、若い組員にも資金や事業をまかせているほど。
池田組長がいるから、神戸山口組の資金面は安泰だとされてきた。それだけに髙山若頭は、分裂抗争終結に池田組長の首が必要だと考えている」
一連の襲撃後に岡山県警は、池田組と妹尾組の事務所など、岡山市内の関係先4カ所に使用制限の仮命令を出していた。
新たな「特定抗争指定」を受けて、市街地で繰り広げられた抗争は収まるのか――。
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