アメリカ連邦最高裁判所が6月24日、人工妊娠中絶に関する「ロー対ウェイド判決」を覆す判断をした。これにより、アメリカでは女性の中絶権が合衆国憲法で保証されなくなる。
最高裁が下した判決に、世界各国のリーダー、企業、セレブリティたちから反発の声が上がっている。
「『ロー対ウェイド判決』とは、それまでアメリカで違法とされていた人工妊娠中絶を女性の権利と認め、中絶を規制する州法を違憲とする1973年の判決です。未婚女性「ロー」が地方検事「ウェイド」を訴えた裁判で、中絶合法化が認められた画期的な判決となりました。
しかし、この判決が約半世紀ぶりに覆され、中絶に関する独自の法律を定める権限が各州に与えられることになります。すでに8州で中絶禁止法が施行されており、少なくともさらに8州がそれに続く予定です」(現地ライター)
カナダのトルドー首相は、「私の心は合法的な中絶の権利を失う数百万のアメリカ人女性とともにある。みなさんがいま感じている恐怖と怒りは想像を絶する」と発言。その結果、アメリカでは「カナダへの移住方法」の検索が激増しているという。
そして、この判決に異を唱えるべく立ち上がっているのが、アメリカカルチャーを牽引するセレブリティたちだ。
歌手のジャスティン・ビーバーは、「この発言がどれだけ効果があるかわからないけれど、女性は自分の体のことを自分で選べるようになるべきだ」とInstagramで発信。妻でモデルのヘイリー・ビーバーも同投稿をシェアしている。
「判決が下された6月24日、イギリスでは大規模な音楽フェス『グラストンベリー・フェスティバル』の真っ最中でした。ビリー・アイリッシュや、“いま最も売れている歌手” と言われる19歳のオリヴィア・ロドリゴらが、同判決に異議を唱えました。
オリヴィアが、今回の判決に携わった5人の保守派の判事の名前を出しながら、『あなたたちが憎い!』と叫ぶと、20万人近い観客から大歓声があがりました。
これまでもセレブリティたちは、“My body, my choice(自分の体のことは自分で決める)” というスローガンのもと、人工妊娠中絶の権利を訴えてきました。
2019年、アラバマ州で中絶を禁止する州法が制定された際、歌手のレディー・ガガは『中絶手術する医師の方が、性暴力をおこなった加害者よりも厳しく罰せられる可能性があるということ? これは悲劇です。声をあげましょう』と怒りをあらわにしています。
しかし、ガガの訴えも届かず、現在米国では一部地域で中絶クリニックの閉鎖が始まっています」(同前)
米・バイデン大統領も、判決を受け「基本的な権利を、制限するのではなく奪い取った」と批判。また、IT大手メタ(旧フェイスブック)やネットフリックス、金融のJPモルガン・チェースなど多くの企業が、従業員が中絶手術を受けるための旅費を負担すると発表している――。
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