「いぬのきもちWEB MAGAZINE」が送る連載、家庭犬しつけインストラクター西川文二氏の「犬ってホントは」です。
今回は「散歩」について。愛犬との散歩、毎日同じ時間、同じルートで……と、ルーティン化していせんか? それではせっかく外に出ても刺激が得られず、もったいない状態なのだとか。西川先生が勧めるのは「ちいワンポ」。ただのダジャレと思わず、ぜひ試してみてください(編集部)
お散歩は犬と暮らすうえで日課となります。
日々同じコースを同じ時間歩いていると、同じ時間に同じコースを散歩している人に何人も出会うことでしょう。毎日のように出会うわけですから、自然とあいさつするようになり会話もするようになります。
そうなのですね、犬を飼うと犬つながりの知り合いが増えていくのです。知り合いが増えることは、それはそれで脳に新鮮な刺激が入ることでもあり、悪いことではありません。
ただ決まったコースのお散歩は、やがて日常のルーティーン的なものになります。脳は新しい情報には反応を示しますが、ルーティーン的なものにはそれほど反応しなくなるといわれています。
初めての体験が脳を刺激する
見たことのない譜面を読むことを初見といいますが、その初見でピアノを演奏してもらうと脳の前の部分(前頭前野=思考や創造性を担う脳の部位)が活性化することがわかっています。
ところが、演奏を重ねてその曲に慣れてくると脳の自動化(考えなくとも勝手に体が動くようになる)が進み、前頭前野は活性化しなくなるのです。
前頭前野を活性化させることは、脳を鍛えることでもあり、脳のアンチエイジングに役立つという話を過去にしています。
ということは、犬の脳を鍛えたい、衰えさせたくないのであれば、犬の散歩コースはルーティーン化しないこと、と言えます。
日々の散歩コースを変える
この4月から、スクールの拠点を成城地区から駒沢地区に移しました。
成城のスクールは自宅から2kmの距離だったので、雨が降らない日は歩いて犬たちと通勤していました。コースは日々変える努力をしていましたが、バリエーションにも限界がありました。
駒沢スクールへ徒歩での通勤は不可能です。通勤は周辺のコインパーキングまで車で行き、そこからスクールまで歩いて行くことにしています。
パーキングはちょっと離れた場所をあえて選ぶ。そこから犬たちとの散歩を兼ねて駒沢のスクールに向かう。
散歩の出発点のコインパーキングはいくつもある。町の探検も兼ねているので日々の散歩の行程は日々変えることができる。
新しい脳への刺激が期待できるので、うれしい限りです。
そうはいっても、私のような散歩の仕方ができる方は、そうはいないかもしれません。
そこでお勧めしたいのが、「ちいワンポ」です。
「ちいワンポ」のススメ
かつて『ちい散歩』という番組がありました。
俳優の地井武男さん(故人)が、東京近郊の街を気ままに散歩する番組です。惜しくも地井さんは亡くなってしまいましたが、番組は加山雄三さん、さらには高田純次さんへと、散歩する人物とその番組名を変えて今でも続いています。
「ちいワンポ」はその地井さんの『ちい散歩』のように、いろいろな場所で犬とそぞろ歩きを楽しむというお散歩のことです(私が勝手にそう名づけているだけですが)。
目的地を設定してもいいし、目的地なしでもいい。
車に犬を乗せて走り適当なパーキングを見つけたら、そこに車を止め周辺を散策する。
犬を降ろしたら右に行くか左に行くかは気分次第。はてさて何と出くわすか、そんな気ままなお散歩を楽しむ。
車で何度も通過した街並みも、歩いてみると全く違う印象を受けたりします。
ぜひ休日は、この「ちいワンポ」を楽しんでみてはいかがでしょうか?
犬、飼い主両者の脳に、いい影響があること間違いなしですよ。
文/西川文二
写真/Can! Do! Pet Dog School提供
西川文二氏 プロフィール
公益社団法人日本動物病院協会(JAHA)認定家庭犬しつけインストラクター。東京・世田谷区のしつけスクール「Can! Do! Pet Dog School」代表。科学的理論に基づく愛犬のしつけ方を提案。犬の生態行動や心理的なアプローチについても造詣が深い。著書に『子犬の育て方・しつけ』(新星出版社)、『いぬのプーにおそわったこと~パートナードッグと運命の糸で結ばれた10年間 』(サイゾー)、最新の監修書に『はじめよう!トイプーぐらし』(西東社)など。パートナー・ドッグはダップくん(16才)、鉄三郎くん(11才)ともにオス/ミックス。