横浜DeNAの石井琢朗チーフ打撃コーチ(53)は来季から走塁コーチと一塁ベースコーチを兼務する。指導者として古巣に復帰して2季目を終え、走塁を「チームとして意識の低いところ」と位置づけた。現役時代に4度の盗塁王を手にしたかつてのリードオフマンが、足元の変革に乗り出している。
秋季練習では、フリー打撃と同時進行で走塁練習も行っている。ランナーは一塁ベースから実戦さながらに打球に合わせてスタートを切り、二塁で止まるか三塁を狙うかを判断。石井コーチは目を光らせ、時に厳しいげきを飛ばす。
今季チーム盗塁数はリーグワーストの33。ただし、「盗塁が多ければ勝てるのかというと、それはイコールじゃない」と、盗塁数増加が目的ではないと強調する。
求めるのは「得点と勝ちにつながる、意味のある走塁」。石井コーチが実例に挙げたのは独走でリーグ優勝した阪神打線だ。チーム本塁打数はベイスターズが約20本多かったが、得点数は阪神より35点も少なかった。その差こそが、走塁の差でもあったと受け止めている。
「走塁はセンスで教えられるものではない」が持論だが、それでも「意識はできるし、その意識一つで変われる」。変えようとしているのは足の速さや技術ではなく、走塁に向き合う姿勢だ。「一つ先の塁を狙うのは当たり前。二つ先の塁をどれだけ意識して走れるか」と説く。
今季は序盤こそ得点につながる好走塁が目立ったが、シーズンが進むにつれてそうしたシーンは影を潜めた。石井コーチも「継続と徹底、持続性が少し足りない」。一塁ベースコーチの兼務には「選手は嫌でしょ」と笑いつつ、「浸透させないと何も変わらない。口うるさくしないといけない」と、嫌われ役も引き受ける。
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