セ・リーグ3位の横浜DeNAはクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージで敗退し、今季の戦いを終えた。本紙で長きにわたってチームの戦いを評論してきた球団OBの高木由一氏が、シーズンを振り返りつつ、三浦大輔監督へ来季に向けた提言を行った。
2017年シーズンから始まった開幕前の優勝予想のコラムで、毎年ベイスターズを「1位」に挙げてきた。切にリーグ制覇を願ってきたが、今シーズンもかなわぬ夢となってしまった。
◆チームをけん引した投打の柱
74勝66敗3分け、3位でのクライマックスシリーズ(CS)出場はよく頑張ったと言えるのか、残念であったのか。三浦監督を筆頭にチーム、そしてファンも残念だったと思っているはずだ。
むしろ、残念と思わなければダメである。
18年ぶりにリーグを制した阪神とはゲーム差12。選手個々の実力を比較すれば、そこまで差が出るとは到底思えない。盗塁数では79と33、敬遠を含めた四球でも529と377と大きな差を付けられたが、それ以上に感じた「差」がある。
昨シーズンからの課題である「ここ1番」のゲームに弱かったことだ。
球宴前の阪神、広島との6試合で1勝5敗、勝てば2位に滑り込める最終戦の巨人戦でも0─1で敗れた。1点差で敗れた試合は24を数え、打てなければ負けるという試合を、シーズンを通してやっていなかったか。
CSファーストステージの広島戦で顕著に出てしまった。1戦目の桑原はバスターエンドランでフライを打ち上げ、2戦目の大田はバントを失敗した。三浦監督はシーズン前、打てなくても「泥くさく1点を取る」という目標を掲げたが、徹底できていなかった。小さな積み重ねが結果として表れたのだ。
毎年のように同じ失敗を繰り返しては未来は決して明るくない。首脳陣が腹をくくって指示を出し、ベンチやロッカールームでは選手同士でも叱咤激励できるのか。それができるリーダーは誰なのか。根本から課題を洗い出さないとならない。
16勝を挙げた東、全143試合で4番を担った牧は投打の柱として、チームを立派にけん引した。胸を張ってもらいたい。CSで東は流れを失う三盗を許し、牧は9打数1安打と期待に応えられなかったが、責めるわけにはいかない。経験を来季以降にどうつなげるか。今永やバウアーの去就が不確定で、変革の時を迎えようとするチーム浮沈の鍵を握っている。
シーズンが終わり、新たなコーチ人事の動きも活発化している。3年間ファームで指揮を執った仁志監督の退団も決まったが、球団には将来的な幹部を育てる視野を持ってもらいたい。2軍で育てるのは選手だけではない。采配や打順の組み替えなど、監督はやらないと分からないものだ。
来季4年目となる三浦監督はチームに何を残せるのか。中畑監督はチームに明るさを植え付け、ラミレス監督は勝つ喜びを。では三浦監督は─。
優勝を旗印としながら、つかめなかった事実をしっかりと受け止め、監督自身も変わっていかないと。そのための戦いは秋季トレーニングから始まる。1998年の日本一からもう25年か。俺の目の黒いうちに、悲願を遂げてもらうためにも。
たかぎ・よしかず 1971年にドラフト外で大洋(現横浜DeNA)に入団。プロ16年で957安打、102本塁打、463打点。87年に引退後、1軍の打撃コーチなどを歴任。98年には「マシンガン打線」の生みの親として、日本一に貢献した。愛川町出身。74歳。
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