プロ野球横浜DeNAベイスターズの東克樹投手(28)がセ・リーグの最多勝、最高勝率とベストナインをいずれも初受賞した。2020年の左肘靱帯(じんたい)の再建手術(通称トミー・ジョン手術)などの苦難を乗り越え、球界屈指の投手へと成長した。復活を支えた一人が、横浜市金沢区などで整骨院を経営する高子大樹さん(46)。豊富な知識と治療で寄り添ってきた左腕の快挙を喜んだ。
高子さんは、サッカー元日本代表でベルマーレ平塚(現湘南ベルマーレ)などで活躍した岩本輝雄さんの専属トレーナーを務めた経歴を持つ。2007年に「たかこ整骨院」を開業。現在はFC東京の中村帆高やムエタイ王者の奥脇竜哉ら多くのアスリートも通っている。
よく寝違えて困っていたという東も、知人の勧めで「体全体のメンテナンスを」と21年春に来院。高子さんは「肘の神経は首から出ている。肘の負担を減らすため、胸椎の可動性を意識して治療した」と振り返る。
独自理論で悩みを解決
驚かされたのは肩関節のしなやかさに加え、意識の高さ。治療中も常に腕のストレッチを欠かさない東の姿に「(施術者に)任せきりの子が多い中で、自分の判断基準を持っている。1ミリでも成長したいという貪欲さがある」と感じた。
22年シーズンは開幕投手を任されながら1勝にとどまった東。「あごの周りがストレスで固まり、負のオーラが出ていた」(高子さん)が、本人から一度も愚痴を聞くことはなかった。野手のミスで白星が消えた試合後も「いつか僕を助けてくれる日が来る」と話していたことを覚えている。
高子さんは治療のほか、腹圧を高める呼吸法なども提案。定期的な施術は昨シーズンで終わったが、今季も時折、最新のストレッチ動画を送って助言した。
東は「先生はすごく勉強熱心な方」と言う。高子さんは10年前から海外の大学で人体解剖研修を実施し、教科書では知り得ない筋肉の形状や、筋膜が体の動きに影響することなどを学んだ。「痛みの原因は必ずしも痛いところにあるわけではない」との独自の理論にたどり着き、患者の悩みを解決してきた。
東は今季16勝(3敗)をマーク。球団のレジェンド、遠藤一彦さんが1983年に達成した球団記録の12連勝に並ぶなど歴史に名を刻むシーズンを送った。
高子さんは「探究心と努力、周りの人を大事にしてきたからこそ、結果的に運と実力を引き寄せた。今後も応援したい」と感激していた。
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