【姜尚中「日本学術会議の任命拒否問題と会議の在り方をごちゃ混ぜにしてはならない」】
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「私が目指す社会像は、『自助・共助・公助』そして『絆』です。自分でできることはまず自分でやってみる。そして家族、地域で互いに助け合う。その上で政府がセーフティーネットでお守りする。そうした国民から信頼される政府を目指します」
「居抜き内閣」などと揶揄(やゆ)されながら、一方で携帯電話料金の引き下げやデジタル庁の創設などで「菅カラー」も出そうとする新首相。この国をどこに向かわせようとしているのか。処遇されたブレーンたちの顔ぶれから考えてみたい。新政権の発足で、安倍政権で成長戦略づくりを担った「未来投資会議」が「成長戦略会議」に衣替えした。後に触れる内閣官房参与も含め、登用された人たちは以下の通りだ。
●菅首相の主なブレーン(敬称略)
<成長戦略会議の有識者メンバー>
金丸恭文・フューチャー会長兼社長
国部 毅・三井住友フィナンシャルグループ会長
桜田謙悟・SOMPOホールディングス社長
竹中平蔵・慶応大名誉教授、パソナ会長
デービッド・アトキンソン・小西美術工藝社社長
南場智子・ディー・エヌ・エー会長
三浦瑠麗・山猫総合研究所代表、国際政治学者
三村明夫・日本商工会議所会頭
<内閣官房参与(カッコ内は担当分野)>
飯島 勲・元首相秘書官(特命)
平田竹男・早大教授(文化・スポーツ健康・資源戦略)
木山 繁・元国際協力機構理事(経協インフラ)
西川公也・元農林水産相(農林水産業振興)
今井尚哉・元首相補佐官兼首相秘書官(エネルギー政策等)
高橋洋一・嘉悦大教授(経済・財政政策)
宮家邦彦・立命館大客員教授(外交)
岡部信彦・川崎市健康安全研究所所長(感染症対策)
熊谷亮丸・大和総研チーフエコノミスト(経済・金融)
中村芳夫・経団連顧問(産業政策)
村井 純・慶応大教授(デジタル政策)
■中小企業の再編や統合
「政策的に正しくても、コロナ禍による失業増が懸念されるときに、雇用の受け皿だった中小企業が再編されて大リストラが行われれば、どうなるのでしょうか。菅内閣がやっている各論の構造改革ばかりでは、これからやってくる100年に1度の大恐慌に太刀打ちできません」
「三村氏には中小企業の人たちの立場を代弁することが期待されているでしょうから、アトキンソン氏と対立する場面もあるでしょう。場合によっては『日商会頭も賛成したのだから』と、中小企業者を納得させるためのアリバイづくりに利用されることがあるかもしれません」
■旧中間階級の切り捨て
「零細企業や農協などかつての自民党の支持層だった“旧中間階級”を切り捨て、専門職や管理事務職に従事する“新中間階級”への乗り換えが決定的になりました。一つの階級の崩壊につながります。もう一つ気になるのは、非正規雇用者の問題です。顔ぶれからは、今はまだ規制がある建設業などの分野にも切り込んでくる予感がします」
「経済の専門家でもありませんから必然性は感じられません。差別・排外主義の象徴ととらえられることもあった人ですから、そういう意味ではコア支持層へのアピールだと感じられます」(橋本教授)
■大失業時代への対応
「政府と日銀の財布を一体として考える『統合政府』論者で、政府は借金を心配せずにどんどんお金を使え、という方です。竹中氏やアトキンソン氏の路線とは違うタイプに感じます。今後の大失業時代は政府が中心になって雇用を生んでいくしかないので、高橋氏がどういう役割を果たすか注目しています」
「研究者としての能力は高いですが、高橋氏は行動原理の基盤に(古巣の)財務省に対する反発があり、それがベースでの助言で政策がゆがむことが心配です。大きな影響力を行使するのであれば、助言内容は国民にオープンにするべきです」
(編集部・小田健司)
※AERA 2020年11月9日号より抜粋
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