皆さん、着なくなった服は、普段どうしていますでしょうか。捨ててしまうか、タンスの奥にしまったままのどちらかになっていませんか?
こんにちは、クイズプレイヤーの林輝幸です。
世の中をよくしようと頑張っている人や場所を探求していく「林輝幸のインプット・ジャーニー」。
今回はもう着なくなったストライプのシャツを片手に、捨てられてしまう服を少しでも減らすための「染め直し」をしている工房にやってきました。
大学生時代に買った思い出のシャツがどうなるのか、服を蘇らせる「染め直し」にチャレンジしてきます!
吉田昌弘社長
ようこそいらっしゃいました。株式会社きぬのいえ社長の吉田昌弘です。
染物職人・井澤剛史さん
染物職人の井澤剛史です。今日はよろしくお願いします。
林輝幸
こちらこそよろしくお願いします。「SOMA Re:」のキャッチコピー「捨てるなら、染めよう」っていい言葉ですね。
吉田社長
ありがとうございます。実は現代の服って、膨大な廃棄の上に成り立っているものなんですよ。
例えば、ハイブランドの洋服や生地は、次のシーズンが来て古くなると焼却処分されてしまうものもあるんだそうです。
林
そうなんですか。
吉田社長
生地を焼却処分しないと、横流しされて模倣品や海賊版が出回ってしまう可能性があるからなんです。
吉田社長
まあ、ファッション業界的にはある種、当たり前のことなんですけどね。ただ、当たり前すぎてこれまであまり表沙汰にはなってこなかったんです。
林
ハイブランドは、自らの価値を維持するためにそうするしかないのか…。
吉田社長
あとは10年以上前からですけども、ファストファッションと呼ばれる、いわゆる使い捨て。1年着たら翌年は捨ててしまうという…。
そんな状況にちょっと疑問を感じていました。
井澤さん
そもそも綿花から糸を作って、Tシャツが1000円足らずのコストでできるはずないんですよ。
林
大量生産・大量消費を前提にしているからこそ、なしえることだと?
井澤さん
そうです。ドーンと作って、ドーンと売る。しかも売り場では、あらゆる色、あらゆるサイズが全部棚にそろってますよね?
棚に隙間があるとお客さんの購買意欲を下げてしまうということで、棚は常に商品で満たされた状態にしないといけないそうなんです。
林
なるほど、そんな事情が。
井澤さん
でもこれって、よくよく考えてみたら異様な光景です。
常にその状態にしておくために、売れる枚数の何倍も服を作っておかないといけないわけで、バックヤードの大量の在庫がそれを可能にしているんです。
井澤さん
そのため、一般的にアパレルは定価の半分の値段で売っても黒字になるように作っていると言われています。
林
在庫のすべてが売れるわけじゃないことは織り込み済みなのか…。たくさん売ったり高く売ったりするために、捨てるものを大量に作っているんですね。
吉田社長
そんな服を取り巻く状況をなんとかできたらなあと。あとは、ちょっとシミがついちゃった服とかも、捨てられちゃいますよね。
吉田社長
うちは染織が本職ですので、それを我々で蘇らせることができるんじゃないかと考えて、この染め直しの「SOMA Re:」というサービスを始めさせていただきました。
林
人間と服の関係を変えてみようという、大いなる試みですね。
吉田社長
でも染め直し自体は別に新しいものではなく、昔は着物でやっていたことなんですよ。
そうやってかつてみんなでやっていた"服の循環"を、またやってみたいと思ったんです。
さて、いよいよ染め直し体験の始まりです。
今回は普段「SOMA Re:」が実施している「体験コース」ではなく、通常の作業を丸ごと体験させていただくということで、僕のシャツだけでなく他のお客さんの服も一緒に染めていきます。
つまり、失敗が許されません。ああ、ドキドキする…。
林
洗いはどうやってやるんですか?
井澤さん
洗剤を入れて浸け込みながら、こまめに動かしていきます。この温度ならそれだけで汚れが落ちるんですよ。
井澤さん
首回りや袖回りなどの脂汚れが落ちきっていないと、染めたときにムラになってしまいます。そのため、80℃という温度で脂を分解しやすくするんです。
なかなか落ちない汚れがあったら、ご自宅でも試しに洗剤を強めにして80℃でやってみてください。落ちるかもしれませんよ。
林
じゃあ、まずは僕が持ってきたストライプのシャツを水槽に入れますね。
…あ、これは手袋をしていても熱い。
井澤さん
だから今日みたいな夏は大変なんですよ。冷房の意味がない(笑)。かといって沸かす前は水ですので、冬は水が冷たくて手が痛くなるので大変です。
井澤さん
それが終わったら、次は染めに使う染料の調合を行います。
林
調合室は作業場の裏にあるんですね。いろんな色の染料が入った容器が並んでいて、ちょっと理科の実験室のような雰囲気。
林
ところで今日は何色で染めるんですか?
井澤さん
全部黒です。一色にまとめることで、Tシャツなら1枚1430〜2090円、パーカーなら3080〜5390円と、ファストファッションの服1枚分くらいの価格に抑えています。
たまに緑とか、黒以外の色で染め直しする服を期間限定で募集することもあるんですよ。
林
今、入れているのは黒系の染料ですか?
井澤さん
黒ではないです。粉末は黒っぽく見えますけど、別の色です。
林
では、黒はいつ入れるんですか?
井澤さん
うちで使っている黒は液体の染料なので、先に粉末の染料を調合してから、最後に黒の液体染料と混ぜ合わせるんですよ。
…と、ここで問題です!僕は今、黒の染料にいくつかの色を足しましたよね? それはいったい何のためでしょうか?
林
いきなりのクイズ!う〜ん、先にそれを聞いておけばよかった…。
1問目💡林輝幸とクイズに挑戦!
林
答え・解説が知りたい人は右側の赤いマークをタップ!
林
Aの"ツヤを出すため"は色に依存しなそうだし、その線で考えたらBの"染料の入りをよくするため"も色に依存しなそうだし…。
ということは、Cの"より真っ黒にするため"なのかなあ…。
林
(でも待てよ。そもそも「SOMA Re:」は、服をできる限り長く愛用しようというコンセプト。Dならそれとも合致する…!)
…Dが一番理にかなってると思います。
井澤さん
正解はCです!
林
えーー!なんとなんと…。
井澤さん
色の三原色ってありますよね?いろんな色の絵の具を混ぜていくと、だんだん黒に近づいていきます。
それと同じように、染料もいろんな色を混ぜることで、より黒くするというわけなんです。
林
素直に考えたらよかったのか〜。
井澤さん
うちが使っている黒の染料って、ちょっと青みがかってるんですよ。紺色みたいな黒なんです。
井澤さん
僕の考えですけど、多分、青っぽい黒のほうが簡単に紺色にできるから需要が大きくて、あえてそうしてるんじゃないかと。
だからその青みをなくすために、こうやって他の色を加えて違う方向へ引っ張ることで黒に近づけてやるんです。
井澤さん
染料を入れてかき混ぜた後、服を入れていきます。
林
またお湯にしていくんですね。
井澤さん
最終的に1時間かけてまた80℃まで上げます。温度を上げると染料が入るようになるんですよ。料理と同じなんです。
林
煮物みたい(笑)。ではまず僕のシャツを入れますね。えいっ…。
林
もう戻れません。なんだか人生のようですね(笑)。
そういえば、井澤さんはどんな学生生活を送っていたんですか?
井澤さん
僕は出身がこの寄居町で、東京の目黒にある服飾系の大学まで毎日電車で通ってました。片道3時間ですよ(笑)。
林
そこではどんな勉強を?
井澤さん
1〜2年では基本的な洋裁などを学んで、3〜4年で染めと織りの専門コースを選択しました。
井澤さん
もともと服が好きで、マーケティングやデザイン、歴史とかいろいろ勉強したんですけど、やっぱり自分にとって一番面白かったのがそのコースだったんです。
林
卒業制作とかしたんですか?
井澤さん
生糸を自分で染め、それを手織りで織りあげてできた生地を使って最終的に着物と帯を作りました。
林
その手間を経験すると、服や生地を気軽に捨てられなくなるのもわかります。
井澤さん
もともとこの辺は、養蚕が盛んな地域だったんですよ。土壌的に米作りがしにくかったので桑を栽培して、それを餌に蚕を飼育して繭から生糸を作っていたんです。
林
なるほど、だからこちらの会社の名前も"きぬのいえ"なんですね。
井澤さん
そして明治時代になって、この一帯で生産された繭は、世界遺産に認定された群馬の富岡製糸場まで運ばれて、そこで生糸として大量生産されることになりました。
林
生糸の輸出は戦前まで日本の基幹産業でしたもんね。
井澤さん
そうなんです。それで昭和になって、群馬から寄居町を抜けて東京の八王子までつながる鉄道が、繭と生糸と絹織物の輸送のために敷設されました。
それが今のJR八高線です。
林
そして八王子からは今のJR横浜線で横浜港まで運んで、そこから輸出するというわけか…。
井澤さん
そんな環境で僕は生まれ育ったので、自然と興味もそっちの方向へと向いていって染物職人になったのかもしれないですね。
そして、世の中には服にすらなれない糸や生地がたくさん存在することを意識するようになって、それをなんとかできたらと思うようになったんです。
吉田社長
どうですか?黒く染まったかな?
林
はい。でも全部が黒い服になってしまったので、もうどれが自分のシャツなのかわからなくなってしまいました(笑)。
林
「SOMA Re:」では染め直し以外にも、服の廃棄を減らす取り組みをしているんでしょうか?
吉田社長
「OTAKARA SOMA Re:」というサービスも始めました。
ここの近所にあるカフェ「CHILL」さんの向かいにあるガレージを利用して、そこで野菜の無料販売所みたいに古着を1枚500円で無人販売しています。
吉田社長
1000円出したら、1枚サービスで3枚買えます。実質1枚333円。ただ、古着といっても我々で厳選したアイテムなので、ある意味セレクトショップです(笑)。
井澤さん
別途料金はかかりますけど、こちらに持ち込んでいただいて染め直すこともできますよ。
林
いろんな取り組みをされているんですねえ。
吉田社長
他にもいろんなサービス展開をしているのですが…ここで問題です!
林
すっかり油断してました(笑)。
2問目💡林輝幸とクイズに挑戦!
林
選択肢・答えが知りたい人は右側の赤いマークをタップ!
林
(利用者ゼロ?う〜ん、Aの"養蚕体験と染め直し体験をセットにしたツアー"は学校の社会科体験として需要がありそうだし…。
ここはBの"染め直しの注文を週末に取りに来てくれるサービス"か、Cの"染め直した服をシーズンまで預かってくれるクローゼットサービス"かな?)
林
(というかBは、これだけデリバリーサービスが充実した社会であえて自前でやるのはコスパがあまりに悪すぎる…)
…なので答えは、B?
吉田社長
残念。正解はCなんです。
林
また外した〜。
吉田社長
要は染め直す服ってそもそも愛着のあるものだから、染め上がったらすぐに出来上がりを見たいというわけなんですね。
井澤さん
よくよく考えてみれば当たり前のことに、あとで気が付きました(笑)。そんなわけで僕たちも、染め上がった服たちを見てみましょうか!
林
染め直すと、服の表情がまるで変わりますね!これは本当に蘇りだ〜。
井澤さん
そうなんですよ。しかも完全に乾くとまた変わってきます。
よく見るとわかるんですけど、今回の染め方だとポリエステルなどの化学繊維でできた部分は染まらないんですよ。
林
縫い合わせた糸の部分だけ元の色が残っていたりしていて面白い。あそこにある真っ赤なパンツは、糸とボタンだけが赤いままになってますね。
井澤さん
…あ!林さんが今着ている白いシャツ、黒い染料がついてますよ。
林
え!ほんとだ…。
林
というか今日は染物体験なのに、なんでよりによって白を着てきてしまったんだという(笑)。
林
…じゃあ、これも染め直しお願いしてもいいですか?
吉田社長&井澤さん
もちろんです(笑)。
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