売り物のエビが数えられない…46歳で認知症に。“自死”も浮かぶ絶望越え、見つけた居場所と「幸せ」
京都新聞
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  • 総評下村健一

    認知症当事者の写真家と、プロの写真記者とのコラボが生んだ、珠玉の一作。当事者目線の世界をスマホ読者に共有すべく凝らされた工夫が素晴らしい。 エビの絵にかぶさるご本人の戸惑った声と、浮かんでは消える儚い数字が織りなす、不安定な世界。「幸せです」という読者の意表をつく言葉の直後に配置された、美しいガラス光の写真が表す心模様。そのすぐ次の写真から延々と続く、暗雲が垂れ込めたようなモノクロのイメージ。中でも「夕食が思い出せない」の動画は、あえてわかりにくい表現で、当事者のもどかしさを伝える。 一転、ストーリーが前向きになる境目の部分にデイサービス利用者さんの絵を配置して、それを機にカラー写真に戻すビジュアル構成も鮮やかだ。さりとてカラー写真群はくっきり鮮明になる事はなく、そのぼかし方は最後まで淡くて優しい。 小手先の技巧ではなく、ご本人のリアリティーにこだわったからこそ生まれた、貴重な視覚表現の記事だ。

LINE NEWS編集部より

40代半ばという若さで「若年性アルツハイマー型認知症」の診断を受けた男性が、病気と向き合い不安を乗り越える過程を追った記事。絶望から抜け出し「幸せ」だと言い切れるようになるまでの心情の変化を、認知症の世界を視覚化した写真とともに表現しています。