「地獄絵図」にうなされても…夢追う息子に誓った牧場の再建「僕の代で潰すわけには」
福島中央テレビニュース
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  • 総評下村健一

    震災で0頭になった牧場を200頭以上にまで立て直した、復興の中では「成功」している事例とも見られそうな佐久間さん。そんなケースでも、背景には大変な地獄絵図があるということを示すことで、「うまくいかない事例」を紹介するのとは違ったアプローチから被災地の苦悩を捉え直すことができる記事。こうして私たちは #知り続ける ことが大切なんだよな、と活を入れられる。 写真の中の息子・亮次さんが、最初の1枚から最後の1枚に向かってだんだん成長していくのも素敵だ。紙面だと散在する写真をどの順に見るかは読者が決めるが、ネットニュースはスクロール順に見ることになるので、発信側が写真を見せる順番を決められる。読者にとっては《制約》だが、それをうまく活用した成功例だ。 一方、動画の中に、取材対象者の喋りや現場の生音以外に原稿を読み上げる[ナレーション]を入れたのは、どのような意図なのか。文字と動画が記事中に混在する時代の棲み分け(役割分担)について、考えを深めていきたい。

  • 総評清水康之

    「あきらめるわけにはいかない」。その一心で、実際に牧場を再建してみせた哲次さんの苦悩と葛藤、執念と努力を描いた記事である。哲次さんの言葉どおり、まさに「地獄絵図」だったのだろう。家族のような存在である牛たちの変わり果てた姿を目の当たりにした時の哲次さんの絶望感は想像するに余りある。父、信次さんも「牛とここに残って、死んでもいい」とさえ思ったという。酪農家として、これ以上過酷な体験があるだろうか。 しかし、一家がそうした経験をしても、息子の亮次さんは「僕の将来の夢は、酪農家になること」との思いを貫き、酪農の勉強をしながら牧場を手伝っている。絶望から立ち上がろうとする父親の背中を見てきたからこその決意なのだろう。そしてその息子の決意に、今度は哲次さんが触発されて、更に歩みを進めていく。哲次さん、信次さん、亮次さん。それぞれが互いの存在や覚悟、人生に感化されながら生き抜く家族の物語でもある。

LINE NEWS編集部より

東日本大震災によって代々続いてきた生業を失い、"地獄"を見た酪農家が牧場を再起するまでを追った記事。助けられなかった牛たちへの思いを抱き、多くの困難に立ち向かう親子が描く夢と未来を映し出します。