ノミネート記事

- 総評長野智子
これぞ札幌テレビ放送ならではの作品で、個人的には大賞候補の作品です。 昭和、平成、令和、さらにはウクライナ侵攻に直面する今、長い時間をかけて築かれてきた得能さんとトマソンさんの交流やトマソンさん自身の変化ほど、北方領土をめぐる現在地を痛感させるものはありません。 怒りを乗り越え、未来を見据えることでロシア人のトマソンさんを「息子」と呼んだ得能さん、そしてその思いを受け入れたトマソンさんたちの努力や交流が、人に寄り添わない利害ばかりの政治によって分断されていく。 日本人、ロシア人にかかわらず本当にたくさんの人に見てもらいたい作品です。
- 総評井本直歩子
連日流れるロシアによるウクライナ 侵攻のニュースをグッと身近に感じさせ、日本では風化されつつある自国の苦悩に光を当てた大作。強制的に領土を脅かされ、戸惑いながら離れなければならなかったウクライナ人と、77年前の北方領土の日本人の姿が見事に重なって伝わります。自宅を奪われ、トイレも窓もない自分の家の物置で暮らす屈辱は、世界中の多くの難民や国内避難民の人権侵害の状況さえも思い起こさせます。誰が、何の権利があって自分たちの権利を奪うのか。 不条理の中にも育まれてきたロシア人との絆や、領土返還を目指す日本人の地道な努力やひたむきさは、怒りの中にも、希望を持たせてくれ、人間の尊厳を強く感じさせてくれます。それは、プーチン大統領率いるロシアの政権とのコントラストを浮かび上がらせ、胸を打ちます。
LINE NEWS編集部より