「なぜ僕を育ててくれなかったのですか」生みの親へ書いた手紙…出自を知りたい養子の思い
読売新聞オンライン
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  • 総評清水康之

    本記事を読み、あらためて「家族」とは、もろく、しかし誰にとっても避けられない存在であると感じた。同時に、私がNHKのディレクター時代に出会った、自死遺児の家族を思い出した。当時大学生だった彼らとはいまでも付き合いがあるのだが、そのひとりが先日、自殺で亡くなった父親の年齢を超えてようやく分かるようになったことがあると語っていたのだ。 彼はずっと、自殺で亡くなった父親に対して、怒りや憤りを強く感じていた。父親が自殺で亡くなったことで母親が親戚から責められてうつ病になり、彼も学校でいじめなど大変な目にあったからだ。 しかし、結婚して彼にも子どもができ、可愛くて仕方ないその子どもをある日ギュッと抱きしめた瞬間に、亡くなった父親に自分がギュッと抱きしめられた瞬間のことをふっと思い出し、こんなに可愛い子どもを置いて自殺で亡くならなければならなかったなんて父親はどれほどつらかっただろうかと、突然ボロボロと涙が溢れてきたというのだ。 記事中の、龍生さん、まいさん、そして悟さんと由美子さんが、いま互いをかけがえのない家族だと認め合えていることの「奇跡とも呼びたくなる必然」とその尊さを、本記事を読んで感じた。

  • 総評下村健一

    家族間のコミュニケーションの主たるツールはLINE、という人は多いだろう。そんな日常の親子のやり取りの合間に紛れ込んで届くこの記事もまさに、ある親子の特別なコミュニケーションの話だ。思いを込めた手紙と、限られた対面と。「なぜ、僕を育ててくれなかったんですか」という重厚な言葉を、「今日何時に帰る?」といった軽い言葉が交わされるのと同じ場にぶち込んでみせた加納昭彦記者にも、そんな軽重混在を実現しているLINEという場にも、感服する。 そして、この記事で動画が果たしている役割の大きさ!主人公たちの語り口がわかることが、どれほどイメージの助けになることか。これは、新聞紙ではなし得ぬ伝達力だ。文中での置き所や、動画内の人物の登場順などに更なる工夫を加えたら、この伝達力はもっと高みを目指せるだろう。 絵本を1ページずつめくっていく動画も、幼時の主人公と一緒にお話を見せてもらっているようで、心に届く。さらに細やかな表現の配慮をして、例えば「ページの左上の隅を持って右下へめくる」という画面加工を「右下からめくり始めて左へと開いていく」チェンジの仕方に変えるなどすれば、見ている者はよりナチュラルに絵本の世界へ入っていけるだろう。 そして、図表にこそ動画を。パーツごとに出現させて、どの順に見るのかをナビゲートすることで、わかりやすさは格段に上がる。テレビ人がスタジオで使っているフリップの"めくり"の手法を、参考にしてみては。また次回作に期待したい。

LINE NEWS編集部より

特別養子縁組で血の繋がらない親に育てられた男性を取材。「自分は何者なのか」という男性の悩み、生みの親に会ったことでの心境の変化を丁寧に描写する。生みの親と育ての親、子を思うそれぞれの生の声を伝え、制度の課題と"親子"のあり方を投げかける。