「マンガなんかで」投げられた批判…後ろめたさ。それでも“狂気の戦場”戦後世代が伝え続ける理由
マグミクス
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  • 総評下村健一

    漫画やアニメなどに特化した情報サイト「マグミクス」だから到達できた記事。専門分野を持ったメディアが、その個性をLINEという場とうまく組み合わせたときの底力が感じられる。 まず、漫画の画面をたっぷり静止画で貼り付けて見せているのが魅力的だ。1コマ1コマを無言の紙芝居のように次々に見せてゆく動画の手法にも、漫画への深いリスペクトがにじみ出る。各コマは無加工で、勝手に絵の一部分にズームインしていったりパン(カメラの横移動)をしたりせず、漫画家の描いた世界の形を決して犯さない。画像加工技術の進化で盛り盛りな動画が溢れる中、この抑制的な表現はかえって印象的だ。 数あるエピソードの中から、「戦死者の最期の姿を報告で"盛る"」という情報操作の話をピックアップした見識には、頭が下がる。敢えてLINE NEWSの場で、LINE NEWSを含めた全ての《情報》というものへの接し方をスマホユーザーたちに注意喚起していて、メディアリテラシーの深い教材にもなっている。 「戦争への関心」の入口としてのペリリュー、「ペリリューへの関心」の入口としてのLINE記事ーーーという《入口のマトリョーシカ》構造も、LINE NEWSで世の中の無関心の壁を破りたいライターにとってはアプローチのヒントになるだろう。

  • 総評亀松太郎

    ロシアのウクライナ侵攻によって「戦争」が一気に身近なニュースとなった。そんな中、過去の日本の戦争を振り返ることの重要性も増していると言えるが、約80年前の戦争体験を語り継ぐことは年々難しくなっている。 その難題にあえて取り組み、戦争の悲惨さを伝えようと奮闘している「戦後世代」がいる。この記事が紹介するのは、そんな戦争体験の継承者たちの姿である。なかでも、マンガを通して戦場の狂気を描く『ペリリュー 楽園のゲルニカ』の作者・武田一義さんの真摯な姿勢に心を打たれた。 とりわけ印象的なのは、マンガ制作のために取材した戦争体験者から「話を聞けば体験していなくても描けるとお考えですか?」と問い詰められたというエピソードだ。 「取材しているとはいえ想像も交えて描くのですから、本来は批判されても仕方ありません」 そう謙虚に受け止めつつ、数々の表現上の工夫によって、できるだけ多くの人に戦争の理不尽さを理解してもらおうと努める武田さん。記事が伝える彼の姿に、マンガ家としての強い矜持を感じた。 100万部以上のヒット作の作家も悩みながらマンガを描いている。創作者の苦悩に共感した人も多いのではないだろうか。

LINE NEWS編集部より

アニメ化も発表されている戦争マンガ「ペリリュー 楽園のゲルニカ」。戦後生まれの作者は、戦争体験者から批判を受け、葛藤を抱きながらも、フィクションを通して戦争の真実を伝え続ける。「戦争をどう考えるか」。"戦後77年"を生きる、あなたに問いかける。