小5に6キロ減量指示、おかずはコンニャク…そして柔道から離れた 子どもに課す勝利至上主義は何のため
朝日新聞デジタル
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  • 総評井本直歩子

    オリパラ東京大会から半年後に発表された全柔連の小学校の全国大会廃止は、多くの媒体が関連記事を出した中、特に朝日新聞は問題の実態を丁寧に取材し続けてきました。スポーツ史に一石を投じる議論をリードしたと言っても過言ではないほど。この記事はその総集編とも言うべく、歴史や著名アスリートも含めさまざまな立場の人たちの言葉を捉えつつも、最終的には一番最初の柔道少年のストーリーに要点のすべてがぎゅっと集約されていて、心に刺さる記事でした。 私自身も小学生から全国大会で優勝した早咲き組ですが、同じような早咲きの選手の多くは伸び悩み、記録がすべての世界にいた彼らは、オリンピックの夢を断念し、やめていきました。また、指導者にぶたれることもめずらしくなく、それが人格に影響を与えたチームメイトたちを何人も見てきました。スポーツの意義や楽しさがもっと違う形で浸透していたら、スポーツを楽しむ人がもっと増えるのにと憂えます。 日本のスポーツ界が挑む課題は山積みです。スポーツのあり方を考えさせられる、ポスト・オリパラのレガシーを形作る素晴らしい記事に、決意を新たにさせられます。

  • 総評清水康之

    先日街中を歩いていて気になるポスターを見つけた。「メシが食える大人に育てる」と書かれたものだ。よく見たら学習塾の看板だった。かつて駅前の一等地といえば、パチンコ屋や消費者金融が軒を連ねていたが、いまは学習塾が目立つ。経済産業省の調査によれば、学習塾の売上高は2004年からほぼ一貫して増加し続けている。 保護者の心理としては、先行きが見通せない日本社会にあって子どもを路頭に迷わせたくない、大人になって苦労しなくてすむようにと、塾に通わせるのだろう。「子どもの将来のため」にと。だが、そうやって子ども自身の主導権を奪うことは、結果的に子ども自身の人生に対する主体性を失わせることになっていないだろうか。子どもから寄せられる自殺に関する相談からもそう感じるし、実際に自殺で亡くなる子どもは日本で増え続けている。 逆に、神戸大学などの研究によって、日本人の場合、所得や学歴よりも「自己決定」が幸福感に強い影響を与えていることも分かっている。「子どものため」を思うなら、子ども自身に選択させること。そしてそのためにも「何があっても誰もがメシを食える社会」を作らなければならない。本記事を読んでそんなことを感じた。

LINE NEWS編集部より

試合で勝つために過度な減量を強いられた柔道少年の物語から、「勝利至上主義」が根強い、子どものスポーツ指導のあり方に迫る記事。"監督が怒らない大会"の開催などにも触れ、スポーツを巡る環境がどう変わっていくべきか考えさせられる。