ZOZOの迷走に経営者の胆を見る

2018年11月5日 05:00 商業界オンライン

写真=カリフォルニア州ホーソーンで、米宇宙開発企業スペースXのイーロン・マスク最高経営責任者(奥左)と握手し手を振る前澤友作氏(同右)(アメリカ・ホーソーン)AFP=時事

 ファッションEC最大手のZOZO(旧スタートトゥデイ)は10月末日、19年3月中間期(4〜9月)決算を発表してアナリスト/機関投資家向けに説明会を開催したが、そこで公表された数字と方針はゾゾスーツ配布を軸とするPB戦略の蹉跌を匂わせるものだった。

2代目ゾゾスーツもPBも空回り

 量産失敗で前期に40億円もの特損を計上した初代に続いて2代目ゾゾスーツも採寸精度が期待値に達しない中、ゾゾスーツ採寸に基づくPBもパターン作成や生産が順調に行かず、7月に鳴り物入りで売り出したオーダーメイドスーツも注文こそ殺到したもののマーキングCADの不調などで大幅な納期遅れが続き、中間期のPB売上げは6億5800万円と計画に遠く届かなかった。それでも通期のPB売上予算200億円は下方修正せず、下期の急拡大を見込むなど、強気の姿勢は崩していない。

 その一方、これまで配布したゾゾスーツで蓄積した採寸情報によるAIマッチングで、今後はゾゾスーツなしでPBが注文できるように切り替え、将来的にはゾゾスーツを廃止すると発言。ゾゾスーツの配布量も初期計画の600万〜1000万枚から最大300万枚に抑えて30億円を節約するとトーンダウンしており、ゾゾスーツ採寸によるパーソナルなPB衣料の提供という構想は既に破綻している。

 ECプラットフォーマーのZOZOがSPA的なコンテンツ開発にのめり込めば両にらみの戦略になり、投資が分散してアマゾンなどライバルにつけ込む隙を与えることになる。宅配料金や人件費の高騰でフルフィルセンターの自動化投資が急がれる中(筆者の『ユニクロの有明自動倉庫に見る課題』を参照されたい)、未経験で予想外に手間取る商品開発に投資も人材も割かれては足枷になってしまう。

 PB事業は上半期だけで70億円もの営業損失を計上しており、2代目ゾゾスーツの配布費用、納期遅れや返品による損失、下期の営業損失を合わせれば、軽く200億円は飛んでしまう。それはフルフィルセンターの自動化やシステム拡充に投ずるべきではなかったか。

“百貨店化”と揶揄される手数料率の高騰

 前中間期と比べれば取扱高伸び率が38.3%から18.0%と20.3ポイントも減速。それにスライドするはずの営業収入の伸び率は35.3%から25.9%と9.4ポイントの減速に収まっているから、手数料率のかさ上げが行われたのだろう。事実、取扱高対比営業収入比率は35.7%から38.1%へ2.4ポイント上昇している。15年3月期と比べれば6.2ポイントも上昇しているから、相当なピッチでかさんだことになる。

 新規ショップが小粒化していることもあって受託ショップ事業の取扱高対比手数料率は28.7%から29.6%と0.9ポイントしか上がっていないが、大口の多いEC支援事業(BtoB/12サイト)は21.2%から23.4%へ2.2ポイントも上昇している。受託ショップ事業とて07年3月期からは7.2ポイントも上昇しているからZOZOの手数料率かさ上げは90年代の百貨店並みで、出店アパレルが『ZOZOが伊勢丹化している』と嘆くのも理解できる。

 もとより百貨店もZOZOも売上手数料を徴収するビジネスモデルで在庫リスクは負わない。委託仕入れや消化仕入れで販売員の派遣が必要な百貨店と在庫を預かって出荷してくれるZOZOを同列にはできないが、出店アパレルにとって百貨店に代わる販路として期待するZOZOの手数料率高騰やクーポン値引きの負担は収益を圧迫しており、コスト負担の軽い他のEC販路や自社運営ECへのシフトを加速させている。それがZOZOの取扱高拡大にいずれブレーキをかけることになるのは明白だ。

収益構造も劇的に劣化

 今中間期決算では収益構造も劇的に劣化した。前中間期と比べれば取扱高対比経費率が6.2ポイントも上昇して27.6%にかさみ、取扱高対比営業利益率は11.6%から7.1%と5ポイントも急落した。最大項目の物流費(荷造運賃と物流業務委託費)は8.3%から11.0%へ2.7ポイントも上昇。プロモーション関連費用も1.7%から3.9%と倍以上にかさみ、人件費(物流以外の業務委託費を含む)も4.1%から4.3%に上昇しているが、物流費の上昇が率・絶対金額ともに突出している。

 宅配料金の値上げや人件費の高騰は業界に共通するが、これほどの経費率上昇を招いた要因はPB開発と物流機能拡充の両面をにらんだ経営戦略の無理にあることは明らかだ。物流機能拡充の投資競争を強いられるECプラットフォーマーがコンテンツ開発に数百億円を投じる無理が経費構造の劣化を招いたと指摘されても致し方あるまい。

前澤友作はイーロン・マスクの夢を見るのか

 経済誌オンラインで前澤友作のイーロン・マスク化を危ぶむ記事を見かけたが、女優との派手な交際はともかく、不可能と思われる壮大な構想に挑戦する辣腕ぶり、直情的なツイートが炎上を招くあたりは確かに共通している。イーロン・マスク氏率いるスペースXが開発する「ビッグ・ファルコン」での月旅行を打ち上げるのも、同氏へのオマージュが前澤氏を衝き動かしたのだろう。

 経済誌の危ぶんだ「イーロン・マスク化」は経営のプレッシャーから言動が不安定化して思わぬ足を取られることで、前澤氏のツイート『ただで商品が届くと思うんじゃねぇよ』は大炎上で済んだが、イーロン・マスク氏の株式非公開化ツイートは株価を動かし、SECから提訴されてテスラ会長職の辞任(CEOは続ける)と2000万ドルの罰金(テスラ社にも同額の罰金)、お目付役の外部取締役の招聘という和解条件を強いられた。

 これを厄災と見るか地固めと見るかは分かれるが、マスク氏を苦しめてきた「モデル3」の量産がようやく軌道に乗ったこともあってSECとの和解発表直後にテスラ社の株価は一時、14%も高騰。8月7日の高値からの下げ幅も15%を切った。それに対してZOZOの株価は7月18日の高値から半値を伺う下げっぷりで、テスラ社とは対照的だ。

 イーロン・マスク氏は不可能といわれた難事業を幾度も破綻に瀕しながら乗り切ってきた「鉄人」であり、「イーロン・マスク化」は危ぶむ揶揄ではなく、難局を乗り切って「鉄人」に脱皮する期待と受け止めるべきだ。前澤氏が両にらみの誤りに気付いて本道に回帰し、ZOZOをコスト競争力も備えた最強のファッションECプラットフォーマーに変貌させるなら、販売不振とコスト増に苦しむアパレルなどコンテンツ事業者にとって大きな救いとなるだろう。

(小島 健輔)

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「サツマ芋」の効果的な食べ方。

2018年11月4日 06:00 商業界オンライン

 スーパーマーケットやコンビニの店頭で香ばしく香る焼き芋。肌寒くなると食べたくなりますよね。

 専門店の登場で今や「焼き芋ブーム」。紅あずま、安納芋、シルクスイートなど、「ねっとり系」が登場、沖縄地方の特産品だった紅芋も手に入るようになりました。

 英語では「スイートポテト」という名の通り、サツマ芋の持つ独特の甘さがたまりません。

 その甘さゆえ「サツマ芋は太る!」と敬遠していませんか?

 だとしたらもったいない。

 サツマ芋は、食べ方を工夫すれば、美容、ダイエット、老化予防と、実に優秀なスイーツです。

腸を整える「食物繊維」の質と量がすごい。

 サツマ芋は、ジャガ芋の3倍の食物繊維を誇ります。焼き芋を1本(約300g)食べることで1日に必要な量(18~20g)の2分の1が取とれるほど。

 食物繊維には善玉菌のエサとなり腸内環境を改善する“水溶性食物繊維”と、水分を保持し便のカサを増やして腸を刺激、排便を促す“不溶性食物繊維”の2種類があり、バランスよく含まれているのがサツマ芋。

 しかも、サツマ芋の樹液にしかない「ヤラピン」という成分が腸の働きを活発にし、便を柔らかくする作用があります。これらが強力な便秘解消パワーを発揮するのです。

 便秘解消し腸をキレイに整えるのはダイエットの基本。

 同時に、食物繊維は、コレステロールの吸収を抑えるなど、生活習慣病の予防も期待できます。

熱に強いビタミンCは芋類トップ!寒い季節の「カゼ予防」「美肌」に

 ビタミンCはミカンなど柑橘類並みに含まれています。しかも、サツマ芋のビタミンCは他の野菜に比べて「熱に強い」こと。寒い時期、焼いたり、蒸したり調理して、食べられるので、カゼ予防に最適です。

 また、メラニン色素の沈着を抑え、シミやソバカスを防ぎ、肌をなめらかにしてくれます。

食物繊維以外にも、老化予防、代謝アップなど、栄養素盛りだくさん。

 サツマ芋に豊富な、体全体の老化予防に働くビタミンEは、ビタミンCと一緒にとると効率的。つまり、両方とも豊富に含むサツマ芋は優れた老化予防食品といえます。

 また、意外ですが、ダイエットに必要なカルシウムも100g中32~40mgと、野菜の中では多く含まれています。

 むくみ予防のカリウムにも注目です。サツマ芋2分の1個で1日の摂取目標値は3.5gをクリアできます。

サツマ芋は、意外と血糖値が急上昇しにくい

 血糖値の上昇スピードを表す指標のGI値。低いほど、脂肪になりにくいという目安になります。食パンは60~69、白米は70~79に対して、サツマ芋は50以下。

 こんなに甘いサツマ芋なのに、意外ですよね。これは豊富な食物繊維のおかげでもあります。

 ただ、加熱することで糖質は増えます。

 調理法では「蒸し&ゆで」<「焼き」。

 やはり、焼き芋特有の、あの甘さは糖質だったのですね。。。

 しかし、諦めることはありません。

 さまざまなサツマ芋の健康美容効果を最大限にしつつ、ダイエット中でも安心。

太りやすいと分かっていても食べたい夜にはぜひ

 そんな食べ方をご紹介!

1.冷やして食べる!
 スーパーマーケットでも増えてきた「冷やし焼き芋」。ダイエットにはこれがオススメ。

 焼き芋やふかし芋を冷やすと、加熱され糊化したでんぷんの一部が、冷めることで消化されないレジスタントスターチに変化して腸まで届き、血糖値の上昇を抑えてくれます。つまり、太りにくく、便秘解消パワーもアップということ!

 温かいものなら、冷蔵庫に入れて10℃以下にしっかり冷やしましょう。

 ただ、温め直すとまた戻ってしまうので要注意です。

2.皮ごと食べる!
 皮が紫色であることから想像できるように、ポリフェノール、食物繊維、ビタミンCやカルシウムは皮に多く含まれ、特に、ビタミンCやカルシウムといった栄養は皮に、ヤラピンは皮と実の間に多く含まれます。サツマ芋は、皮が命! 特に、糖質が増える焼き芋は、皮ごと食べることで血糖値の急上昇を緩やかに。

3.脂肪と食べる!
 サツマ芋のβカロテンやビタミンEは脂肪分と一緒にとると吸収がアップします。脂肪分には糖質による血糖値の急上昇を緩やかにする働きもあります。

【オススメの食べ方】焼き芋アイスのゴマかけ
 焼き芋を冷凍庫で冷やし、半解凍状態にすると、、、まるでアイス!

 スーパーマーケットに置いてある冷凍焼き芋なら、そのまま自然解凍でOK。

 糖質をレジスタントスターチに変化させ、太りにくく。便秘解消効果をパワーアップして腸からスッキリさせましょう。

 ゴマは50%が脂肪分。しかも中性脂肪になりにくい不飽和脂肪酸。サツマ芋のβカロテンの吸収を高めるとともに、若かしさを保つビタミンE、ダイエット効果のビタミンB、カルシウムなども1粒にたっぷり。

 また、大さじ2杯できんぴらごぼう1人前(35g)くらいの食物繊維が取れるほど豊富。さらに血糖値の急上昇を緩やかにします。

 すりゴマをたっぷりかけると大学芋風に。

 しっかり甘くてコクがあるから、お酒を飲んだ後に、、無性に甘―いものが食べたい!という時にもどうぞ。

 お好みでアーモンドやクルミに変えると、食べ応えアップ!

 同じく種子類のアーモンドやクルミも良質な不飽和脂肪酸とビタミンEが豊富でオススメです。食べ応えがあるのでボリュームアップにも。

 いかがでしたか? サツマ芋の自然の甘さはハッピーにしてくれますよね。

 いつもと違ったおいしさも、ぜひお試しください。

(松田 真紀)

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「人が辞めない店にする!」座談会

2018年10月1日 16:00 商業界オンライン

「人が採れない」⇒「入ってもすぐに辞める」⇒「既存スタッフの負担大」⇒「ますます人が辞める」

 このスパイラルを断ち切ることが、店を存続させる生命線だ。「人が辞めない店は、どう違うのか? どんなことをしているのか?」。小売店の現場たたき上げの筆者陣が緊急座談会を実施した。

出典: YouTube



登壇者
坂本りゅういち
 kocori代表。販売員としてアパレル・時計・靴を販売。SC接客ロールプレイングコンテストにて全国優秀賞、日本橋三越婦人雑貨部接客ロールプレイングコンテスト優勝。リラクセーション業界にも携わり、売上げ日本一獲得など数々の実績をもとにした独自のメソッドで企業の販売員育成や教育改革を行っている。

上杉 佳子
 オフィスSmiling Face 代表。1991年日本マクドナルド(株)のフランチャイズ企業に入社。入社7年目で店長に昇格。就任後、人材育成に注力、ES・CS8期連続90%以上を達成。延べ5店舗を経験し、売上げ・QSC(クオリティ〈品質〉・サービス・クレンリネス〈清潔さ〉)エリア優秀店舗として表彰される。2009年退社。現在は飲食店・小売業における販売員・専門スタッフへの教育研修講師として活躍。飲食店店長経験と資格を生かした実務に直結したコミュニケーション・コーチング・チームづくりなどの分野を得意とする。

兼重 日奈子
 ねぎらいカンパニー代表。アパレル店長時代に6年連続店舗年間予算達成、エリアマネジャーを経てトレーナーとなり、多くの店長を育成。独立後、ねぎらいカンパニー設立、代表就任。小売企業や商業施設での店長教育、CS、ES活動に携わる。現在は「人が辞めない職場づくり」をテーマに多くのプロジェクトを推進、離職率低下を実現させる。著書『幸せな売場のつくり方』他多数。

稲森 愛弓
 1973年宮崎県生まれ。(株)マイクレド代表取締役。高校卒業後、美容師として働く。結婚後は専業主婦となり、子育てに専念。2008年にオール借金からFCのたこ焼き店をオープンする。子育てから学んだ、育ち合うための「母性的ことばがけ人材育成法」を用いた人材の育成で、スタッフが生き生きと働く店づくりの研修事業をスタートさせる。ねぎらいカンパニー外部講師。

 座談会のより詳しい内容と、4人の先生方が執筆された記事が『商業界』2018年11月号(10月1日発売)26ページ~に掲載されています。

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変化する「ビックカメラの出店戦略」

2018年11月5日 05:00 商業界オンライン

 ビックカメラの出店戦略に変化が出てきた。

 近年の新店を見ても「ビックドラッグ」(ドラッグストア)、「ビックカメラセレクト」(小型家電、日用雑貨、トラベル関連)などのカテゴリー特化型店舗、また「Air BIC CAMERA」の店名で中部国際空港、羽田空港国際線ターミナルなどインバウンドをターゲットとした特殊立地店舗が目立つ。

 同社の2018年8月期決算は売上高8440億円(前年比106.8%)、営業利益270億円(同123.8%)と好調だ(売上高内訳はビックカメラが4875億円、連結子会社のコジマが2463億円)。

 市場調査会社のGfKジャパンによると2017年度の家電市場は7兆700億円(前年比101%)と微増。薄型テレビ、大型生活家電が好調であることが要因。2018年上半期(1~6月)時点でも1%伸びを継続している。

 家電チェーンランキングでは売上高順にヤマダ電機(1兆5738億円、970店*設置・修理サービス主体の小型FC1万1059店は含まず)が断トツ。以下、ビックカメラ(187店)、エディオン(6862億円、1186店)、ケーズホールディングス(6791億円、496店)、ヨドバシカメラ(6805億円、23店)。*ビックを除き各社18年3月期。

 そのヤマダ電機も売上高は前年比100.7%、営業利益では357億円(同67%)と踊り場にある。家電に続く新たな柱に育成中の住宅設備機器事業も20%以上の伸びを続け、構成比も10%近くになったが、まだ時間を要しそうだ。

年間3割増を続ける「医薬品・生活雑貨」

 2番手グループの筆頭に当たるビックカメラは音響映像、家庭電化部門で売上構成比5割近くに達する。同部門ではカメラ、テレビ、レコーダー・ビデオカメラなどのカテゴリーも前年越え。最も構成比の高い情報通信機器部門(売上構成比31.3%)も伸びは高いがパソコンソフトが減少、周辺機器、パソコン本体、携帯電話がけん引となっている。

 先の上位家電チェーンの中で、店舗数の少なさが目立つのがビックカメラとヨドバシカメラ。ビックカメラの場合、郊外店舗主体のコジマを含めたグループ全体では187店舗だが、ビックだけでは46店舗。その一覧を見るとターミナル駅中心としたレールサイド立地がほとんど。ここまではヨドバシカメラも同タイプといえるが、ビックカメラの特徴は冒頭に挙げた店舗の広げ方にある。ドラッグストア、日用雑貨、トラベル関連カテゴリーの品揃え、国際空港ターミナルへのピンポイント出店など新たな顧客ターゲット、収益源を狙っていることがうかがえる。

 特に医薬品・日用雑貨。これらは既存のビックカメラ内でも展開されており、来店頻度を高める部門の1つとなっているが、「セレクト」業態のようにより小規模、小商圏(ただし、繁華街、観光地立地)へのピンポイント出店の武器にもなっている。同部門の売上高は175億円(前年比130.6%)と、約30%の伸びを続けている。インターネット通販の浸透によりリアル店舗に軸を置いた販売が転機を迫られる中、家電チェーンもその立地によって、新たな顧客ニーズ、収益源の取り込み方がくっきり分かれる。

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小売業がイートインとグローサラントに注力する理由

2018年5月9日 05:00 商業界オンライン

 第18回は、「店舗におけるイートイン/グローサラントの役割」です。

 皆さんも、スーパーマーケット(SM)や総合スーパー(GMS)のイートインで食事をしたことがあるのではないでしょうか。

 イートインとは、昔はSMやGMSにしか見られなかったのですが、今はコンビニやドラッグストアなどにもありますよね。

 もう一方のグローサラント。皆さん、ご存知でしょうか。初めて耳にしたとおっしゃる方も多いかと思います。

 なぜ、今日、小売業がこれほどイートインやグローサラントに注目するのでしょうか。今回は、その背景に迫りたいと思います。

イートインとグローサラントの定義

 イートインの定義は「飲食店における商品提供方法の一つ。物販部分と客席部分とを併用する営業方法で、ファースト-フード店に多く見られる」(出典:三省堂 大辞林)。簡単にいうと、イートインとは「飲食店や小売店で買った商品を店舗内で食べるスペースのこと」です。

 一方のグローサラントは、実はグローサリーとレストランを足した造語です。その定義は「小売店で購入できる生鮮、日配、グローサリー等を使い、レストランの味顔負けの料理をその場で調理・提供し、お客さまがそれを飲食可能。食べた料理の素材を小売店で買うこともできるサービス」です。元々、アメリカでは、SMのウェグマンズやホールフーズ・マーケットなどで人気を博したサービススタイルです。近年、日本でも成城石井やイオン、イータリー等でも取り入れ始め、顧客の支持を集めています。

この2つは求められる目的が異なる

 このようにイートインとグローサラントでは求められる目的が違うのです。

 イートインは、消費者が店内で買った惣菜などを飲食スペースで食べることを主目的としています。どちらかといえば、時間的に急いでいる方向きのサービスです。一方のグローサラントは、「小売店で売っている商品を使って、その場で調理したレストラン並みの料理が食べられるライブ感の演出」が主目的です。グローサラントは、「外食と内食の中間」としての位置付けで、ターゲットとなる消費者は、少し時間的に余裕のある方といえるでしょう。

ネット小売業と戦う武器になる

 今日、アマゾンをはじめとしたネット小売業の勢いは確実に増しつつあります。実店舗を持たない彼らの品揃えは無限です(いわゆる、ロングテール状態です)。また、価格.comなどの普及で、今の消費者は簡単に価格比較ができます。その結果、ネット小売業は総じて低価格を武器とし、「ロングテール」と「低価格」の利便性(効率重視)を提供するようになっています。

 これに対して、リアル小売業は今後どのように戦っていけばよいのでしょうか。その解が「イートイン」や「グローサラント」なのです。

ブランド価値を提供できるようになる

 リアル店舗にしかない価値とは何か。それは店舗という場における「買物の楽しさ、ライブ感」でしょう。関係性マーケティングの大家で慶應義塾大学の和田充夫名誉教授は『関係性マーケティングの構図』(1998)という本の中で「製品の属性ピラミッド」の話を述べています。

 ネット小売業にも製品の基本的価値、便宜的価値の提供は可能でしょう。しかし、感覚価値、観念価値といった上位次元の価値(ブランド価値)の提供は難しいのです。

 オムニチャネル時代のリアル店舗小売業は、実店舗とネットスーパーをバランスよく組み合わせることで、価値次元を基本的価値からブランド価値の方に引き上げていくべきです。その切り札が「イートイン」であり、「グローサラント」なのです。

 この2つは店舗ロイヤルティ、顧客とのエンゲージメントを向上させます。その結果、小売業と消費者の間には「ブランド」が形成されていきます。

顧客経験価値の創造もできる

 もう一つ、大切なことは「イートイン」や「グローサラント」は店舗における「相互作用の場」であることです。

 その場で交わされる店舗の従業員とお客さまとの会話(相互作用)や、お客さまが家族や友人と一緒に料理を食べる(消費プロセス)ことで、顧客経験価値が創造されていくのです。

 顧客経験価値創造における重要な役割を「イートイン」や「グローサラント」は担っているのです。だから、リアル小売業は今日、「イートイン」や「グローサラント」に注力し始めたのです。

 これは、リアル小売業にしかできない差別化戦略といえるでしょう。いくらAIが発達しても、人に勝るものはないのです。

(学習院大学 経済経営研究所 客員所員 中見 真也)

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90年代ファッションはブランド主義の復活でもある!

2018年3月17日 00:00 商業界オンライン

 ヤングマーケットを筆頭にオーバーサイジンングの着こなしが増えている。朝の通勤時間にズリ下がったリュック姿を見ると思わず苦笑いをしてしまう。まるで昔の自分を観ているようだからだ。

 そう今、ファッショントレンドは完全に90年代に向かってカジを切り始めている。

これまでは「個性を消した」時代だった

『ノームコア』(Normcore)*をあえて「偉大なる普通服」と呼ばせてもらおう。ファッション・シーンにおいては長らく普通服がスタンダードで格好よかった。どこのブランドってわけじゃないけど、オックス生地のボタンダウンシャツに袖を通せば誰だって、3割増しに賢そうに見えたものだ。とある大学のキャンパスの風景からもデニムシャツ+チノパン、赤チェック+ジーパン姿の学生たちがクラスメートと着てきた服が被ってしまった、画像がネットに流れて失笑もした。その場の空気を読めばこの格好と、完全に『個性を消した』時代だった。

 その『個性を消した』時代の産物の一つが双子コーデ。みんなでドレスコードを決めておそろいのファッションで出掛けるのは、同じデザインの洋服を着ることで味わえる一体感を楽しむのであって、制服や作業服と何ら変わらない。

ファッションは完全なリバイバルにはならない

 今、手元に90年代に発売されたファッション雑誌『Boon』があるが、もう一度この時代が来るのかと思うとニヤけずにはいられない。いつの時代でもそうだが、ファッションは完全な焼き直しに(リバイバル)はならず、必ずその時代の技術や色が加わってくるから面白い。

あるセレクトショップの品揃えにビックリした!

 さて、本題に入ろう。

 それは、とあるセレクトショップのトラックパンツの品揃えにビックリしたことから始まる。ナイキ、アディダスはまぁ分かるとしても、リーボック、レノマ、カールカナイ、FUTUR、チャンピオン、ティンバーランド、BLSって、コリャ何でもアリ!?
 
 この春はFILAのナイロンパーカーを店頭で随分と見掛ける、それも大胆な色使いの切り替えで。そしてそこには大きくブランドのロゴが入っている。一般の人からするとブランド=マーク(印)だから覚えやすいし、分かりやすい。その大胆なデザインがブランドの印象となって、そのままブランドの魅力になっていく。

これからは個性のアピールが格好よい時代になる

 こうした図式が増えれば増えるほど、今度はブランドが与える影響力が強まってくるし、消費者も購入・識別の一つにはっきりと「ブランドの選択」が加わる。昨年冬のカナダグースやノースフェイス・ダウンJKの人気などがよい兆候。これから夏に向けて、懐かしのサーフブランドやTシャツ肌着ブランドのマークやロゴをもっと目にするかも。

 そして大衆的で普通のファッションから、個性をアピールするのが格好よい時代が訪れる。そのきっかけになるのが、今年かもしれない。

(*)ノームコアとはnormal+hardcoreの造語で、「究極の普通を意味したファッションスタイル」を指す。ニューヨークが発信源とも、スティーブジョブス氏の黒のタートルネックにジーンズ姿がアイコンとして紹介されることがある。

(磯部 孝)

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「日本食」支える谷田貝良成さんが「目指す先」

2018年4月8日 05:00 商業界オンライン

写真=ユーカリ植林炭が発する熱量は日本の備長炭と同等レベル。焼き鳥が遠赤外線効果で美味しく焼き上がると評判だ。

 1753店。

 これは、タイの首都バンコクで営業している日本食レストランの数だ(ジェトロ・バンコクセンター・JRO 日本食レストラン海外普及推進機構タイ国支部による2017年3月の共同調査より)。

 個人経営の小さな店から大規模チェーンまで、多彩な日本食レストランがしのぎを削る熾烈なマーケットで、「焼き物料理に使う木炭ならここ」と厚い信頼を寄せられている企業がある。谷田貝良成氏が2000年に立ち上げたウエルネスライフプロジェクト(タイランド)社だ。谷田貝氏はバンコクの「日本食」シーンを支える「黒子」の一人といってもいいだろう。

多い店では月に数トン単位で仕入れている!

 同社のユーカリ植林炭を導入している日本食レストランはバンコクでは有名どころばかり。味に定評があり、高い集客力を誇る店が勢ぞろいしている。多い店では月に数トン単位で、ウエルネスライフプロジェクトから炭を仕入れているそうだ。

 木炭と一口に言っても、クヌギ・コナラなどの原木を400~700℃で焼いた黒炭、樫などの硬い木を1000℃以上の高温で焼いた白炭(備長炭はここに含まれる)、オガ屑を圧縮加熱成型した成形炭などがあり、材料や品質もさまざまだ。和歌山産のウバメカシを使った紀州備長炭、ナラやカシなどを使用した備長炭、マングローブ炭、竹炭まで多岐にわたり、高級とされている備長炭にも実際にはいろいろなランクが混在している。

「ユーカリの炭」は性能が良く、サスティナブル

 同社が生産しているのは植林したユーカリを使った炭。その特徴を挙げてみよう。

 まず1つは炭としての性能の良さだ。タイ国内で計画的に植林されたユーカリの木を原木に、1000℃程度の温度で焼いた同社の炭の炭化率は約90%。約7500cal/g という熱量は日本の備長炭とほぼ同じ。高温で焼いているため、無味無臭というメリットもある。それでいて価格は備長炭ほど高くない。コストパフォーマンスの良い炭といえる。

 サスティナブルである点もメリットの一つ。「植林された木が原料」ということは、二酸化炭素のリサイクルが可能ということ。木炭を燃焼させれば二酸化炭素が排出されるが、木を新たに植えればそこで光合成が行われ、排出する二酸化炭素の量を固定できる。どこで植林されたのか、どのような工程で木炭を生産しているのかのトレースも簡単だ。

 サスティナブルでトレーサビリティも確保できるーー。環境への負荷を減らし、調理の過程で使用する材料一つ一つの安全確保が命題となっている食関連の企業にとっては大きな利点に違いない。

評価が高いサービス対応もお客から支持される理由に

 さらに挙げれば、製品に関連する同社のサービス対応も高く評価されている。

「注文を頂いたら必ず届けること。当たり前のことのようですが、タイではそれが難しい。洪水があろうとデモが起きようと注文に応えることがモットーです」

 2011年秋。タイが大洪水に見舞われ、バンコク都心部にも水がひたひたと迫っていたときも、谷田貝氏のモットーは実行された。

「まだ水が引いていない中、とにかく配達しました。欠陥商品を出さず、お客さまに御迷惑を掛けないこともモットーの一つ。炭化していないという不良品はほとんどないのですが、まれにある。そうしたときにはすぐに出向いて謝罪し交換する。これを繰り返してきました」

 タイで流通している炭には、表面だけ整えてはいるが中はボロボロという製品が珍しくない。そうした環境で谷田貝氏は常に高品質を追求し、当たり前といえば当たり前のクレーム対応やサービスを愚直なまでに積み重ねてきた。

「でも、こうした対応は私がかつて携わっていた旅行業では当然のことばかり。それをやっただけに過ぎません。日本食レストランの進出が相次いだことも追い風でした」

谷田貝氏の来タイ後の歩みはドラマチックだった

 そう語る谷田貝氏のこれまでの歩みはドラマチックで、多くの示唆に富んでいる。時計の針を戻して、ウエルネスライフプロジェクトがいかに生まれ、事業を軌道に乗せていったか、そのストーリーに目を向けてみよう。

 谷田貝氏が来タイしたのは1988年。最初は旅行会社の駐在員として、次にタイの旅行会社の現地採用として10年間働いた。

「もともと健康おたくだったので、人の心身を癒すリソースがたくさんあるタイに引かれました。自然が豊かで文化的にも奥深く、多くが熱心な仏教徒。人を健康にする要素の宝庫だと思いました」

 現地の旅行会社で働いていたあるとき、日本の大手旅行会社の元社員で厚生労働省外郭団体の健康増進関連公益法人の元理事から「タイで長期滞在プログラム」事業を一緒にやってみないかという声が掛かる。会社員の立場で新プロジェクトに携り、無事に日本での販売がスタートしたものの、タイミング悪く、1991年に湾岸戦争が勃発。商品は売れず、プロジェクトは頓挫した。

バリアフリー、ロングステイの下見ツアーにウナギ料理の専門店も

 だが、これを機に谷田貝氏の起業家スピリットがむくむくと頭をもたげることとなる。いつか高齢者や障害者の健康の維持や増進を図るプログラムを提供しようーー。こうして2000年に立ち上げたのがウエルネスライフプロジェクトだ。

 最初に手掛けたのは日本の障害者団体の日本アビリティーズ協会と提携したバリアフリーのツアーだ。旅行業界では前例がない商品ということもあり、反響は上々。利益率も高かったという。

「このときですね。ビジネスは他の人ができないことをやればいいんだと学んだのは。ただ、2001年にアメリカ同時多発テロ事件が起きたため、団体ツアーの仕事が一気にしぼんでしまった。ツアーはなくなり、ゼロからスタートしなければならなくなったので落ち込みましたね。もっとも半日で立ち直り(笑)、ネットを活用することにしました。ちょうどネットが普及してきた頃だったので、ホームページを立ち上げ、自分で直接、障害者向けのツアーの販売を始めました」

 すぐに効果は出た。ただし、入ってきたのは障害者向けではなく健常者向けロングステイの下見ツアーの依頼だ。Googleの検索でもホームページが上位に表示されたこともあり、同社は、タイでのロングステイを検討している人が下見に訪れる際のツアーの手配を一手に引き受けるようになる。

「ただし、下見はしても実際のロングステイにはつながらない。タイでは特に人のサポートが必要ないからです。ここは業者のアシストがなくてもなんとか暮らしていける国。ロングステイ関連の団体は既にたくさんあったので、弊社が出る幕がほとんどなかったこともあり、初心に戻ろうと障害者向けツアーに軸足を戻しました」

 しかし、そこからも苦難の連続だ。2007年、タイに障害者が滞在できる施設を作る目的で、東京にある介護関連の会社と合弁会社を立ち上げたが、失敗に終わる。施設を作るための資金をまずは捻出しようと駐在員の妻向けにカルチャースクールを始めたものの、お客がうまく集まらなかったからだ。

 次に着手したのがウナギ料理の専門店。旅行業の大先輩など日本人2人と手を組み、3人で共同で始めた店は順調な滑り出しを見せたが、2006年に軍事クーデターが勃発。バンコクの機能がストップした環境では店の営業も立ち行かない。売上げが低迷し、谷田貝氏は共同経営から離れる決意をした。

 炭の仕事を手伝ってほしい。そんな依頼が飛び込んできたのはこの頃だ。

「届けられた200㎏の炭」から事態が好転した

「頼まれたことは何でもやろうと考えていましたからすぐに引き受けましたが、日本への輸出を手伝ったにもかかわらず、約束した報酬を払ってくれない。仕方なく手を引いたところで、その業者が炭を納めている問屋から『炭が届かないので何とかしてほしい』という連絡が私の方に入ったんです。事情を聞くと、業者が輸出にかまけて国内の納品を後回しにしていたらしい。そこで、継続した発注を約束してもらった上で、地方の炭生産者から炭を送ってもらうことにしました」

 このとき谷田貝氏が発注した炭の量は20kg~30kg。サンプルとしての発注だ。しかし、炭の生産者から届けられた量は200kgにも及んでいた。

「『在庫があったので、200kg持ってきたよ』と言うんですよ(笑)。どうしようかなと思っていたら、問屋に発注していた店が必要していた炭の量がちょうど200kgであることが分かった。全くの偶然ですが、ここからですね、事態が好転し始めたのは」

 発注主はタイでは大手の人気日本料理店。この店の成功に続くかのように、日本食レストランが相次いで日本から上陸し、現地で開業する人も急増していた時代だ。幸運が幸運を呼ぶかのように、谷田貝氏のもとにはお客からの紹介で注文が殺到。ようやく同社の事業基盤は整っていく。諦めずにチャレンジを続け、チャンスがあれば誠意を持って対処する。その姿勢が呼び込んだ「偶然」だったのではないか。

ユーカリ植林炭は日本への輸出も始まった

 現在、同社が生産している炭は、ユーカリの木を使った炭を中心に、ラオス産の木(マイティユ)を使った備長炭、ココナツの殻で焼き上げたオガ炭(製材時に発生するオガクズを圧縮加熱成形して製造するオガライト〈成形薪〉を主な原料とした木炭)の3種類。

 ユーカリ植林炭は、以前、谷田貝氏自身が焼いていたが、今は地方の5カ所の村の農民に委託。彼らが焼いた炭が、焼き方、大きさ、パッキングなど同社の基準を全て満たせば買い取るという条件で契約している。

 備長炭は当初、タイのマカム(タマリンド)の木を使って焼き上げていたが、材料の安定供給が難しいため、今はラオスから輸入した木が材料。バンコクの高級料亭が顧客層だ。

 日本への輸出も始まった。冷凍焼き鳥メーカーの工場を皮切りに、地方の居酒屋チェーンからの注文が続いている。同社のユーカリ植林炭は、高級ラインの備長炭と主に中国からの安い輸入オガ炭の中間に位置する価格帯。予算的に備長炭は難しいが、質の良い炭を仕入れたいと考える外食企業にとっては有望な選択肢のようだ。

谷田貝氏が進める「人の幸福の基盤である健康づくり」

 紆余曲折を経て「炭」の事業を軌道に載せた谷田貝氏が新たに推し進めているのが、米ぬか酵素風呂だ。膵臓がんに苦しむ大学の先輩の幼なじみが山形で酵素風呂を利用し、今も元気に暮らしていることを知り、自分でも作ってみようと決意。文献をあたり、自ら有用微生物数種類を混ぜた培養液を作り上げ、米ぬかと撹拌し発酵させて、2017年に酵素風呂を実現した。

 米ぬか酵素風呂の発酵熱は60℃超。指宿(鹿児島)の砂風呂のように中に身体を入れて身体を温めると、冷え性だけでなく、肩こりや腰痛、肌荒れなどを改善する効果があるとされている。

 既に第1号の酵素風呂は、バンコクで人気のマッサージ店に導入され、好評を獲得。客単価を上げる効果が確認されている。日本の高槻市(大阪)にあるタイマッサージ店の他、京都の店でも導入が決定した。

 米ぬか酵素風呂は「地産地消」がコンセプト。その土地で手に入る米ぬかや微生物を使って谷田貝氏が培養し、使用する桶も現地で調達している。

「タイと気候条件が違う日本で発熱できるのか心配でしたが、無事に成功にこぎつけた。米ぬか酵素風呂は美容や健康に良いだけでなく、メンテナンスも楽。大きさも90cm☓90cm☓200cmほどのスペースが要るだけなので既存の店にも導入しやすい。今後はタイだけでなくカンボジアやミャンマーにも横展開し、FC展開を計画しています」

 レストランの焼き物料理に使用する炭とマッサージ店やSPAなど保養所向けの酵素風呂。一見、無縁のように思えるが、どちらも自然由来のモノを使い、サスティナブルである点は共通だ。おいしい料理づくりに役立つ炭と、身体を芯から温め健康へと導く酵素風呂。2つの事業は両輪となって、谷田貝氏の若い頃からのビジョン「人の幸福の基盤である健康づくり」を力強く支えている。

(三田村 蕗子)

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同一作業・同一賃金時代の「人員計画」

2018年5月11日 05:00 商業界オンライン

 イオンも閉店計画を出さざるを得なくなる?前回は小売業界の働き方改革への対応について吉田繁治先生に説明いただきました。今回はその続編。「生産性分析表への書き込み方」の前に同一作業・同一賃金時代の人員計画について解説をしていただきます。

 編集部:前回、小売業の人的な生産性を、これからは2倍に上げる必要があることを伺いました。しかし、これは従来からのことであり、今に始まったことではありませんよね。

 吉田:その通りです。10年、20年前から、小売業にとって必要なことでした。しかし、労働時間で計る小売業の生産性は1990年代からほとんど上昇してはいません。

 これには日本的な特殊事情がありました。それは正社員とパートの時間給格差です。

 新入社員から20代前半までは、店舗や物流の現場で、パートと同じ内容の仕事です。仕事は業務であり、業務は作業ですから、同一の作業内容と言えます。

 大卒の新入社員クラスの正社員の初任給は、全国平均で20万円くらいでしょう(19万7294円:2018年)。2年目からは年間で4カ月くらいのボーナスがつくので、年間16カ月分の320万円(税・社会保険料控除前)くらいになっているでしょう。残業を抜いた年間労働時間は、「8時間×20日×12カ月=1920時間」です。1時間換算の時給は、「320万円÷1920時間=1666円」くらいになります。

 一方で、小売業の勤務期間3年以内のパートの全国平均時給は、県ごとに決められている最低賃金に近い。東京が最も高く、932円です。九州や東北は低く、東京の約2割下の710~750円です。全国の加重平均では823円です(2017年末:厚生労働省)。

 新入社員クラスの正社員では、時間換算給が1666円ですから、823円のパートの賃金は50%です。

 つまり、わが国のパートは、現場で正社員と同じ作業を行っていても、時間賃金は1/2で、放置されてきたのです。

米・欧では「ワーカーの同一作業・同一賃金」の原則が守られてきた

 編集部:米国や欧州では、正社員と、パートの賃金の格差はないのですか? 日本だけの特殊事情でしょうか。

 吉田:米国や欧州でも短期雇用のアルバイト的な職種は、確かに時間給が低い。そうした労働者が、主に中南米やアジアからの出稼ぎや移民として10~15%は存在しています。大農場やサービス業での移民労働の賃金は、米政府が決める最低賃金を大きく下回っていることが多い(違法状態)。就労ビザがない不法労働も多いからです。

 しかし、米・欧では、数カ月から6カ月のトレイニー(研修期間中)を過ぎて正規な雇用になると、時間給は同じにしなければならない。もともと正社員とパートという雇用の身分格差はなく、それがあれば違法です。ただフルタイム労働(1日:8時間)と、労働時間が短いパート労働(1日:4~6時間)はあります。

 なお、パートというのは、時間賃金を低く保つためのわが国の固有用語でしょう。8時間働かないから時間給は低いとしてきたのです。

 小売業の現場の賃金には2種があります。①「タイムワーカー」は働いた時間で賃金が決まり、②「ピースワーカー」は例えば物流センターでの受注商品ピック数で決まる賃金形態。物流のドライバーも運送量で賃金が決まる、タクシードライバーのようなピースワーカーです。

 現場職(ワーカー)を経験した後の、管理的な仕事があるマネジャー(主任以上)は、ほとんどが個人別の年俸契約になります。

 米国と欧州では「ワーカーの同一作業・同一賃金」の原則は、厳重に守られてきたのです。人種、性別、年齢、学歴、職歴を理由とした賃金差別も違法です。

 ただし勤務年数が増えると、時間賃金も普通1年に3~4%は上がっていきます。物価上昇も1.5~3%はあるからです。日本では1990年代以降、28年も現場の平均賃金は上がっていませんが、米国と欧州では年3%くらいは上がってきたのです。

 編集部:そういうことでしたか。そういう賃金体系なら、「賃金を上げるには、労働時間(人時)に対する売上げの生産性を上げなければならない」という小売業の経営になっていきますね。

1990年以降、平均的な小売企業の生産性は上がっていない

 吉田:資産バブル経済が崩壊した1990年以降、わが国の平均的な小売業の既存店売上高は長期低落傾向に入りました。食品を除くほぼ全業種で、価格は下がって、既存店売上高は減ってきたのです。

 百貨店は10兆円の売上高が、今は6兆円台です。25年で40%減、年率では2%、既存店売上げが減っています。最も早くチェーンストア経営を導入した日本型GMS(総合品種量販の業態)も、百貨店とほぼ同じ、既存店売上げの減少を示しています。端的に言えば、1990年には60億円の売上げだった平均的なGMSの現在の年商は、60%の36億円に減っています。売上げが半減した店舗も多い。閉店した店舗も多い。

 小売業では、1980年代は実はパートは少なかったのです。現在は、全業種・全業態平均で、総労働時間の75%はパートです。パートを4時間労働とした場合、正社員が10人の店舗では、パートの総人数は80人くらいです。コンビニでも、オーナー家族以外はほとんど全員がパートや短期アルバイトです。

 既存店の売上げが減少した場合、店舗の経費と人件費を減らさねば、経営は維持できません。賃金の身分格差が許容されていたわが国では、正社員と同じ作業でもパートに切り替えれば「時間賃金は約1/2」に下がったのです。

 これが、小売業で、パート労働化が進んだ理由です。賃金の身分格差が2倍もあったため、パートに切り替えて、人件費を削減ができたからです。

 以上から、1990年から現在まで、わが国の平均的な小売企業の生産性は上がっていません。開発輸入の価格を下げる商品戦略で既存店売上高を上げてきた、ニトリやユニクロのようなSPA型(開発輸入・直売型)の専門店以外では、店舗現場の労働時時間に対する生産性(売上げ/総人時)は28年前、1990年のままなのです。

日本の小売業界「長期売上高の推移」から分かること

 編集部:今日は、2枚の大きな図表をご持参いただいているようですね。図表①の小売業界の長期売上高グラフと、図表②のその内容ですね。1994年から2017年までの24年間のデータです。

 吉田:経済産業省が集計している商業動態の小売売上げデータから抜粋して、作成したものです。今まで、小売業界には、こうした24年間の売上高の時系列での全体集計はなかったので、今回、あちこちからデータを拾って、整合性をとって作成しました。図表①が、その棒グラフです。図表②は、途中で商品別の小売業の分類替えがありますが、合計データには連続性があります。

 ただし、経済産業省の売上げデータは、なぜか消費税を含むものです。大きく見せたいためでしょうか。消費税は1997年には3%から5%に、2014年には5%から8%に上がっていますから、その分を差し引いて、売上額を見る必要があります。2014年以降は8%(11.2兆円)も含まれるので、大きいのです。

 自動車販売とガソリンの販売が約30兆円、この統計では無店舗販売が7兆円はあるので、37兆円ぐらいは引いて、有店舗販売を見る必要があります。

 以上の結果、最新の2017年の有店舗小売額はグラフの142.5兆円より、45.6兆円も少ない96.9兆円になります。

 96.9兆円が全国約100万店の小売総額で、1店舗平均では年商が9690万円(約1兆円)と極めて小さい。店舗の売場面積が狭いと、人的な生産性(売上げ/人時=人時当たり売上げ)は低くなります。1人当たり売場面積を大きくできないからです。

「アベノミクスで消費が増えた」は間違っている

 編集部:税込みの総額では、22年前の1996年の146兆円が最高になっていますね。これが8年後の2004年には128兆円へと、約12%も減っています。その後は、2017年の142兆円にまで14兆円(11%)増えていますが……。この増えた内容はどうなってきたのでしょうか。

 吉田:2009年に、米国発の金融危機だったリーマン危機で132兆円に減っています。これが回復したのが、2012年の137兆円です。その後の5年で142兆円へと5兆円増えています。

 何が増えたのか。

 実は、年間で2800万人に増えた海外観光客によるインバウンド消費の4.4兆円です。わが国の人口1人当たりの店舗消費額は約100万円/年です。この4.4兆円のインバウンド消費によって、消費人口が440万人も増えたようになっているのです。

 2013年の138兆円から2014年の141兆円への増加は3兆円で、その伸び率は2.2%でした。この増加は、2014年4月から消費税が5%から8%へと3%上がったたによるもので、小売業の税抜き売上げはむしろ減少しています。

 以上のように、わが国世帯の消費は、2011年ごろの135兆円から、現在までほとんど増えていません。増えたのはインバウンド消費(4.4兆円)と消費税分(3%:10兆円)の合計14.4兆円分だけなのです。2012年からのアベノミクスで、消費が増えたかのように思われていますが、増えた内容は、売上げの3%の消費税が10兆円分、そして観光客の消費が4.4兆円です。

 編集部:うーん、なるほど。実態はそうなんですね。そうすると、24年間でいえば、わが国の店舗での小売総額は、国内世帯分ではむしろ減っていることになりますね。

 吉田:本当の内容はその通りです。

 政府は、アベノミクスのプラスの効果による個人消費の増加を言いたいので、店舗の総売上げの増加の内容を、あえて言わないのです。実際は、このデータ範囲にした24年間も、店舗の売上額の国内世帯による増加はないのです。

毎年作られる「売上増加目標」は願望・希望でしかない

 編集部:今回、先生がこの2つの図表を作られた理由は何ですか。WEBでは大きな図表でも載せて、利用してもらうことができます。

 吉田:目的は、人的生産性を上げるための、長期経営計画作りをしていだだくためです。小売業では、上場・非上場にかかわらず、年度の損益計画を作っているでしょう。

 問題にすべきは、そのときの売上高です。

 例えば過去5年、自社の既存店の売上げは下がってきたのに、毎年3%くらいの「売上増加目標」が作られています。これは、商品戦略が伴った目標というより、願望または希望です。目標には、本当は商品戦略が伴わねばなりませんが、損益計画は経理部が作ることが多く、商品戦略は不明なままが多いのです。

 その願望の既存店売上げを前年比で3%増にする。荒利益率も上げるか、または同じにする。下げる目標はない。3%増加する願望の売上げと荒利益(売上総総利益)に対して、経費の傾向を入れる。結果は、人員配置数はほぼ前年のままです。これで、前年より営業利益が上がるようなP/L(損益)の計画を作っているのが、ほぼ全店でしょう。

 本来は年率2~3%で下がってきた既存店売上げを3%も上げるには、5~6%の客数を増やす商品戦略が必要ですが、そこは不明のままです。

 以上の結果、1年後の売上げはよくて前年比100%、普通は98%、悪いときは95%以下です。店舗への人員配置数はほぼ同じなので、1人当たりの生産性は良くても前年並み、悪いときは3~5%も下がります。

 以上が、経営計画の時点で人時生産性を上げてこなかった原因になっているのです。

人的生産性を上げる長期経営計画作りをしよう!

 編集部:読者の皆さんにはこの図表を使って、中長期の経営計画作りをしてもらいましょう。

 吉田:この図表には示しませんでしたが、小売業の売上高が横ばいを続ける中でも、地域の平均的な競合売場面積の増加が年率で2%はあります。新しいコンビニ、ドラッグストア、スーパーマーケット(SM)、衣料専門店、ショッピングセンターなどが作られているからです。地域売上げが前年比で100%の場合、2%の新たな小売売上げの増加によって、既存店の合計売上げの平均は2%減の98%になります。

 それと、2010年からは人口減という要素が加わっています。東京圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)では、2022年ごろまでは地域人口は減少しません。しかし、それ以外の県では年率でほぼ0.6%の地域人口の減少を見込まねばならない。この人口減は消費額、つまり店舗売上げを0.6%減らしていく要素になるでしょう。

 人口1人当たり所得増は年1%くらいでしょう。65歳までの現役世代では1人当たりでは2%増えても、所得が増えない年金受給者が4025万人(2015年)に増えているからです。同年の年金支給額は54.5兆円で、1人平均で13万5400円でした。所得が1%増えても、増えるのは店舗消費でではなく、医療費や旅行などのサービスなので、店舗売上げを増やす要素ではないのです。

 以上から、平均的な既存店の売上げは、競合売場面積増でマイナス2%、東京圏以外は人口の要素でマイナス0.6%を見込まねばならないでしょう。2017年には10億円の既存店売上げが、2018年9.74億円、2019年9.48億円、2020年9.24億円、2021年9.00億円、2022年8.76億円、2023年8.54億円……というようなイメージです。

 編集部:マイナスの売上げ目標ですか。いよいよそこまで来たのですか。

店舗の売上目標は経理部ではなく、商品本部が作るべきだ

 吉田:新年度の商品戦略と連動する、既存店の売上目標は、加える商品戦略があるなら、3%増であってもいい。来店顧客数を増やして売上げを増やす、新しい商品戦略が必要です。店舗の売上目標は、経理部ではなく、商品本部が作るべきなのです。経理部が担当するのは経費の部分です。

 そのプラスの売上目標とは別に、地域の消費傾向の、実情に合った既存店の売上予想をも作ります。1000㎡以上の大型店(約2万店)の既存店の80%では、年率でマイナス2.6%(前年比98.4%)に近い売上げ予想になるでしょう。少なくとも向こう5年分を、既存店別に作ります。人員配置は店舗別ですから、出店を含む合計では機能しません。

 これを作ると、現場は「人手不足ではなく、人手過剰」であることが分かるでしょう。人的な生産性が低いままだから、人手不足になるのです。小売業界の約800万人の雇用(1店平均8人)は、現在でも20%以上(160万人以上)が過剰と考えてください。

 配置人員数(労働人時では正社員の8時間換算)は店舗別に作ります。

 1年間の1人当たり売上げの上昇では、最低でも5%が必要です。既存店の売上げ予想(目標ではない)が、マイナス2.6%なら、1店舗ごとの配置人数は年に「5+2.6%=7.26%≒8%」は減らさねばなりません。

 2017年が既存店舗で50人なら、
18年46人、
19年42人、
20年39人、
21年36人、
22年33人、
23年30人です。

 つまり、現在が50人の店舗は、5年後の2023年には30人でオペレートしなければならない。これが人員計画です。

 1人当たりの売上生産性の上昇は5%です。平均的な賃金上昇が3%です。このためには、平均的な既存店では、店舗要員を年8%、5年で40%減らさねばならない。以上のことが、経営的に必要になってきたのです。

 こうした人員計画をもとに、前回、示した商品作業の手順の合理化を図っていきます。以下は次回で示します。

イオンも閉店計画を出さざるを得なくなる?

 編集部:総小売需要が増えない中で、今後も新しい出店は年率2%はあるのでしょうか?

 吉田:新規の出店は総売場面積の2%分はあるでしょう。それが続くと思っています。

 ただし、既存店100万店のうち、売場面積の2%に相当する分、平均的な面積の店舗数では年1万~2万店の店舗が、赤字を3年続けてなくなっていくでしょう。

 ゼブン&アイ・ホールディングスのイトーヨーカ堂は20%のGMS型店舗(約40店)の閉店を発表しています。ユニーも同じです。イオンは閉店計画を出していませんが、近々、出さざるを得なくなってくるはずです。需要が減っていない食品分野での1万8000店のSMでは、年間で250~300店くらいの新規出店があります。しかしその裏では、同じ250~300店が静かに店を閉じています。

 以上のように、「店舗が振り替わっていく」のが2018年からになっていくでしょう。今後の人口減時代に適合していくのが小売業です。

(吉田 繁治)

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