CA藤田氏が炎上してもSNSやめないワケ

2018年10月20日 12:00 PRESIDENT Online

多くのファンを集める「ユーチューバー」の共通点はなにか。それは毎日のように動画を上げつづけることだ。著名経営者にも同じことがいえる。SNSで日常的に情報発信を行うサイバーエージェントの藤田晋社長は「若い経営者や、これから名を上げたい人は、どんどん発信をしないといけない」と話す。藤田社長が「炎上」のリスクを顧みず、発信を続ける狙いとは――。

発信をしないと影響力を持てない

自ら動画を作成して配信を続ける「YouTuber(ユーチューバー)」。彼らは積極的に情報発信を続けることで、多くのファンを集めてきた。同じようにSNSやメディアで自らの意見を積極的に発信することで、多くのファンやフォロワーをもつ経営者やビジネスマンが増えている。その1人、サイバーエージェントの藤田晋社長はこう話す。

「発信をしないと影響力を持てない。それはもう間違いないので、基本的には若い経営者や、これから名を上げたい人は、どんどん発信をしないといけないと思います」

藤田社長は自社のブログサービス「Ameba」だけでなく、各種のSNS、新聞や雑誌などのマスメディアなど、さまざまな場所で積極的な情報発信を続けている。そのメッセージは鋭く、時に反発を招くこともある。

「退職者批判コラム」を書いたワケ

藤田社長は2014年、日本経済新聞電子版の連載コラムで「私が退職希望者に『激怒』した理由」という記事を寄せた。競合他社に移った社員に激怒したという内容で、藤田社長は「会社としての価値観や姿勢を見せるための『一罰百戒』は、経営していく上で必要なことだ」と書いた。

これに対し、「辞めるのはその人の自由ではないか」などと、大きな批判が巻き起こった。その中には「ネットでの『炎上』を意図したのではないか」というものもあった。当時の騒動について、藤田社長は「社内の意思を統一するという意味では狙い通りだった」と振り返る。

「活躍している社員がサッと辞めて会社が何も言わないと、『(簡単に辞めても)OKなんだ』ということになる。会社としてそれを『駄目だ』という権利がないのは理解した上で、『身勝手に急に転職することを快く思っていない』とは言わないといけない。社内で(『激怒している』と)うわさを広めるような手段でもいいのですが、外部に一度発信すれば済むことです。あのエントリーに関しては批判している人も数多くいましたが、『広める』という意味では狙い通りです」

「前澤さんはハラハラするけど面白い」

こうした情報発信について、ほかに長けた経営者はいないのだろうか。藤田社長に聞くと、「ZOZOの前澤友作社長」という名前が挙がった。

「前澤さんは見ていてハラハラするところがありますが、面白いですよね。意図的にハラハラするようなことを言っているのかは分からない。ですが、結果として買い物をするときにはZOZOTOWNが頭に浮かぶし、ZOZOSUITはみんなが知るところになった。とはいえ、(発信には)うまい下手があるので、万人に求めるのは難しい」

また社員の発信力については、必ずしも全員に求めるものではないという。

「長年やってきて思うのは、みんなの発信力ってたいしたことがないということです。もちろん情報発信をしてくれたほうがいいのですが、(1人1人の)影響力はそこまでありません。ですがネット上で有名なインフルエンス力を持った社員を1人でも育てると、情報が広がり、影響力も出せます。例えば(サイバーエージェント傘下の)『新R25』編集長の渡辺将基。彼はうまい。そういう才能を見つけて、育てたいです」

社員に「起業しろ」とあおる投資家は迷惑

藤田社長がいま発信したいのは、ベンチャーキャピタルが自社の社員に起業を促すことについてだ。

「よく社員に『起業しろ』とあおってくるベンチャーキャピタルがいるのですが、これは迷惑です。われわれからしてみると、育てた社員が辞める上、競合が生まれるかもしれないので、マイナスでしかありません。起業すること自体は良いことだと思いますが、VCは商売です。社員を辞めさせて、起業させて……そういう人間が増えたら彼らに(資金を)突っ込んで稼ぐわけです」

「最近はうちの会社を辞めた人間がやっているファンドも増えてきました。『自分も元々社員だった』というつながりで声を掛けてくるので、私が『迷惑だ』と公言しないと社員も判断しかねます。こういうことは社員を集めて話しても姑息な感じがするので、外部に発信したほうが早いと思いました」(藤田社長)

「YouTuberが憧れの職業」は本当だった

藤田社長は今年8月、「YouTuberになろう!」という中高生向けワークショップの講師を務めた。主催者は福島県双葉郡の復興を支援する「ふたばの教育復興応援団」。同団体のメンバーで作詞家の秋元康氏の呼びかけで始まった。

当日は、藤田社長のほか、HKT48の指原莉乃さん、フリーアナウンサーの古舘伊知郎さん、俳優・イラストレーターのリリー・フランキーさんの3人が講師を務めた。このため藤田社長は「(講師4人の中で)『顔ぶれ負け』していると思った」と話していたが、テーマが「ユーチューバー」ということもあってか、定員を超える応募があった。

会場で藤田社長が「サイバーエージェントを知っているか」と聞いた際、手を挙げた参加者はたった1人だった。「ユーチューバーが憧れの職業になっているという話は本当だったと実感しました」(藤田社長)。

当日の動画制作は、ユーチューバーをメインに若年層マーケティング支援事業などを行う子会社「CA Young Lab」の須田瞬海社長らが指導した。

クラスの話題は、「昨日の動画見た?」

CA Young Labの調査によると、2017年の国内YouTuber市場規模は219億円、2022年には2017年比の約2.6倍、579億円規模に達する見込みだ。また、登録者数1万人以上のチャンネル数は毎年150%以上で増加しており、ユーチューバーの数は今なお増えている。

人気ユーチューバーの共通点について、須田社長は「ファンとの距離感が身近なこと」と話す。

SNSで有名になるには、ファンの支持が欠かせない。そのためメッセージや動画を通じてファンと交流する人が多い。テレビに出演するタレントのように憧れる要素も持ちながら、身近な存在にも感じられる“距離感”こそが人気の理由だ。

「われわれが想像している以上にユーチューバーの浸透度は高い。かつて、学校の話題の中心になるような人気のテレビ番組があったと思う。翌朝学校に行くと、クラス中が『昨日あの番組を観た?』と話題にしている、それと同じです」(須田社長)

生配信を行う「ライバー」は広告媒体にはならない

ネットで人気を集めているのはユーチューバーだけではない。いま勢いがあるのは「ライバー」だ。ライバーとは、スマートフォンのライブ配信アプリの配信主を指す言葉で、主に「17 Live」や「SHOWROOM」といったプラットフォームで活動している。ライバーを職業にする人も出てきている。

だが藤田社長はユーチューバーの事業には興味を示すが、ライバーの事業には冷ややかだ。その理由について「ライバーは少人数の濃い世界なので、広告媒体にはならない」と説明する。

「ユーチューバーは『メディア』ですが、ライバーは『コミュニティ』に近い。別の接触媒体であり、ビジネスモデルも違います。ライバーは、閉ざされた空間の中でコミュニケーションをするという世界観を楽しむ、いわばキャバクラやホストクラブに近い。ハマる人はテレビを見るより楽しいと思います。ライブ配信やライバーが将来有望なのは間違いありません。ですが、少人数の濃い世界なので、広告媒体にはならないでしょう」

経営者は「企業の広告塔」といわれる。その意味で、経営者はユーチューバーにはなっても、ライバーになってはいけない、ということかもしれない。

[サイバーエージェント社長 藤田 晋、CA Young Lab社長 須田 瞬海 文・撮影=砂流恵介]

外部リンク

橋下徹「政権奪取のための唯一の方法」

2018年10月20日 12:00 PRESIDENT Online

森友・加計学園問題などの不祥事があっても安倍政権が揺るがない理由の一つは、対抗勢力である野党がだらしないから。では「強い野党」をつくるにはどうすべきか――。

野党各党が今後1カ月でやらなければならないこと

安倍晋三首相が自民党総裁選を制し、3選を果たした。新しい内閣も組まれ、いよいよ10月下旬には臨時国会も開かれる。

弱すぎる野党はどのように対応すべきか。

法案審議に力を入れて、法案の問題点を追及するのは、当然のことだろう。また、いわゆる森・加計問題では、政府資料の不備が新たに判明し、その政府対応について問い質す必要があるだろうし、さらに、アメリカとの通商問題やロシアとの北方領土問題、そして北朝鮮問題に関しての政府対応についても問い質すべきところは山ほどある。

しかし、野党がこれから1カ月以内にどうしてもやらなければならないことは、これら野党が普通に頑張らなければならないことではない。

それは、日本政治史上初の「野党予備選の実施についての合意」だ。

来年7月には参議院議員選挙が行われる。政治は最後は数だ。自称インテリたちは、数が全てではない、とキレイごとを言う。他方、安倍自民党が強すぎることを嘆き、このままでは日本の政治が破壊されると叫ぶ。

自称インテリたちが望んでいるように、強すぎる安倍自民党を牽制するためには、野党が強くならなければならないが、野党が強くなるためには議席数を増やすしかない。キレイごとでは安倍自民党を牽制することはできない。野党には徹底的に議席数増にこだわる執念が必要だ。

そして野党が、自分の党の議席数増だけを考えているうちは、いつまで経っても日本に強い野党は誕生しない。野党各党が、野党「全体の」議席数増にどこまでこだわることができるかが勝負だ。そしてそのためには、まずは「自民党以外」の議席数を増やすところから出発しなければならない。

野党予備選で、候補者一本化のプロセスを「見える化」せよ

先月9月に、僕は『政権奪取論―強い野党の作り方』(朝日新書)を出版した。自称インテリたちは強い野党が必要だと、皆口にする。しかし、じゃあその強い野党をどう作るかについては誰も具体的に提案しない。重要なことはアイデアを口で言うだけではなく、それを実行するプロセスを考えることだ。

まあ実際の政治をやったことがない自称インテリたちに、具体策を求めることは無理な話かもしれない。問題なのは、野党自身にも具体策がなさそうなことだ。

ゆえに僕は、強い野党を作るプロセスにこだわって『政権奪取論』を上梓したつもりだ。本の中身の詳細については、そちらを読んでもらうことにして、今回、僕が特に強調したいことは、『政権奪取論』でも提案した野党予備選に向けて、野党は即座に動くべきだ、ということ。

強い野党になるためには、議席数を増やさなければならない。しかし、現在複数乱立している野党のうち、ある野党の一つがいきなり議席を大幅に増やすことには現実味がない。国民民主党、立憲民主党、日本維新の会のうちいずれかの野党が、単独でいきなり自民党に対抗できる勢力になることは到底無理だし、ましてや政権奪取を遂げることなどは夢物語のレベルだ。そんなことを考えている各野党の政治家がいるのなら、彼ら彼女らは政治家を即刻辞めた方がいい。政治家としてのセンスは0だ。

そして、野党の政治家は自党の利益だけを考えるのではなく、日本の政治のことを常に考えるべきだ。そうであれば、まずはとにかく野党全体の議席数、すなわち「自民党以外」の議席数を増やすことから始めなければならない。

内閣総理大臣の指名権を有し、政権の要となる衆議院議員の選挙制度は現在、小選挙区制がベースだ。一選挙区につき一人の当選者しか出さない小選挙区制は、基本的に二大政党が政権を争う仕組みである。つまり日本はアメリカやイギリスのような二大政党制を志向している。

ゆえに、歴史と伝統を有し、日本人的価値観を代表している感のある自民党という巨大な政党が一方に存在するのであれば、それに対抗する野党勢力も大きく一つにまとまらざるを得ない。日本の政治が二大政党制を前提にしている以上、自民党と「それ以外」という構図にならざるを得ず、有無を言わさず、野党を一つにしていくしかない。

野党議員はここを押さえる必要がある。日本の政治のことを考えるのであれば、「野党は一つ」なのである。

では、どう一つになるか。この実現プロセスが重要だ。

さっきも述べたが、今の各野党の支持率の状況で、どこかの野党の一つが一大勢力になる可能性はまずない。だからといって、いきなり今の各野党が合併して一つの政党になっても、有権者は支持しないだろう。そんな数合わせの政党には何の魅力も感じないからだ。

自由党の小沢一郎代表は、野党が一つになる必要性をずっと主張していた。その野党の最終形態は正しいにしても、小沢さんの考える実現プロセスが間違っていたがゆえに、野党の支持率は上がらなかったのだと思う。

小沢さんは、野党がすぐに一つの政党にまとまることを考えていたが、それでは有権者の心を捉えることはできない。単なる議員都合の数合わせにしか見えないからだ。民進党があれだけの騒動を経て、小池百合子東京都知事率いる希望の党や、その後の国民民主党、立憲民主党への分裂に至り、野党内の政治的主張の違いが見える化した。ここで国会議員の協議だけで再度一つにまとまっても、それは単なる民進党への逆戻りに過ぎず、国民にとっては何のことやらさっぱり分からない。

したがって、野党が一つにまとまっていくプロセスを「見える化」することこそが有権者からの支持を集めるポイントになると思う。

まずは野党間の予備選でしのぎを削るべき

予備選は、たとえて言うなら、まずは野党間での予選リーグのようなもので、予選リーグで勝ち残った野党候補者が、決勝トーナメントで自民党と戦うようなものである。

このように野党間の予選リーグをしっかりやることで、強い野党候補者が誕生する。その野党候補者を、決勝トーナメントにおいて自民党候補者と戦わせるべきだ。つまり、弱小野党の候補者は、いきなり巨大な自民党の候補者と対決するのではなく、まずは野党内で競い合い、そこで勝ち上がってくるべきだ。弱小野党間でも勝てないような野党候補者が、自民党候補者に勝てるはずがない。

したがって、国民民主、立憲民主、日本維新の会などの野党は、来るべき来年7月の参議院議員選挙に向けて、自党候補者を擁立すべく、まずは野党間の予備選でしのぎを削るべきである。自党の候補者を擁立するために、他党の候補者を叩き潰すのである。

そして予備選で野党候補者が確定すれば、各野党はそれに従って、本選挙である参議院議員選挙においては自党から候補者を出さないようにする。ここは自党の勢力拡大ではなく、野党勢力の拡大に協力すべきだ。

来年7月の参議院議員選挙での野党勢力の拡大に照準を合わせるなら、少なくても年明け2月頃には野党候補者を確定したいところだ。

そして予備選には2カ月ほどは必要だろう。

そうであれば、10月中、遅くても11月初旬までには各野党は予備選実施の合意を行い、11月中には予備選のルールを確定しなければならない。各野党は12月中には自党の候補者を選びながら、年明け早々から予備選を始めなければ間に合わない。

予備選を突破することによって、その候補者は、単純に各野党に選ばれた候補者のときよりも一皮むけて、選挙に強い候補者にレベルアップしていると思う。ゆえに予備選を経ない野党候補者よりも、自民党候補者とわたり合うことができると思う。

立憲民主党の枝野さんや、国民民主党の玉木さんは予備選実施に前向きの発言をしている。あとは党内をまとめて、行動に移すだけだ。これくらいのことを実行できない野党に、日本の大改革などできるはずがない。

[前大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹 写真=時事通信フォト]

外部リンク

爆笑太田が怒り続ける「週刊新潮」の迷走

2018年10月20日 12:00 PRESIDENT Online

週刊新潮が報じた「日大芸術学部に裏口入学」の顛末

爆笑問題の太田光が、「週刊新潮」(8/31号)で、「太田は割り算もできずに、父親が困って日大芸術学部に裏口入学させた過去があった」と報じられ、激怒した。

自分が出ている番組で、「週刊新潮、バカヤロー、この野郎。裏口入学するわけねーだろう」と吠えまくっていたというのは、以前、ここで紹介した。

太田には失礼だが、大いに笑える記事だった。

記事が出た後の太田の怒髪天を突くような怒りもわかるが、芸人ならば、「バカ、この野郎」と口汚く罵るのではなく、もう少し芸のある怒り方をしてほしかったと思うのは、私ばかりではない。

作家の佐藤優もこういっていた。

「今回の猛反論ではユーモアのセンスが欠けてしまっていました。(中略)太田さんは毒舌で有名で、政治の話題にも分け入って揶揄してきた。それなのに、自分が裏口入学と報道されるとエキセントリックに反論し、それが図らずも太田さんの入学歴へのこだわりを露呈させ、何とも言えず寂しい思いになりました」

3300万円の名誉毀損を求めて、新潮社を訴える

太田の、この記事への怒りはなかなか収まらず、この内容を紹介した私にも、矛先が向いていると聞いたので、探してみた。すると、ラジオ番組の内容を書き起こしているというサイトで、3本の記事をみつけた。

<爆笑問題・太田、「裏口入学」騒動についてプレジデントに寄稿した元フライデー編集長・元木昌彦に激怒「何様のつもりなんだ、お前」>2018年8月29日

<爆笑問題・太田、「裏口入学」記事をプレジデントに寄稿した元木昌彦に「反論ねぇのか、言論人としてどうなんだ」と挑発>2018年9月5日

<爆笑問題・太田、「裏口入学」騒動について記事を書いた元フライデー編集長・元木昌彦が反論しないことに「お前、ジャーナリストとして終わり」>2018年9月12日

いずれも前日に放送されたラジオ番組『爆笑問題カーボーイ』(TBSラジオ、毎週火曜25時~27時)の内容を書き起こしたものらしい。3週続けてお前呼ばわりされていたようだ。放送を聞いていないので、何に対しての「反論」なのかピンとこないが、プレジデントオンライン宛に手紙でもくれれば、期待に応えて反論しようとは思っている。

週刊新潮が出てから、太田の妻も「法的措置を辞さない」といっていたが、告訴したようである。

スポーツ報知によると、「太田側の弁護士は3300万円のうち名誉毀損での賠償額が約1000万円であることを明かし『普通は500万円だが、太田さん、(妻で社長の)光代さんの気持ちが大きく、その分を入れた』と説明した。さらに中づり広告に爆笑問題の写真を掲載したことは、名前や写真から生じた利益を独占できる『パブリシティー権』の侵害に当たるとして、約2000万円の損害が生じたと主張した」そうである。

妻の名誉は毀損していないのに、500万円上乗せするとは不可解だが、名誉毀損は事実でも成立するから、週刊新潮にとってはきつい裁判になりそうだ。

「新潮45」の休刊など、迷走続ける「新潮ジャーナリズム」

私は、この内容を紹介した際にもこう書いた。

『新潮』の記事は30年以上前のこととは思えないほどディテールがしっかり書き込んである。だが、私も、なぜこのような記事が今頃出てきたのか疑問に思う。東京医科大の裏口入学が問題になっているからと、突然思いついたわけではあるまい。
(中略)
私が聞くところによると、『新潮』は、日大のアメフト傷害事件を取材する中で、この話が日大関係者から出てきたそうだ。
興味を持った『新潮』編集長は、その頃の当事者から話を聞けと指示し、詳細を聞けたことから掲載に踏み切ったということのようである。
何せ、30年以上も前の話だから、証言以外に物証はほとんどないのではないだろうか。
そのせいか、8月22日に発売された『新潮』(8/30号)は「笑い飛ばせばそれで良かった『爆笑問題 太田光』の日大問題」と、新たな裏付けは示さず、リードでこう書いた。
「本誌が報じた爆笑問題・太田光(53)の日大芸術学部への裏口入学事情。えらい剣幕で報道を否定する場面が生出演のラジオやテレビで繰り返された。世間を斜めに斬り笑いにしてきた人物が『そんなに恥ずかしいこと?』と笑い飛ばせなかったところに違和感が募るのだ」
裏口入学事情? 裏口入学したと断定していたではないか。笑い飛ばせ? それはないだろう。親父が暴力団に近い人物を使って裏口入学させたというのでは、この記事の中でも野末陳平がいっているように、「ふざけんなよ。芸人なんだからなんて枠はない。芸人である前に人なんだ」。
これを読む限り、どうやらこの勝負、太田光の威光に逆らった『新潮』にやや分が悪そうではある。
(プレジデントオンライン<爆笑できない太田光の「裏口入学問題」>2018年8月26日)

10月9日に口頭弁論が開かれ、太田の代理人の松隈貴史弁護士は取材陣に対して、「大学も裏口入学の事実は把握していないといっている」と話し、週刊新潮側は請求棄却を求めたそうだ。

この件といい、杉田水脈の「LGBT差別論文」を掲載したうえ、批判が巻き起こると、杉田よりもお粗末な書き手の反論を掲載して、月刊誌「新潮45」が休刊に追い込まれた件など、このところ「新潮ジャーナリズム」は迷走を続けているように思える。

迷走は「赤報隊事件」の大誤報から始まった

そのきっかけを私は、週刊新潮(2009年2月5日号・1月29日発売)が4週にわたって連載した「実名告白手記 私は朝日新聞阪神支局を襲撃した!」の大誤報から始まっていると考える。

朝日新聞支局を襲って2人の記者を殺傷した「言論テロ」は、今でも朝日の記者だけでなく、メディアに携わる人間たちの心に深い影を落としている。

事件後、赤報隊と名乗った卑劣な犯人は、警察や朝日新聞記者たちの懸命な追跡にも捕まらず、2003年に全事件の公訴時効が成立してしまったのである。時効後、その事件の実行犯だと名乗る収監中の元暴力団員の男が、いくつもの報道機関に手紙を送りつけた。朝日新聞の記者もそれを手に入れ、男に何度か会いに行ったが、犯人ではないと断定していた。

だが、当時の早川清編集長は、編集部のごく一部の人間と件の男に接触し、何を血迷ったか、掲載を決めてしまったのだ。編集部員の多くは、見本刷りが出て初めて読んだと聞いている。

私もさっそく読んでみた。私が連載していた週刊誌批評に、「連載を読む限り、『新潮』がどれだけ裏付けをとったのか見えない」「出ている材料は状況証拠ともいえないものばかり」だと批判した。

編集長は「誤報」と認めるが、取締役には残ったまま

朝日はこの記事を検証した批判記事を掲載したが、それに対する週刊新潮の反論も、「朝日の言葉の揚げ足とりに終始している」と断じた。

結局、連載後に、早川編集長は「誤報」だと認めるのだが、読者に対して十分な説明責任を果たさずに編集長を降りてしまう。取締役には残ったままだった。聞くところによると、編集部にも何ら説明はなかったという。

週刊誌ジャーナリズムの信頼が大きく揺らいでいる。危機感を持った私は、上智大学で「週刊誌が死んでもいいのか」というシンポジウムを開催した。

各誌の前・元編集長や田原総一朗、佐野眞一などに来てもらって、長丁場のシンポだったが、大盛況で中に入れない何百人もの人たちは、会場の外で耳をそばだてていた。

「新潮社の天皇」として君臨した齋藤十一の哲学

だいぶ前になる。北鎌倉・明月院の紫陽花が咲いていた頃だったと記憶している。

明月院の門前を通り、坂道を登り切ったところにその家はあった。主はすでに亡くなっていたが、未亡人が優しく出迎えてくれた。通された応接間から見えるのは真っ青な空と鬱蒼とした森ばかり。さっき通ってきた明月院の紫陽花が見え隠れしていた。

よくここで夫とクラシックのレコードを聴いたといいながら、日本に一台しかないといわれるオーディオの名器・デッカ(英国デッカ社製のデコラ)で、モーツアルトのレクイエムか何かを聴かせてくれた。

ジャズは多少わかるがクラシックにはとんと縁がない私には、心地よい音楽としかいいようがないが、こうした穏やかな雰囲気の中で、この部屋の主は、「週刊新潮」や「FOCUS」のエグいタイトルを生み出したのである。

主の名は齋藤十一。1939年に新潮社に入社以来、1996年に相談役を退くまで新潮社の天皇として君臨した。文芸雑誌・新潮編集長のとき、こういっている。「本誌は文学雑誌であるが、あらゆる角度から今日の社会現象をも文学的に扱いたい」。吉村昭、柴田錬三郎、山口瞳、山崎豊子、瀬戸内寂聴など、挙げればきりがないほどの作家を発掘した。

だが、潰した作家もそれに倍するぐらいいただろうと、『編集者・齋藤十一』(齋藤美和編、冬花社)で佐野眞一が書いている。

「新聞社と同じでは勝てない。切り口とタイトルが命だ」

小林秀雄は齋藤のことを「齋藤さんは天才だ。自分の思ったことをとことん通してしまう。キミ、それこそ天才じゃないか」といったという。芸術新潮を創刊したのも齋藤である。

その齋藤が、出版社が初めて出す週刊誌に関わったのは1950年代半ば。56年2月に週刊新潮が発売され、編集長は佐藤亮一(後の社長)だったが、実質的に企画から編集現場を取り仕切ったのは齋藤であった。

当時は、週刊朝日が100万部を誇り、他の新聞社系の週刊誌もそれなりの部数を出していた。そこに、人も情報も少ない出版社が殴り込みをかけたのである。

新聞社系と同じことをやっていては勝てない。切り口とタイトルが命だ。それをよく表す記事がある。

1958年夏に全日空機が下田沖に墜落する。週刊新潮の編集部員は必死で乗客名簿を探す新聞を尻目に、その便をキャンセルした乗客を探せと齋藤に命じられる。タイトルは「私は死神から逃れた 七時三十五分をめぐる運命の人々」

人間の本質的な欲望「金と女と権力」を扱えばいい

パリで女友だちを殺して肉を喰った佐川一政容疑者が、心神喪失を理由に日本へ強制送還されたとき、齋藤が付けたタイトルは「気をつけろ『佐川君』が歩いている」。他にも挙げてみよう。

「『知る権利』より『知る興味』」「日本を左右する大『朝日新聞』を左右する人々」「『縮刷版』よ消えてくれ 日本の新聞が『文化大革命』を囃したころ」「神戸男児惨殺容疑者『少年写真』騒動 人権大合唱で圧殺されたこれだけの『民衆の声』」

これらが、あの静謐な部屋から次々に生み出された。私には到底できない。

齋藤は新潮ジャーナリズム、出版社ジャーナリズムをつくりあげたのである。

自らを「俗物」、「女が好きだ」と公言して憚らなかった。週刊誌が読まれるためには、人間のもっている本質的な欲望「金と女と権力」を扱えばいいと喝破する。

これは齋藤が文芸雑誌で追求し続けた主要テーマでもあった。齋藤は「僕は週刊新潮で文学をやる」と常々いっていたようだが、彼にとって文芸雑誌も週刊誌も同じ土俵だったのであろう。

「売れる本じゃないんだ、買わせる本をつくるんだ」

週刊新潮の成功に、文藝春秋や講談社も名乗りを上げ、「週刊文春」や「週刊現代」が創刊される。週刊現代は読者をサラリーマンに定め、彼らが好きなものは「色、カネ、出世」だとして部数を伸ばしていく。こうして新聞社系を出版社系が凌駕し、週刊誌新時代を築きあげていった。

齋藤は、佐野のインタビューにこう答えている。

「人間は誰でもひと皮むけば、金と女と名誉が大好きな俗物です。僕も狂的な俗物です。実際にはもうダメだけど、いまでも女は大好きです。食い意地もきたない。『週刊新潮』ではそれをやりたかったし、いまでもやりたい」

日本に一つしかない名器でグレン・グールドのトルコ行進曲を聴きながらも、人間の心の奥底ではどす黒い欲望が渦巻いている。お前が欲しているのはこういうことだろうと、取りだして見せてやればいい。

齋藤語録をいくつか。

「食べることに関心を持たない人は、良い編集者になれない」「面白い雑誌をつくるには面白い人間になれ」「自分の読みたいものをつくれ」「売れる本じゃないんだ、買わせる本をつくるんだ」「タイトルがすべてだ」「人間は生まれながらに死刑囚」

「おまえら、人殺しのツラが見たくないのか」

そしてこうもいっている。「編集者ほど素晴らしい商売はないじゃないか、いくら金になるからって下等な事はやってくれるなよ」。

写真週刊誌「FOCUS」を創刊したのも齋藤である。アメリカの「TIME」のような雑誌をつくろうとしたようだが、齋藤が殺人犯の顔写真を載せることにためらっている編集部員に向かっていったのは、「おまえら、人殺しのツラが見たくないのか」であった。

その後、同誌をそっくり真似た「FRIDAY(フライデー)」が創刊され、FF時代を築くのだが、齋藤は誌面に不満だったようだ。部数が低迷し始めたころ、担当の役員にこういったそうだ。

「週刊新潮はアタマを使わなきゃつくれないが、FOCUSはバカでもつくれるんだよ。それができない、どうなってんだ」(松田宏「齋藤さんの思い出」より)

創刊3年近く経っても売れ行きが芳しくなかった「新潮45+」を見かね、齋藤が紙面刷新に乗り出した。佐野によると、そのときスタッフを集めて雑誌についてこう語ったという。

「雑誌というものの根本は、なにもいまさら講釈するつもりはないが、他人のことを考えていては出来ない。いつも自分のことを考える。俺は何が欲しいか、読みたいか、何がやりたいかだけを考える。これをやればあの人が喜ぶ、あれをやればあいつが気に入るとか、そんな他人のことは考える必要はない」

共産党を激烈批判しながら、副委員長の手記を掲載

雑誌名も「新潮45」とし、リニューアルの軸に据えたのは日記と伝記だったが、残念ながらうまくいかず、編集長が替わるたびに内容も変わり、今回の“事件”で、ついに休刊してしまった。

60年を超える週刊新潮には数々のスクープがあるが、私の中で一番思い出に残っているのは、1975年の新年合併号に掲載された袴田里見共産党副委員長が宮本顕治委員長を批判した「独占手記」である。

同誌は創刊以来、共産党を激烈に批判してきた雑誌である。そこに現役の副委員長が宮本を批判した手記を寄稿したのだから、大新聞を含めて大騒ぎになった。私も駆り出され、暮れから新年にかけて袴田の自宅へ日参したが、本人に会うことさえできなかった。

ほかにも、外務省機密漏洩事件の蓮見喜久子元外務省事務官の告白や、皇太子(現・今上天皇)のインタビューまでやってのけている。

新聞やテレビにはできないことをやる

古参の週刊新潮編集部員から聞いた話だ。地方へ出張に行くとき、当時は1等・2等・3等と別れていたが、必ず1等に乗れと厳命されたという。そこには一流会社の社長や文化人が乗っているから、向こうへ着くまでに名刺を渡して親しくなれというのである。

私も事件取材で地方へよく行ったが、週刊新潮はハイヤーをチャーターして警察を回るが、こちらはタクシーを乗り継ぐから、取材が後手後手になる。警察署の対応も、新潮と現代とでは差があり、向こうは署長が出て来るが、こちらは副署長か、その下だった。

齋藤という頭脳が奥の院にいて、編集者や記者たちをカネをかけて育て、新聞やテレビにはできないことをやる。これが新潮ジャーナリズムの伝統だったと思う。

他の出版社の週刊誌も、試行錯誤しながら競い合い週刊誌ジャーナリズムを築き上げてきたのである。

やや保守色の強い新潮社、文藝春秋、リベラルというより主義主張のない講談社、小学館などが切磋琢磨し合い、新聞やテレビとは一味もふた味も違う言論の場を形づくってきた。

「ワイドショーの下請けのようになっている」

『週刊新潮が報じたスキャンダル戦後史 週刊新潮編集部編』(新潮文庫)のあとがきで、松田宏元編集長が、新潮ジャーナリズムについてこう書いている。

「私たちは、大げさでなく『命がけ』で取材をした。新潮ジャーナリズムと呼ばれた一連の記事も、そうした日々の中から生まれていったと自負している。奇っ怪な宗教団体・創価学会を追及し、いい加減な共産党のバケの皮を剥がした。(中略)もちろん、それ以外にも、永田町や経済界、芸能界から夜の銀座のネオン街に至るまで、人間の悲喜劇はいくらでも転がっていた。信じられないほど悪いやつも、おかしな人物もたくさんいた」

だが、ここ20年で週刊誌を含めた雑誌界は様変わりしてしまった。部数は低迷し、上からは「赤字を減らせ」「部数を上げろ」と矢の催促。編集現場は委縮し、ジャーナリズムなど打ち捨てて、死ぬまでセックスと声高に叫び、丸ごと一冊老人・健康雑誌に路線変更する週刊誌、不倫愛だ略奪愛だと、他人の身の下ばかりを追いかけ、ワイドショーの下請けのようになっていると批判される週刊誌ばかりになってきている。

この現状を齋藤が見たらこういうに違いない。「いくら金になるからって下等な事はやってくれるなよ」。老舗の新潮ジャーナリズムが大きく揺らいでいる今こそ、編集に携わっている人間みんなで、雑誌のレーゾンデートルとは何かを、もう一度真剣に考えてみる必要があると、私は思う。(文中敬称略)

[ジャーナリスト 元木 昌彦 写真=時事通信フォト]

外部リンク

日本人の98%に有効な「計画倒れ」防止法

2018年10月20日 12:00 PRESIDENT Online

予定通りにことが運ばない「計画倒れ」の経験はないだろうか。挫折に悩み、計画自体をあきらめてしまう人もいるだろう。しかし、メンタリストDaiGo氏は「日本人は科学的に見て98%がネガティブ思考。慎重にじっくり考え行動するタイプなので、計画を立てたほうが成功しやすい」という。DaiGo流、「計画倒れ」にならないための計画術とは――。

※本稿は、メンタリストDaiGo『倒れない計画術』(河出書房新社)を再編集したものです。

日本人の98%は計画を立てたほうが成功する!

日本人ほど、計画どおりにものごとが進むことを求める人たちはいません。なぜかというと、国民の98%がネガティブなタイプだからです。

マサチューセッツ州にあるウェルズリー大学の心理学者ジュリー・K・ノレム博士は、人間のメンタリティーを大きく分けて2つに分類しています。

1つは「防衛的ペシミスト」(DP)と呼ばれ、それまで成功していても「次は失敗するかも」と考えるタイプ。もう1つは「戦略的オプティミスト」(SO)で、根拠はなくとも「次も大丈夫でしょ」と考えられるタイプ。

「ネガティブ派」と「ポジティブ派」と言い換えてもいいでしょう。

そして、私たち日本人は脳科学的に見て不安(S型)遺伝子を持つ人が圧倒的に多く、98%は前者の「防衛的ペシミスト」に該当すると言われているのです。

不安だからこそ、日本人はマジメで勤勉

とはいえ、不安遺伝子を持っているからと言ってものごとがうまく進まないかというと、そんなことはありません。

不安な遺伝子を持っている人のほうが相手に配慮するので、信頼感を得やすく、友人関係もよくなることが分かっています。また、慎重に行動するので交通事故に遭いにくいという統計もあります。不安を原動力にものごとを学んでいくので、記憶力が高く、集中力も上がることも分かっています。

日本人の国民性としてよく言われる「マメで、マジメで、勤勉」という姿勢はS型遺伝子の影響かつ、「防衛的ペシミスト」だからかもしれません。不安が強い国民性だからこそ、入念に準備し、段取りをつけていくことにも向いているのです。

防衛的ペシミストの特徴を生かすには?

1つ勘違いしてはいけない点は、ポジティブな「戦略的オプティミスト」のほうが成功しやすく、ネガティブな「防衛的ペシミスト」は失敗しやすいという話ではないということ。「心配性な人は成功しない」「ポジティブに考える人が成功する」など、いろいろな迷信がある中で、「どちらのタイプでも成功します」というのが正解です。

ただし、ジュリー・K・ノレム博士は、タイプ別に取るべき戦略に違いがあると指摘しています。

重要なのは、あなたの性格がどちらのタイプに近いかを見極めたうえで、適した戦略に沿った行動を取ること。自分が「戦略的オプティミスト」に近いなら、失敗を恐れずに挑戦回数を増やすことを心がけ、「防衛的ペシミスト」に近いなら、事前の準備に時間をかけ入念な段取りや計画を心がけましょう。

防衛的ペシミストだからこそ自分を変えられる

ちなみに、私も性格的に完全に「防衛的ペシミスト」です。

ものごとに対して、根拠なく「大丈夫でしょ」と思えることがないので、何ごとも1つずつ納得がいくまで調べ、試し、取捨選択しながら段取りを立てていきます。

調べれば調べるほど、比較すればするほど安心するので、昔から「DaiGoは変わったヤツだ」と思われてきました。ただ、その積み重ねがあったからこそ、今こうやって科学的根拠に基づいた様々なジャンルの本を出すことができていると言えます。

正直、「将来、こんな自分でありたい」と目標を思い描き、今の状態になるまで10年かかりました。逆に言うと、10年間自分を変化させるプロセスを歩み続けられたのは、不安で仕方ない「防衛的ペシミスト」だったからです。

ものごとをネガティブに受け止めがちな人に対して、「ポジティブになってトライ&エラーを繰り返そう!」とアドバイスしてもあまり意味がありません。遺伝子が規定している傾向なので、後天的に変えることは難しいからです。

日本人の大部分は防衛的ペシミストなのですから、準備やスケジューリングを含めた正しい段取りや計画の方法を学ぶことで、目標の成功率を高めることができるのです。

挫折を計画していない

しかし、私たちは何度となく、ものごとが計画どおりに進まない経験をしています。

表向き「よくあること」と平気な顔をしていても、自分で決めたことが果たせなかったことに対して落胆し、自己嫌悪に陥ることもめずらしくありません。

というのも、私たちの心には「計画したことは達成させたい」という性質「一貫性の原理」があるからです。計画倒れは、自分との約束を破ったことになり、気持ちを落ち込ませます。しかも、その傾向は入念に計画を立てる慎重な人ほど、強くなるのです。

「うまくいくはず」という確証バイアス

こうした計画倒れはなぜ起きるのでしょうか?

その理由の1つは、私たちに備わっている「確証バイアス」にあります。確証バイアスとは、「こうあってほしい結論」を思い定めたとき、それに合致する情報だけを集め、合致しない情報は無視する傾向のこと。人が判断を誤る原因とされています。

確証バイアスの働きによって、防衛的ペシミストの人でもものごとの計画を立てるとき、「失敗」の可能性を考慮せず、「どうすればうまくいくか」にばかり目がいってしまうのです。

例えば旅行の計画を立てているとき、あの観光名所も回りたい、史跡も訪れたい、名物も食べたい、足湯にも入りたい、景勝地と有名な浜辺も歩きたい……と自分や家族の希望をすべてかなえようと1日の観光の段取りを立てたとしましょう。

タイムスケジュールは分刻み。それでも予定どおりに回ることができれば、全員満足の1日になるはず。我ながらよくできた段取りだと満足して迎えた旅行当日。

観光名所での待ち時間、移動時の事故渋滞、名物を買うための行列など、現地では立てた段取りを破壊するトラブルがいくつも起きます。分刻みのスケジュールは崩れ、計画どおりにものごとが運ばず、イライラ……。

つまずきによって「どうにでもなれ!」と投げ出すことに

確証バイアスが働くと、人は「こうあってほしい結論」ありきの理由を集めて計画を立ててしまいます。本来であれば「理由→結論」という判断をすべきところが、「結論→理由」の順番になってしまうのです。

その結果、段取りが崩れ、目指していたゴールにたどり着きそうもないと分かったとき、モチベーションが一気に下がり、投げ出したい気分になります。

これは心理学の世界で「どうにでもなれ効果(The What-The-Hell Effect)」と呼ばれるもの。かなり砕けた名称ですが、論文でも使われている用語です。

「どうにでもなれ効果」が発動すると、人は自分の立てた計画、段取りを放り出してしまいます。

例えば「夏までに5キロ痩せたい」とダイエットをしている人が、業務上、どうしても断れない会食に参加。サラダやチキンだけで済ませようとしていたところ、取引先のキーマンから「この店でパスタを食べないのはもったいない!」と勧められ、口にしたら最後、「今日はいい。デザートのケーキも食べる!」となってしまうわけです。

あらかじめ、失敗、挫折を計画しておく

こうして一度、立てていた段取りが崩れると立て直すには、より多くの努力が必要になります。実際に、暴食した一夜によってダイエットがなし崩し的に終わったケースは世の中に数多あるはずです。

旅先での計画ならば、立てた段取りを投げ出したまま、1日を終え、もう次の日からは成り行きまかせにしてしまうかもしれません。

失敗や挫折を想定せず、「うまくいくはず」という誤解をしたまま段取りを立てると、逆にうまくいかない可能性が高くなるというわけです。

段取りを立てるときは先に「失敗する、挫折する、計画外のことが起きる」ということを計画に盛り込んでおくこと。

失敗したとき、挫折したとき、計画外のことに直面したとき、自分がどんな感情を抱くのか。その結果、ものごとが進まなくなったとき、どう対処すればいいのか。

そこまで対策を立てておくのが、本当の意味での段取り上手です。

「段取りは挫折しないための対策であるということ」「失敗、挫折、計画外のことの発生をあらかじめ計画に盛り込んでおくこと」という2点を覚えておいてください。この2つを意識するだけでも計画倒れによって後悔する確率は著しく低くなるはずです。

[メンタリスト DaiGo 写真=iStock.com]

外部リンク

実家住まいでも"貯金がない人"の散財習慣

2018年10月20日 12:00 PRESIDENT Online

社会人になっても親と同居したままの20、30代の子どもは少なくない。FPの横山光昭さんは「同居中にしっかり貯金できず、親もその状態を放置しがちだ。おまけに経済的支援する親もいて、自分たちの老後資金が減る危険性もある」と指摘する。横山さんが、「ストレス散財」を続ける実家住まいの39歳女性にアドバイスした内容とは――。

20、30代で親と同居のパラサイト息子・娘が散財する理由

親と同居している20、30代の独身者で、自分のために使えるお金が多いにもかかわらず、貯金ができない人は少なくありません。

今回相談にいらっしゃった契約社員の池田真理(仮名・39歳)さんも、そんな「残念な独身」のひとり。毎月の赤字が約6万円あり、それをボーナスで補填してきましたが、それも底を突き、100万円の貯金を切り崩すところにまで追い込まれたそうです。自業自得ですが、「このままでは、貯金がなくなります」とかなり焦っています。

首都圏の郊外都市に住む池田さんは、同居している両親には、毎月の手取り19万5000円のなかから、2万円を渡しています。ただし、食費、水道光熱費、インターネット代の負担はなく、残りの17万5000円をすべて自分のために使うことができます。

しかも、通っている英会話教室と資格取得のセミナーの費用は、「教育費」として親が負担していました。40歳間近だというのに経済的に依存している池田さんも問題ですが、いつまでも過保護な両親も問題です。

家賃なし、水道光熱費なしでも月20万円を使い果たす39歳

毎月17万5000円も自分のために使えるお金がある池田さんは、どうして毎月6万円も赤字を出してしまうのでしょうか。ひとつひとつじっくりと支出の状況を伺ってみました。

通信費(1.6万円)、被服費(3.5万円)、美容費(1.3万円)など、独身女性の必要経費といえる出費もありますが、手取り19万5000円という収入のなかで、池田さんの家計を苦しくしている一番の要因は、毎月合計5万円にもなる「リボ払い」でした。

リボ払いはクレジットカードの返済額を一定にする支払方法です。たとえば毎月の返済額を1万円に設定すれば、9月に3万円の服を買い、10月に5万円の家電を買っても、毎月の返済額は1万円のままです。返済額が増えないため、「家計にやさしい」と勘違いしがちなのですが、リボ払いの金利手数料は約15%と非常に高く、元金が減らないまま、支払いが長期間終わらないという状況に陥りやすいのです。

案の定、池田さんのリボ払いの残高は93万円で、返済は2020年まで続くことになっていました。このまま毎月の赤字が続けば、100万円の貯金はなくなってしまうでしょう。

93万円のリボ払い分を一括返済して「借金ゼロ」にする

私は、池田さんの家計を再生するため、ふたつの方法を提案しました。

ひとつは毎月の支出を減らし、リボ払い額をこれ以上増やさないようにしながら、返済を続けていく方法。もうひとつは、100万円の貯金でリボ払い分(93万円)を一括返済し、毎月の支出も減らしながら、貯金を再スタートさせる方法です。

すると、池田さんは貯蓄が消滅してしまうことに迷いはあるようでしたが、「一括返済して、貯金ゼロからやり直すこと」を選択しました。

ただし、現在の「自由すぎる消費」は見直す必要があります。これまでの「好きなものを好きなだけ買っていた生活」を改めなければ、同じことの繰り返しになります。

要・不要を考えながら、買い物に優先順位をつけ、無駄な支出をできるだけ減らす必要があります。そのため、支出を「消費」「浪費」「投資」の3つに分けて考え、浪費を削っていくことにしました。

消費は生きていくために必要な支出、浪費はいわゆる無駄遣い、投資は将来の自分につなげる支出です。この割合が、消費:浪費:投資=70:5:25になることを目指します。この割合は、私がしばしばアドバイスする、健全な支出の「黄金律」です。

「大浪費」の原因はストレスと不安、着ない服もたくさん

池田さんは30代の半ばまでは、文具メーカーの事務職として堅実に働き、貯金も200万円ほどあったそうです。ところが、職場での人間関係に疲れて退社したことがきっかけで、退職後の散財で貯金が半分に。契約社員として再就職した今の会社では人間関係のストレスはなくなったものの、30代後半となり「結婚できないかもしれない」という不安で洋服や化粧品、エステ代などにお金をつぎ込んでしまったのだそうです。

「欲しくて買った服でも、1回も着ていないものがたくさんあるんです」

ストレスや不安から、衝動的に散財することはあるでしょう。そのとき拍車をかけるのが、手軽に使えるクレジットカードです。そのまま「カード破産」に至る人も少なくありません。しかし今回、池田さんは「貯金で借金をチャラにして出直す」という荒療治をしたおかげで目が覚めたようでした。

クレジットカードは親にあずけ、被服費や化粧品代も「長く着ることができる服、自分の肌に合った化粧品」という「買ってもいい基準」を自分で決めることで削減できたそうです。

その結果、毎月の支出は約7.5万円減り、毎月1.5万円ずつ貯金ができるようになりました。エステ代の分割払い(月2.6万円)が5カ月後に終わる予定なので、その後はさらに貯金額がアップし、老後資金を貯める準備が整います。

すねをかじらせる親「子どもファースト」は老後破産のトリガー

今回の相談の当初から、私は「池田さんのご両親は、ご自分の老後は心配ないのだろうか」ということがずっと引っかかっていました。

「子どもファースト」で教育費にお金をかけすぎたり、社会人となったあとも経済的に援助したりすることで、自分たちの老後資金が足りなくなるケースが目立ちます。いわゆる「老後破産」のトリガーは、子どもへのお金をかけすぎということも多いのです。

実は今回の家計費の見直しの際に、池田さんと相談した結果、「増額」する費目も作ることになりました。それは家に入れるお金と、これまで親に払ってもらっていた教育費。「池田さんもご両親も、みんな幸せな老後を」という気持ちを込めて、増やしてもらいました。

実家住まいであれば余裕があるはずなのに、お金の使い方にルーズになってしまい、結婚してもマイホームを買う資金がない、老後資金にも不安が残る……という相談をたくさん受けています。親は、子どもに同居を許したとしても「独身貴族」のような生活をさせていては、自分の首を絞めることになってしまいます。要注意です。

【家計費コストカット額ランキング】

1位 リボ払い -2.5万円×2件

2件のリボ払いの残高(97万円)を貯金(100万円)で一括返済し月々の返済をなしに

2位 被服費 -1.0万円

衝動買いをやめ、「長く着られる服」という基準で選ぶように

3位 生命保険料 -0.95万円

独身の間は不要と考え、「死亡保障」を解約

4位 通信費 -0.92万円

スマホもタブレットも格安simに変更

5位 娯楽費 -0.6万円

格安旅行サイトを利用。また、近場の公園など「高校時代のデート」作戦を実行

6位 美容日 -0.5万円

自分の肌に合った化粧品だけに限定

7位 食費 -0.4万円

コンビニでのお菓子のちょこちょこ買いをやめた

7位 生活日用品 -0.4万円

雑貨屋さんでのちょこちょこ買いをやめた

▼増額した費目

・教育費 1.2万円

英会話と資格取得のセミナー代は自分で負担することに

・住居費 1万円

家に入れるお金を1万円増額して月3万円に

[家計再生コンサルタント 横山 光昭 写真=iStock.com]

外部リンク

中途半端なポストを受けた進次郎の残念さ

2018年10月20日 12:00 PRESIDENT Online

実に微妙な人事である。自民党総裁3選を受けて安倍晋三首相が行った内閣改造と党役員人事。注目の小泉進次郎氏は党厚生労働部会長になった。「入閣か、無役か」と注目を集めていただけに、中途半端な印象は否めない。なぜ小泉氏は「中途半端なポスト」を自ら希望したのか――。

うれしさも、悔しさも「中ぐらい」

最初から安倍氏の勝利が確実視されていた先月の総裁選では、勝敗よりも、党内随一の人気者、小泉氏の動向に注目が集まった。安倍氏につくか。挑戦者・石破茂元幹事長を応援するか。それとも態度を明らかにしないのか……。このあたりの経緯は「安倍側近が"進次郎はこっち"と強がるワケ」や「安倍3選で"小泉大臣"がウワサされるワケ」などで詳しく紹介している。

簡単に説明すると、小泉氏は石破氏に1票を投じた。ただし、そのことを明らかにしたのは投票直前の20日昼。焦点となっていた党員・党友による地方票の投票は、締め切った後だった。石破氏は、早い時期に小泉氏の支援を受け、2人3脚で全国を行脚してブームを巻き起こしたいと考えていた。支援を得たのはありがたいが、2人で遊説はできなかった。

石破氏は党員投票で全体の45%を確保し、善戦した。もし、小泉氏が1週間早く意思表明していたら党員投票では安倍氏を上回っていたかもしれない。そういう考えると、うれしさも「中ぐらい」だった。

一方、安倍氏からみれば、小泉氏が敵側に回ったことは不愉快だが、損害は最小限に食い止められた。こちらも悔しさは「中ぐらい」だった。

橋下徹氏は「残念。全く意味不明」と切って捨てた

総裁選の議員投票直前に石破氏支持を打ち出したのは熟慮に熟慮を重ねての決断だった。石破氏を立てつつ、安倍氏と決定的な対立を回避する絶妙のタイミングといえる。

ただ、その結論の出し方は、歯切れがよい発言と行動が売りの普段の小泉氏の手法とは違う。むしろ「足して2で割る」従来型の政治手法に似ている。橋下徹元大阪市長がテレビ番組で、小泉氏の決断を「残念。全く意味不明」と切って捨てたのも、そういう空気を言い当てている。

小泉氏がつくポストとしては、あまりに地味

中途半端な対応だった小泉氏は、どう遇されるか。人事権者である安倍氏は、石破氏側についたことに怒り、徹底的に干すか。それとも、あえて石破氏についた小泉氏を厚遇して大人の対応を見せるか。人気者の小泉氏を閣内に入れれば超目玉人事としてイメージアップにもつながる。安倍氏も随分悩んだことだろう。

結論は「厚労部会長」だった。厚労部会長は、自民党の社会労働族議員を束ね、厚労省と連携、調整する重要ポスト。政府が政策をつくる時も、部会長の理解は必須だ。

安倍政権は今、政策の柱として「全世代型社会保障」を掲げている。「こども保険」を提唱している小泉氏を部会長に起用して「全世代型」の注目度を高めようという思惑が安倍氏にあったことは、容易に推察できる。

ただ、小泉氏がつくポストとしては、あまりに地味だ。党部会長ポストは衆院議員なら当選4、5回がつくことが多い。小泉氏は4回生なので適齢期ともいえるが、常に注目を集めてきた小泉氏のポストとしては寂しい。

今回の人事では当選3回の山下貴司氏が法相に抜てきされたことを考えると、小泉氏は、厚労相に起用されても不思議はなかった。

安倍、石破の両氏の顔を立てるのに気を使った

実は厚労部会長ポストは小泉氏が自ら希望していた。複数の自民党幹部が、小泉氏から希望を伝えられたことを認めている。猟官運動のイメージとは程遠い小泉氏が、なぜ、部会長を希望したのか。

総裁選で安倍、石破の両氏の顔を立てるのに気を使った小泉氏だが、その後の人事でも相当気を使ったようだ。

総裁選で石破氏を推した立場からすると、筋を通してあらゆるポストを辞退する道もあった。そうすると「石破派」の色が強くなり、安倍氏との関係が決定的になってしまう。

一方、安倍氏から閣僚や党首脳のような主要ポストを打診してきたらどうするか。小泉氏を大臣に起用したら、内閣の目玉ができる。「石破陣営からの起用」「若手の登用」というメッセージにもなる。安倍氏ならずとも考えつきそうだ。

安倍氏も異論はないし、石破氏も許容範囲

しかし、それに食らい付くと「総裁選の対応は、安倍氏と話がついていたのではないか」などと、痛くもない腹を探られかねない。石破氏側との関係もこじれてしまうだろう。

重要ポストについても無役になっても角が立つ。そこで、小泉氏は自ら「部会長」というビミョーなポストを求めたという推理が成り立つ。安倍氏も、このポストに小泉氏を起用することに異論はないし、石破氏も許容範囲だ。

「全世代型社会保障」の議論の中で、マスコミは小泉部会長の動向を追い続けるだろうから、小泉氏にとっても悪いポストではない。この厚労部会長というポストは、安倍氏と石破氏と小泉氏の関係のバランスを考えると絶妙だったといえる。

「沖縄知事選では以前ほど人が集まらなかった」

小泉氏は、今回の人事を通じて安倍氏と石破氏の間で、うまく立ち回ることに成功したようだ。総裁選での対応といい、考えに考えた、老成された対応ともいえる。

ただ、やはり分かりにくさがついて回る。父親・純一郎氏譲りの歯切れ良さが売りだった小泉氏。今回の「大人の対応」が、世論にどう映るか。小泉氏の人気に陰りが出ることになりはしないか。

そういえば、ある自民党幹部は9月30日の沖縄県知事選が終わった後、こんな話をしている。

「知事選では小泉氏が現地に入って演説をしたが、以前ほど人が集まらなかった。彼の人気も曲がり角に来ているのかなあ」

[プレジデントオンライン編集部 写真=時事通信フォト]

外部リンク

同業者が教える"おすすめできない精神科"

2018年10月20日 12:00 PRESIDENT Online

以前にくらべて元気がない。雑談をしていてもどこか上の空。「最近、何か変だな」と思う人はいませんか? 心の病の見分け方、対処法を3人の精神科医に聞きました。

正しく知って対策を。メンタルヘルス疾患のキホン

「メンタルヘルスの不調を感じたことがある」と答えた人は、4人に1人――。これは、労働政策研究・研修機構が2016年の11月に発表した調査結果だ。

働く人のメンタルヘルス対策は、近年、急速に進んでいる。2015年から、50人以上の常勤労働者を抱える事業所に対して、年1回のストレスチェックが義務付けられるようになった。

「よい取り組みだと思いますが、実効性のある制度とするには、まだ課題もあります。現状では、調査票に自分のストレス状況を正直に答える人ばかりではないでしょう」と話すのは、神戸親和女子大学大学院教授で精神科医の丸山総一郎先生。

厚生労働省が5年おきに行っている「労働者健康状況調査」を見ると、「職業生活で悩みやストレスがある」と回答した人の割合は、男女ともに増えている。

「その最新版(12年)に興味深い結果が出ていました。これまでは、男性の割合のほうが高かったのですが、女性が初めて男性の数値を上回ったのです」(丸山先生)

男性労働者は60.1%。女性労働者は61.9%。わずかな差だが、働く女性にかかるストレスは以前より増えつつあるのかもしれない。「そもそも、女性は4~10人に1人が一生のうちに1回うつ病にかかるといわれ、その比率は男性の2倍という報告があります」と解説するのは、女性のメンタルヘルスに詳しい野田順子先生。

その理由としてまず考えられるのは、女性ホルモン。エストロゲン(卵胞ホルモン)やプロゲステロン(黄体ホルモン)などの働きが、うつ病と大きく関係しているというのだ。

女性ホルモンは、妊娠と出産時のほか、月経周期によっても分泌量が変わり、閉経を機に急速に減る。その変化にともない、女性特有の疾患にかかりやすくなる。月経前症候群(PMS)、乳がん、子宮がんなどがよく知られている。

「働く女性は、こうした体の不調に加え、職場でのストレスが加わることで、うつ病などを発症するリスクが高くなると思います。結婚や出産などのライフイベントも仕事に大きく影響します。ワーク・ライフ・バランスという概念が、仕事も家庭も完璧にこなさなくてはと、自分を追い詰める要因になっている人もいます。40代後半からは、親の介護や老後の生活不安なども出てきます」

女性の体と心にのしかかる重圧は、ほぼ全年齢にわたり途切れることがない。

「心の不調に早めに気づいて、僕のところに診察を受けにくるのは、年代を問わず女性のほうが多いですね」と話すのは、お悩み相談のブログが大人気のTomy先生。

「でも、気分が落ち込む“うつ状態”だからといって、うつ病とは限りません。患者さんにとって何がストレスの元なのか、明確にわかっている場合は、“適応障害”といって、うつ病とは別の疾患ということもあります。職場では気持ちが沈んでも、プライベートでは元気に活動できている状態ですね」

適応障害は、ストレス源を取り除くことが治療の早道。苦手な上司が配置転換になったり、席が離れることで解決することもあるという。

「ちなみに男性は、同僚から『病院に行ったら?』と指摘されてやっと受診するので、すでに重症になっていることも多いですね」とTomy先生。

精神科や心療内科に行くことに抵抗があって踏み出せずにいる、というわけではなく、自身の不調にまったく気づいていない人もいるという。

「精神疾患は、気の持ちようでどうにかなるものではなく、脳の機能障害と考えられています。うつ病は、脳を使いすぎてフリーズした状態。自分を客観視できなくなっている場合もあるので、治療を受けるきっかけを、身近な人がつくっていくことも大切です」

あてはまったら要注意。心の病の前兆かもしれません

人の心=感情や思考を支配しているのは脳。その脳が何らかの理由で機能不全を起こし、不安、無気力、ネガティブな考え、幻覚や妄想にとりつかれ、日常生活が立ち行かない状態を、医学的に「精神障害」と呼んでいる。

「職場でよく見られるのは、適応障害やうつ病、不安障害です」と丸山先生。不安障害には、パニック障害(激しい動悸(どうき)やめまいなどが起きる)、社交不安障害(人前で注目されたり、他人からの否定的評価を恐れる)、PTSD(災害や犯罪被害などの記憶がフラッシュバックする)などがあるが、うつ病を併発するケースも多いという。

「うつ病の代表的な症状は、抑うつ(気分の落ち込み)、意欲の低下、喜びを感じにくくなることです。家族や職場の人がサインをキャッチすることが、早期発見・早期治療につながります」と野田先生。

チェックリストは、うつ病の患者によく見られる特徴。多くあてはまるほど危険と考えられる。

「何個以上あてはまったら病気」といった明確な基準はないが、医師はこうした項目と、本人への問診をあわせて診断している。

仕事では、以前にくらべ意欲がなくなり、集中できず、パフォーマンスが落ちてしまう。人間関係を避けるようになるのも、うつ病によくある症状。「電話が鳴ってもすぐに出ない」「ランチや飲みに誘っても来ない」。そんな出来事が続いていないだろうか。

女性の場合は、おしゃれや身だしなみに関心がなくなるという、明確な変化が見られることも。「フルメイクだったのに、最近は眉とリップだけ」「ネイルアートをしなくなった」「髪がはねていても平気」など。

食事の量や睡眠時間が極端に増減するのも、重要なサイン。食欲がなくなり、体重が減っていくケースと、食べ過ぎて体重が増えていくケースの両方がある。睡眠は、なかなか眠れず、夜中に何度も目を覚ます不眠が多いが、10時間以上寝てしまう過眠になる人も。

「うつ病の人は職場とプライベートの両方で活動レベルが落ちていきます。家での食事、睡眠、休日の過ごし方について、さりげなく聞いてみてください」と野田先生。

心の病気を疑われている――と思われないよう、雑談をよそおって聞くのがポイント。

「最近、暑くて寝苦しいよね。よく眠れてる?」「週末は何してた?」「昨日の夜は何を食べたの?」などと聞いてみて、「あまり眠れてなくて」「家でずっと寝てました」「昨夜は食べてません」と返ってきたり、言葉につまったりしたら要注意。

とはいえ、「うつ病なんじゃない?」と安易に口にすると、相手を深く傷つけることがある。とくに男性は、「メンタルに問題が見つかったら、評価に響く」と警戒する人も多い。「眠れてないなら、睡眠外来に行ってみたら?」などの助言にとどめよう。

こんな要素がメンタルヘルス不調の引き金に……

脳の機能障害が起こるしくみは、残念ながらまだ解明されていない。だが、医師から見ると、うつ病の診断が下りる人には、一定の共通点があるようだ。

「まじめで几帳面(きちょうめん)で完璧主義、負けず嫌いで自分に厳しい。そういう性格の人が多いと思います」と野田先生。ものの考え方や職業観は、肉親からの影響も大きいと考えられる。そこで野田先生は、初診の患者に両親がどんな人か、どんな育てられ方をしたかをヒアリングしているという。

ただ、性格は「心の不調を引き起こす要因のひとつ」に過ぎず、職場の環境によるところも大きい。セクハラやパワハラはもちろんだが、上司から「期待してるよ」と言われて断れず、許容量を超えた仕事を抱えている人も、うつ病になるリスクが高い。職場の人間関係も、ストレス要因として無視できない。

「女性が多い職場では仲のいいグループごとに休憩や食事に行ったりしますが、その輪に入っていけない人は孤立して、心に問題を抱えやすくなります」と野田先生。

心理的なストレスが原因で精神障害になったり、過労自殺で労災認定されたケースは、年に500件近くにのぼる。

「男女別のデータを見ると、男性は製造業、女性は医療や福祉関係の仕事についている人が最多という結果でした」と丸山先生は話す。

「医療や福祉の仕事を選ぶ女性の多くは、人を助けたいという理想をもっています。ところが、いざ現場に出ると、患者さんやお年寄りへの接し方に問題がある上司や同僚もいる。そのギャップに悩み、無力な自分を責めてしまうのでしょう」

私生活では、家族に問題があったり、一見ハッピーに見える結婚や出産が強いストレスを抱えるきっかけになるケースもある。

「カサンドラ症候群といって、女性のうつ病の原因が実は夫のアスペルガー症候群だったとわかることがあります」と野田先生。

アスペルガー症候群も精神障害のひとつで、他人の気持ちが理解できず、対人関係でトラブルを起こしやすい。こういった家庭や家族の問題は、職場では話題にしにくいもの。家族や当事者が病気を疑い、医療機関に行くしかない。

(1)まじめで几帳面な性格

完璧主義で責任感が強い。仕事を人に任せられず、自分ひとりで抱え込んでしまう。

(2)職場の人間関係と過重労働

グループ内で孤立している。仕事量が多すぎる。セクハラやパワハラにあっているなど。

(3)家族との不仲や病気

夫、子ども、父母、義父母など、家族とのいさかいや価値観の不一致、病気で悩む人も。

(4)大きなライフイベント

周囲からは祝福されるような出来事でも、環境の変化についていけず苦しむ人がいる。

この医師で大丈夫? 同業者が教える精神科医の選び方

いざ精神科にかかろうと思っても、どこに行けばいいかわからないという人も多いだろう。医師選びで失敗しないためには、どうすればよいのだろうか。

「おすすめはかかりつけ医に相談することですが、勤め先の産業医や役所の保健師など、地域の精神科医とネットワークを持っている専門家に評判を聞くのもよいでしょう」と丸山先生。インターネットの口コミを見るのは手軽だが、患者の主観に左右されるため、確実な情報は得にくいという。

Tomy先生は、「同業者の立場から、私がおすすめできないのはこんなクリニック」と、4つの特徴を紹介してくれた。

まず、複数の診療科の中に精神科や心療内科が含まれるところ。

「ドクターの経歴に『精神保健指定医』や『日本精神神経学会認定専門医』の資格がなければ、精神科も“ついでに”診ている可能性があります。精神科の薬に詳しくなく、依存性のある薬を安易に出してしまうドクターもいます」

2つめは、薬をむやみに出すか、まったく出さないドクター。

「精神科では、抗うつ薬、抗精神病薬、気分安定薬、抗不安薬、睡眠薬の5種類を組み合わせるのが基本ですが、同種の薬がいっぺんに複数出ていたら不自然。一方、『薬を使わずに治します』というドクターは、カウンセリングなどの精神療法が中心になりますが、時間がかかり、確実に効果が出るわけでもありません」

3つめは、カウンセリングと検査が多いドクター。「検査は保険がきくものが多いですが、結果レポートの作成は自費になることも。カウンセリングは保険適用外で、高額に設定しているクリニックもあります。患者さんの同意も得ずに押し付けてくるところは、お金もうけ優先かもしれません」

4つめは、一方的に自分の考えを話し、困っていることを訴えても取り合わないドクター。

診療時間もひとつの目安。初診は30分くらいかけるのが一般的だが、10分ほどで終了したり、再診は5分未満というドクターもいる。「患者さんの表情やしぐさを観察して、症状の変化を読み取るためには、再診でも15分は必要ではないでしょうか」と野田先生。「信頼関係が築けないと感じたら、転院してもいいと思います。ただし、薬を独断で中止すると症状が悪化することがあります。服薬を続けながら、新しいクリニックに行くようにしてください」

転院するには紹介状が必須、と思い込んでいる人もいるが、紹介状なしでも受け付けている病院はある。頼みにくいドクターなら、黙って病院を変えてしまおう。

(1)薬が多すぎるか、まったく使わない

初診から6種類以上の精神薬を出されたら、ドクターに説明を求めよう。まったく使わない場合は、通院が長期化するリスクがある。

(2)複数の診療科を同時に掲げている

診療科の最後に「心療内科」や「精神科」と書いてあるクリニック。精神科の専門医でない場合は、処方する薬の選択肢が少なくなる。

(3)カウンセリングと検査の回数が多い

再診以降でひんぱんに検査を行ったり、保険適用外のカウンセリングを半強制的に組み込もうとする。治療に必須でないなら断ろう。

(4)患者の話をあまり聞こうとしない

「あなたは○○だから」と一方的に決めつけたり、患者の訴えに耳を貸さない。初診では親身でも、徐々に態度が変わることがある。

メンタルヘルスの治療は、薬+認知行動療法が主流

あるテレビ番組で、うつ病を経験したフリーアナウンサーの丸岡いずみさんが、「精神科の薬を飲むと人格が変わってしまうのではと不安になり、薬をこっそり捨てていた」と告白した。しかし、入院して薬を規則的に飲むようになると、つらい症状がウソのようにおさまっていったという。

「精神科の薬をこわがる人が多いのですが、脳内物質のバランスを整えて、脳の機能を正常にするなら、やはり薬物療法が基本。うつ病の場合、脳内の神経伝達物質にピンポイントで作用するSSRI、SNRIと呼ばれる薬が主流です」とTomy先生。少量から始めて、1~2週間様子を見るのが一般的だという。

薬である程度の効果が出てきたら、精神療法(精神科医や臨床心理士によるカウンセリング)を並行して行うことが多い。「現在、有効だと実証されているのは、認知行動療法です」と野田先生は解説する。

「簡単にいうと、マイナス思考のクセを変えていくものです。『仕事を完璧にこなせないといけない』『こんなこともできない私はダメな人間』。そうした考え方が偏っていることに気づいてもらい、修正していく。うつ病の再発防止に効果があるといわれています」

薬が効かないか、副作用が深刻で薬が使えない場合は、麻酔下で脳に微弱な電流を流す「修正型電気けいれん療法(mECT)」を実施することも。電極をつけることに抵抗をおぼえる人もいるが、即効性があり、自殺するリスクが高い重度のうつ病に有効だという。

このほかに、磁気を出すコイル装置を頭部に近づけて、脳の神経細胞に刺激を与える「反復性経頭蓋磁気刺激法(rTMS)」というものがある。こちらは麻酔の必要がなく、2018年内に保険適用される見込みだ。

うつ病は再発しやすく、長期休職すると復職が難しいというイメージもあるが、近年は復職支援(リワーク)プログラムに力を入れる医療機関が増えている。認知行動療法で考え方のクセを修正するほか、対人関係をスムーズに行うためのグループワークや、規則的な生活を送り、きちんと休息を取るよう指導を行う。

職場に戻れば再びストレスにさらされるが、「悲観的な考え方」を修正できれば、心のダメージは軽減される。また、生活のリズムを整え、仕事以外に楽しむ時間をもつようにすれば、ネガティブな感情をひきずらずにすむ。

「大事なのは、ストレスとのつきあい方を変えていくことだと思います」と丸山先生は話す。「パワハラやセクハラなどのストレスは取り除く必要がありますが、管理職への昇進や、未経験の仕事などは、長い目で見れば人を成長させてくれる“よいストレス”。すべて悪いものだと決めつけず、上手に楽しくつきあっていくという発想を取り入れてほしいです」

(1)投薬

脳の神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリンなど)に作用する抗うつ剤は、SSRI、SNRIと呼ばれる薬が主流。不安障害や強迫性障害などにも処方される。

(2)認知行動療法

特別な訓練を受けた精神科医や臨床心理士が行う精神療法。ものごとを悲観的・否定的にとらえるクセ(認知のゆがみ)を患者に自覚させ、修正していく。

(3)修正型電気けいれん療法

麻酔下で、頭の表面から電流を2~3秒通し、軽いショックを与えてうつ病の症状を改善する。即効性があり、自殺する危険がある重症な患者に適用される。

(4)復職支援プログラム

産業医や臨床心理士などの有資格者が、精神障害で長期休業している患者の復職をサポート。日常生活の改善指導や対人交流を学ぶグループワークもある。

[プレジデント ウーマン編集部 中津川 詔子 イラスト=MAIKO SEMBOKUYA 写真=iStock.com]

外部リンク

ゴルフ以外の時間も"あか抜けて"見える~アディダスゴルフ

2018年10月20日 12:00 PRESIDENT Online

ゴルフが趣味、というビジネスマンは多い。仕事につながることからも、グリーン上ではゴルフウェアのセンスで一目置かれたいところだ。今回紹介するのは、adicross(アディクロス)のアパレルとフットウェア。ゴルフシーン以外でも着用できる。

アディダスゴルフの「adicross(アディクロス)」より、「ALWAYS ON. - ゴルフへの熱を、どんな時も」というコンセプトのもと、ゴルフシーンに新しいスタイルを提案する新作アパレルとフットウェアが発売された。

フットウェアは、adicross bounce(アディクロス バウンス)の派生モデルとなる「adicross bounce mid(アディクロス バウンスミッド)」だ。 ON/OFF両方のシーンで着用できるスタイルと性能を兼ね備えているシューズは、トレンドのミッドカットタイプ仕様なので、ジョガーパンツなどのタウンウェアと合わせやすいデザイン。アッパーは、防水レザーアッパーが足を包み込むような構造を採用。また、安定性を必要とする部分に、皮革や繊維素材に熱処理を加え波状に形成し、加工を施した部分の硬度を高める独自の新技術「フォージド加工」を取り入れている。甲部分には伸縮性のあるアーチで快適なフィット感を生みながらも着脱しやすい設計で、ゴルフでも日常でも性能を発揮するシューズとなっている。

アパレルでは、ゴルフ以外でも着用できる、よりストリートカジュアルなTシャツやスウェットパンツなどが揃っている。

「JP adicross 3ストライプ L/S ジップモックシャツ」は、杢調のストレッチ素材を使用したジップモックシャツで、袖の同色系の3ストライプがスタイリッシュな印象を与えるアイテム。背中面にはレタードロゴが入っているので、後ろ姿も見栄えがするデザインとなっている。

スウェットパンツの「JP adicross レンジパンツ」とフルジップフーディーの「JP adicross L/S フルジップフーディー」は中肉厚の吸汗速乾性に優れた素材を使用している。スタイリッシュなデザインはどちらもドライビングレンジでの使用もおすすめしたいモデル。カジュアルなデザインながら、ゴルフのプレーに必要な吸汗速乾、UVケア、ストレッチ性といった機能も搭載し、ゴルフウェアの性能を発揮している。ラフに動ける新しいゴルフスタイルに注目だ。

editor's comment

グリーンで派手な色やデザインで個性を発揮しようと考えている人とは一線を画す、今季のアディダスゴルフのウェア。ほどよく力が抜けた余裕のあるデザインや色は、都会的なセンスを持つ上級者にみせてくれそう。ゴルフ以外にも活躍できるアイテムなので、着用できる回数が増えそうだ。

[text:Rina Araki]

外部リンク