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「すごく幸せなアイドル人生でした」夢眠ねむが語った、でんぱ組.inc卒業と引退

2018年10月14日 11:00 LINE NEWS編集部

「2019年1月7日で、でんぱ組.incを卒業します。そして3月末で芸能界も引退します」

10月13日、でんぱ組.incの夢眠ねむがグループ卒業と芸能界引退を発表した。

この日、沖縄・桜坂セントラルで行われたワンマンライブのアンコール。これまで大事な場面で何度も歌われてきた、ファンにとっても大切な楽曲「ORANGE RIUM」を披露した直後のMC。

夢眠ねむは意を決した表情でステージのセンターに立つと、ひと呼吸おいてから、話し始めた。

「私は芸能活動が10周年になるのを機に、今後のことを考えて、でんぱ組.incを卒業すること、そして芸能界を引退することに決めました」

「アイドルになるとは思ってもいなかった人生なんですけど、みんなのおかげですごい楽しい思い出もいっぱいできたし、ひとりでは見られない景色を、本当にたくさん見られたなと思います」

客席からは、悲鳴があがった。夢眠ねむのすぐ隣で発表を聞いていた古川未鈴はうつむき、涙をこらえ切れずにいた。

「絶対こんな空気にしてしまうのはわかってたんだけど…ごめん!」と謝る。そして「『辞めないでー』とか言わないの?」とおどけてみせる。

いつもファンのことを第一に考えてきた、彼女なりの気遣いなのだろう。張り詰めていた会場の空気が、この言葉で少しだけ和らいだ。


でんぱ組.incがまだ秋葉原を中心に活動していた2009年に加入した夢眠ねむは、その飛躍を初期から支えてきた。

そんな彼女が今回、卒業を決断した理由とは――。

発表の3日前となる10月10日、自らの口で、丁寧に語ってくれた。


「特に劇的なことがあったわけではないので、大したことは話せないですよ(笑)」

はにかみながらソファに座る。その笑顔は、いつもよりほんの少しだけ緊張しているようにも見えた。

「辞めるときはちゃんと準備してからっていうのは、ずっと考えていました」

「変な話なんですけど、辞めるときがかっこ悪いのは嫌だなって、アイドルを始めたときくらいから考えていて。去り際がかっこいい人がすてきだなって考えていたので、辞めるときはスパッと引こうと決めていました」

夢眠ねむは、これまでもインタビューやブログなどで、たびたび"終わり"を想起させる発言をしてきた。

「急にショックなことを言われるのは自分も嫌なので、なんとなくファンには『そういうことを考えてるんです』って、遠くから小声でずっと言っていた感じはあって」

とはいえ"卒業"をより現実的に意識するようになったのは、最近になってからだという。

「2017年の初夏くらいに、改めてメンバーひとりひとりに『卒業しようと思っています』と話しました」


でんぱ組.incは2014年5月、当初の目標であった日本武道館でワンマンライブを行い、名実ともにトップクラスのアイドルとなった。

2017年1月には2度目の武道館公演を開催。その中で、この日以降ライブが決まっていないことを報告した。グループとしての活動は、事実上、休止状態となった。

「止まってしまうなら、ずっと考えていた"辞めるための準備"をやった方がいいのかなって思ったんです。学生時代から美術をやっていたんですけど、作家として自分が思い描く形で、作品としての"夢眠ねむ"を完成させたいなって」

「これはマイナスな話ではなく、それができたら全身全霊で、ただただでんぱ組.incのことを押し上げられるかなって。いつでんぱ組.incが始まってもいいように、とにかく一回、自分のことはやり切ろうって思ったんです」

もともと美大に在籍していた夢眠ねむは、音楽以外にも多くのアート作品を発表してきた。2017年前後には、これまでため込んでいたものをひとつひとつ形にするように、書籍や写真集などを立て続けに世に送り出した。

「写真集の裏テーマは"お墓"になっていて、これまでの衣装を全部使ったりしました。他にもデザイナーさんとか、ずっとお世話になってきた方々と最後の作品をつくるつもりで、2017年は活動してきました。未練なきように」

2017年2月には、自身の声をサンプリングした「VOCALOID4 Library 夢眠ネム」が製品化された。そして7月には、著名クリエイターらが夢眠ネムを使用して制作した楽曲を集めたアルバム「VOCALOID 夢眠ネム」もリリースされた。

「私、ライブをたくさんしていた時期に声が出なくなったことがあって、すごくショックだったんです。だから声がずっとかわいい状態のまま保存できたらっていうのも、思っていました。それが夢眠ネムでかなった」

「私が歌うのをやめても、彼女をプロデュースしてくれる人がいれば、歌声はずっと残り続けるし、新しい作品が出続ける。それをリスナーとして聴けるのが、すごくうれしかったですね」

さまざまな作品が形になった。その中で、自分自身が思い描いていた"夢眠ねむ"を、無事に「完成」させた手応えを感じていた。

「やりたいことをやることができたなっていう満足感はありましたね。それが2017年の初夏あたりでした」


当時のグループは夢眠ねむのほか、古川未鈴、相沢梨紗、成瀬瑛美、藤咲彩音、最上もがの6人体制。メンバー全員に、卒業の意思を伝えた。

「これまでも楽屋とかで私の考えを話してはいたので、みんな『時期が来たんだね』『決めたんだね』って。未鈴ちゃんにはずっと『未鈴が辞めるまでは(自分も)辞めない』って話していたんですけど、このときは『ねむさんの人生だからね』って言ってくれました」

でんぱ組.incは2017年8月6日、最上もがが体調不良により脱退。12月30日、大阪城ホール公演で鹿目凛、根本凪の加入が発表され、7人体制となった。

卒業を意識していたとはいえ、立ち止まるわけにはいかなかった。

「もがちゃんが体調の関係でどうしても辞めなきゃいけなくなって、これまで引っ張ってくれた大事な存在がいなくなってしまった。その後に新メンバーが入ってくれることになったので、今踏ん張るのは私だなって気持ちはありました」

「自分が見てきた景色や、どういう気持ちでファンのみんなに接してきたかも、新しい2人に伝えたいなって。みんな、でんぱ組.incをなくしたくないって思いは一緒だったし、とにかくまた走り出せるまではがんばろうと思いました」

新メンバーの2人にも、気持ちは伝えていた。

「ちゃんと話して、教えられることは全部注がせてくださいって。最初の方からいろいろ背負わせちゃってるのは、かわいそうなんですけど」

2018年は2度のツアーで全国を回り、2019年1月には新体制で初となるアルバム「ワレワレハデンパグミインクダ」を発売する。

鹿目凛、根本凪の成長は想像以上だった。

「2人とも吸収が速いので、すごく心強かったです。この1年での成長がすごくて、感動しましたね」

そして2018年10月13日、夢眠ねむはグループ卒業を発表した。


「アイドル活動も芸能界も、辞めようと思っています」

彼女にとって、でんぱ組.incは、自身のアイドル人生そのものだった。

「でんぱ組.incに入らなければ一生アイドルにはならなかったと思うので、でんぱ組.incを辞める=そういう活動を辞めるっていうのは、なんとなく自分の中でずっと思っていました」

「続けるなら、でんぱ組.incをやればいいわけですしね。私がやりたかったアイドルはでんぱ組.incだし、このメンバーがいるからなので」

もともと夢眠ねむは、自分にアイドルは向いていないと考えていたという。

「でも自分の人生には、絶対アイドルが必要だったんだと思えるようになりました。もともと偏屈というか、幸せになっちゃいけない、みたいな気がしてて。悲しみや怒りとかで創作意欲を高めて、鬼気迫るところで表現したいみたいな気持ちがずっとあって」

「ただアイドルになったおかげで、自分が幸せだからこそ伝えられることがあるっていう事実を知ったんです。それを知るのと知らないのとで、私の人間性も人生も本当に違ったなって。自分が幸せになることを許せるし、人の幸せも願えることは、アイドルにならなきゃわからないことだった」

それは、でんぱ組.incとして活動していく中で気づいていった。

「きれいごとじゃなく、本当にファンの人の存在が大きかった。最初は自分のことをかわいいって言ったり、認めてくれたりする人がいること自体、びっくりしました」

「私の幸せがその人の幸せの地続きになっているのを目の当たりにしたんですよね。それは想像もしていなかった。逆に私がつらかったら、みんな一緒に悲しんでくれる。そういう人たちを幸せにするためにアイドルをやっているから、みんなのために幸せにならないとなって」


卒業後は、裏方に専念する。

「ライブもしなくなると思うし、表に出なくなりますね。音楽活動も全然考えていないので、そこは"夢眠ネム"に任せようと(笑)」

「もともとやっていたことに戻るっていうと変なんですけど、作品づくりをしたり、いろんなプロデュース業ができたりしたらと思っています。表から引っ込んではしまうんですけど、やりたいことはあまり変わっていないというか。でも作品の中で、自分の姿を使うことはもうなくなるのかなって思います」

特に「書店」と「キャラクター」への思いが強い。

「本屋さんを作りたいとずっと思っているので、リアルな店舗でやるのが目標ですね。あと『たぬきゅん』っていうキャラクターを作っているので、そのプロデュースにももっと力を入れたい。たぬきゅんをアニメ化するのも目標ですね」

書店とアイドルには、共通項も感じているという。

「最初にアイドルを見て感動したのって、完全メイド宣言っていうアイドルなんですけど、ファンがかっこよくて好きになったんですよ。ファンの熱量というか、自分が好きなものを声に出して応援できることにすごく引かれて」

「それを今、本屋さんの業界にすごく感じるんです。本屋大賞(書店員の投票により決定する賞)とかを見てても、感動して。それがアイドルに対しての初期衝動にすごく似ているというか。自分を動かす感情に改めて出会えたのは、本だったんです」

アイドルとして最後の舞台は、2019年1月6日、7日の日本武道館公演となる。

「事務所の皆さんが、武道館で2デイズをやろうって言ってくれたんです。1日目が7人で初めての武道館で、2日目をねむちゃんの卒業公演にしようって。すごく幸せなアイドル人生でしたね。ちゃんと場所を与えてもらってライブができるだけでもありがたいことなのに、自分が冠についている公演を武道館でできるのが」

「もちろん成功させたいです。ねむがいた時代も楽しかったし、これからもでんぱ組.incを応援しようと思ってくれるような、楽しいお祭りにできたらいいなと思っています」

「これからもっともっとでんぱ組.incが発展するとうれしい。私が抜けた後、武道館でやるときに、お花を出すのが夢です(笑)」

そう話す彼女の表情は、とても晴れやかだ。


「ファンを信じ切っちゃってるから、私のオタクは(卒業発表も)『だよね』って思ってくれると思うんですよね。(卒業理由が)意外と普通でごめんねっていうか」

「結婚が決まったわけでもないし、劇的なこともないから、すごい純粋にハッピーな感じです。寿退社だったら、サブタイトルをそれにしたいくらいなんですけど(笑)。意外とまだまだ仕事がしたいんだなって」

インタビューを終え撮影に入ろうとしたとき、ふと口にしたのは、ファンへの思いだった。

卒業まで約3カ月。夢眠ねむはでんぱ組.incのメンバーとして、最後まで駆け抜けていく。


【取材・文 : 前田将博(LINE NEWS編集部)、撮影 : 二宮ユーキ、動画 : 滝梓】

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