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エヴァ8号機"エッフェル塔攻撃"も再現!乃木坂46松村沙友理のJAPAN EXPO訪問記

2019年7月21日 11:00 LINE NEWS編集部

 
フランス時間7月6日午後1時、パリ郊外の大規模展示会場。
その一角に設けられた大型ステージには、収容人数いっぱいの約5000人が詰め掛けていた。

皆が注視するスクリーンで、カウントダウンが始まった。
「トロワ!ドゥ!アン!」。客席から、フランス語の大合唱が起きる。

映し出されたのは「これまでのヱヴァンゲリヲン新劇場版」の文字。
続いて、過去の3作品のあらすじ映像が流れだした。

数々の印象的な場面が映し出され、フランスの人々は静まり返ってスクリーンに見入っていた。
その中に、日本から現地を訪れている乃木坂46松村沙友理もいた。

NHK「エヴァ噺」にも出演するなど、「新世紀エヴァンゲリオン」の熱烈なファンとして知られている。
小さくうなずきながら、新劇場版のあらすじをなぞっている。

3作品の紹介が終わった。画面が暗転する。
しばらくすると、エヴァパイロットのひとり、真希波・マリ・イラストリアスの歌声が聞こえてきた。

1969年発表の名曲、水前寺清子の「真実一路のマーチ」。のどかな響きと裏腹に、客席の緊張感はぐっと高まる。

「さあ、どうなる…」。松村も思わずつぶやく。



「すごい!ゼロツーがいる!」


その日の早朝。松村は集合時間よりも10分早く、ホテルのロビーに現れていた。
「ホント楽しみで」。時差の影響だけではなさそうだ。

向かう先は、鉄道で1駅の大規模展示会場で行われる「JAPAN EXPO」。
漫画やアニメ、ゲームを中心に日本文化を紹介するイベントで、今回で20回目を数える。

松村は2年前に、乃木坂46として招かれ、フランスのファンにパフォーマンスを披露した。
ステージは大いに盛り上がった。ただ、心残りはあった。

「JAPAN EXPOがどんなものなのか。そのとき私は、自分のステージからしか見ることができなかったんですよね」

いつかはファンの立場で、JAPAN EXPOを訪れてみたい。
今回、その願いがかなう形になった。しかも会場内では、愛するエヴァンゲリオンのステージまで開催される。

ファンが長年待ち望んでいた、来年公開予定の劇場版最新作を世界に告知するイベント。
冒頭の映像を先行公開することも予告されていた。

約40時間前の4日夜にはまだ、ナゴヤドームで「乃木坂46 真夏の全国ツアー2019」のステージ上に立っていた。

全力でパフォーマンスした上で、翌朝には羽田発パリ行きの便に飛び乗った。時差7時間、12時間のロングフライト。だが、疲れなどみじんも感じなかった。

さらにテンションが上がったのは、最寄りの駅から続く人の波に合流した瞬間だった。

「すごい!ゼロツーがいる!ダーリン・イン・ザ・フランキスのゼロツー、私大好きなんですよね!」

フランス人たちは、それぞれに愛着あるキャラのコスプレをして、会場を目指していた。
もちろん、日本の漫画やアニメ、ゲームのキャラクターだ。

「すごく有名、ってわけじゃないキャラクターのコスプレをしている方もたくさんいます!みんなよく知ってるなー!本当に好きになってくれているんですね!」



日本の流行が伝わるのが早い!


JAPAN EXPOには、毎年20万人もの人々が訪れる。
ピレネー山脈の麓。コートダジュール。ベルギー国境。駐車場に並んだ乗用車のナンバーに記された県番号を見ても、フランス全土から集まっていることが分かる。

巨大な展示会場を埋める人波に、一瞬だけ気おされた。
だが次の瞬間には、松村は意を決したようにその中に飛び込んでいた。

トップアイドルの身。日本では雑踏の中を歩くことなどはない。
だがなぜか、人混みの中をスイスイと歩いていく。そしてお気に入りの作品のブースを見つけては、目を輝かせて見入っている。

「これは『鬼滅の刃』の竈門禰󠄀豆子(かまど・ねずこ)です!連載が始まって2、3年で、アニメ化されたばかりなんですが…もうこっちでも人気なんですね!」

ブースの外にできた長蛇の列にも、ためらいなく並ぶ。
その先では、縁日のようなイベントが行われていた。スマートボールのようなゲームで、禰󠄀豆子のマグネットを狙うが…。

惜しくも外れた。
「悔しい!これは難しいですね!」。そう言いつつも、笑顔がはじける。

「他のブースを見ても、コスプレの傾向を見ても、最近の作品がこっちでももう人気になっている。日本の流行が伝わるのが、思ったよりも早い!」



「アニソンは最強のパスポート」


興奮気味の松村を、さらに高ぶらせる出会いがあった。
会場の一角、プレスルーム。松村は歌手・高橋洋子のインタビュー取材を許されることになった。

言わずと知れた、新世紀エヴァンゲリオンの主題歌「残酷な天使のテーゼ」の歌い手。
JAPAN EXPOでのエヴァイベントに、スペシャルゲスト兼「シン・エヴァンゲリオン劇場版」公式応援アンバサダーとして登場するために現地を訪れていた。

松村沙友理

乃木坂46というグループの松村沙友理と申します。今日は本当にドキドキです。

高橋洋子

私もドキドキですよ。かわいらしくて。

松村沙友理

あと1時間でステージなんですよね?そんなタイミングでお時間いただき、本当にありがとうございます。

高橋洋子

いえいえ。JAPAN EXPOはもう、見て回ったんですか?

松村沙友理

はい!まだ少しですが、こんなにも日本文化が愛されているのかと驚きました。高橋さんはイベント参加2年目だそうですが、どんな印象を持たれていますか?

高橋洋子

私も日本が愛されているのは強く感じます。そういうイベントだから当たり前かもしれないけど。でもフランス人の間で普通に日本語が飛び交っているのは、すごいと思います。

高橋洋子

フランスの人が日本のアニメ、アニソン、コスプレなどを認めてくれたことは、それらが世界的にも認められるきっかけのひとつになったんじゃないかと、私は思っています。フランスの人って、全てがおしゃれじゃないですか。服装も街並みも、何気ない振る舞いから言葉の響きに至るまで。そんな人々が、日本文化を愛してくれた。だから世界も認めたのかなと。

松村沙友理

そうやって愛してくださっている海外のファンの前でパフォーマンスする際に気を付けていることって、何かありますか?

高橋洋子

ステージ上では、日本語でゆっくり話すようにしています。結構、分かってくれるんですよね。笑うツボも分かってくれる人までいるので、せっかくだから日本語で伝えたい。

松村沙友理

私も乃木坂46として、海外で挑戦しているんですが、ファンの皆さんが日本語で歌ってくれるのはびっくりしました。

高橋洋子

アニメきっかけ、歌きっかけで日本語を話せるようになった方、多いみたいですね。生活スタイル自体も、アニメから学んでくれているようで。この会場でもお弁当箱を売るブースがありますけど、そうやってお弁当という形が海外ではやったきっかけは、やっぱりアニメだという話も聞いています。

松村沙友理

アニメの力はすごいですね…!

高橋洋子

はい。私はいつも「アニソンは国境をこえる最強のパスポート」と言わせてもらっています。松村さんにもぜひ今日のステージを見ていただいて、日本のアニメやアニソンが海外の人々の心をつかんで離さない様子を、ぜひ広く伝えてほしいと思います。



フランス人も熱狂。YOSHIKI登場


ステージまではまだ時間がある。
松村はさらに会場を見て回ることにした。

高橋が話していた通り、アニメもひとつのきっかけとなって、日本の生活スタイル、歴史的な文化も認知されるようになっている。

お弁当箱の販売ブースだけではない。茶わんやお箸、日本刀のレプリカなどを売るブース。日本各地のお祭りを紹介するブース。文化を伝える出展も多岐にわたる。

「あっ!おにぎり!」。松村が指さす先では、おにぎりの販売ブースに長蛇の列ができていた。
フランス人に勧められる。「これ、おいしいから」。せっかくだからと並んで、購入してみた。

ツナのおにぎり。確かにおいしかった。
そして、フランス人がおにぎりのおいしさを伝えていることが、無性にうれしかった。

任天堂、スクウェア・エニックスといった日本のゲームメーカーのブースも、大いににぎわっていた。
前日にはあのYOSHIKIも会場を訪れ、パフォーマンスを行っていた。終了後には興奮したファンがステージに殺到したが、笑顔でハイタッチして回った。

JAPAN EXPO2019「YOSHIKI:SHOW AND Q/A」より

目を輝かせて、会場を巡るうちに、エヴァンゲリオンイベントの刻限が迫ってきた。
「行かなきゃ」。松村は速足で、ステージへと向かった。



最新作の舞台はなんと…


ステージの外にできた列は、あっという間に数千人のボリュームに達した。
開場時間になると、一斉に客席へとなだれ込む。松村も何とか、席を確保した。

やがて、ステージは暗転した。観客が息をのんで見守る壇上で、スポットライトの中に高橋が浮かび上がった。
戦闘シーンでよく使われる音楽「EM20」に歌詞をのせた楽曲「TENSIONS」。そして「残酷な天使のテーゼ」。怒号のような歓声が、ステージを包む。

JAPAN EXPO2019「エヴァンゲリオンステージ」より

スペシャルゲストとして、碇シンジ役の声優・緒方恵美も登場した。
「長年声優をやっていますが、こういうのを運ぶのは初めてです(笑い)」と冗談めかしながら、来年公開の最新作の冒頭シーン映像を日本から持ってきたことを明かす。

さらに、ビデオレターで登場した総監督の庵野秀明が「ずっと描きたかったパリの街を舞台にできてうれしい」とファンに告げる。
最新作の舞台は、パリなのか—。会場がざわついた。



よみがえる街。湧き上がる大歓声


劇場版の過去3作の振り返りが終わった。
真希波・マリ・イラストリアスの歌声と入れ替わりに映し出された、最新作の冒頭映像に、観客がどよめいた。

赤い地表に屹立(きつりつ)していたのは、エッフェル塔。
言うまでもなく、パリのシンボル。本当にフランスが舞台だ。会場が歓喜に包まれる。

JAPAN EXPO2019「エヴァンゲリオンステージ」より

サードインパクトで赤い灰じんと化した街を、「ヴィレ」のメンバーがリブート(再起動)しようとする。
そこに「ネルフ」が攻撃をしかけてくる。受けて立つのは、マリ操るエヴァ8号機。激戦に巻き込まれたエッフェル塔が折れる。

8号機はそのエッフェル塔を抱えて突進。
客席を埋めるフランス人の歓呼の声に押されるようにして、相手に突き刺してとどめを刺した。

難航していたリブート作業も、時間制限ギリギリで完了。
復旧した美しい街並みを守るように、防御施設がせり上がる描写で、再び大歓声が起きる。

JAPAN EXPO2019「エヴァンゲリオンステージ」より

「本当に、サービス、サービスですね!」。松村が興奮気味に言う。

「だから、最新作はここパリで発表、だったんですね。フランスのファンにとっては、こんなにうれしいことはないですよね。本当にすごい…。こんな場に立ち会えて光栄です」



「ああ、私も好きでいていいんだな」

 
JAPAN EXPOの会場を離れ、松村はいったんパリ市内に向かった。

「あれを見たら、やらないわけにはいかないですよね。髪留めのゴムも二つ持ってきました」

髪を二つに結い、真希波・マリ・イラストリアスと同じ型に整える。
そしてブリッジをするように後方に体を反らすと「お願いします」と言う。

その背景にそびえたっていたのは、劇中にも登場したエッフェル塔。
撮った写真をトリミングし、横に回転する。すると先ほど映像で流れた、8号機が塔を抱えて突進したシーンが再現された。

市内を離れる道すがら。満足げに画像を確認しながら、なんとなく語りだす。
「私、昔からコミケに行くのが本当に大好きで」。車窓を眺めながら、小さくうなずく。

「中学、高校のころは大阪の会場によく通っていました。テーマとなる作品ごとのコミケみたいな、小規模のイベントですね。乃木坂に入ってからも、最初のころはひとりでコミケに行き続けていました」

JAPAN EXPOのすし詰めの会場内も、スルスルと人をかき分けながら自在に動く。
それは「場慣れ」しているからに他ならなかった。

「はい。ああいう雰囲気、本当に大好きで。同じ世界観を愛している人が、こんなにもいる。ああ、私も好きでいていいんだなって思う。コスプレもそうです。『あ、このキャラ好きなんだ!分かる分かる!』って。コスプレしている人たちの姿、一日中でも見ていられます」

最新作の冒頭の映像、最高でした!
みんなもそう思うよね?

エッフェル塔を訪れ、マリと8号機をまねた写真を撮ったのも、世界中のファンと「思い」を共有するためだった。



「魂」さえブレなければー


松村はJAPAN EXPOの会場近くのホテルに移動した。
碇シンジ役の声優・緒方恵美が、インタビューの時間を取ってくれた。

松村沙友理

ステージおつかれさまでした!

緒方恵美

到着当日で、打ち合わせの時間もあまりなかったので、進行で精いっぱいでした(笑い)。でもフランスのファンの方も歓迎してくださったし、ステージの様子はネット中継で日本でも見ていただけた。とてもよかったと思います。

松村沙友理

エヴァのステージで明かされていた、新作の結末について庵野監督から相談されたというエピソード、とても驚きました。本当の意味で一緒に作り上げられているのだなと。

緒方恵美

結末という言葉はちょっと違いましたね。正確に言うと途中のシーンの結論です。ストーリーの経緯を2パターンご提示いただいて「どっちならシンジの気持ちに沿いますか」と聞かれました。

松村沙友理

重い決断ですよね。同じ役を演じ続ける上で、心掛けていらっしゃるところはありますか?

緒方恵美

この作品がすごいのは、20年以上も構築が続いているところ。私にとってシンジは、もう自分の一部であり、もうひとつの自分自身の青春の記憶です。とはいえ、私は年齢を重ねて、シンジは14歳のままなので、魂の部分だけはブレないようにと思っています。

JAPAN EXPO2019「エヴァンゲリオンステージ」より

緒方恵美

形だけ14歳をまねるのではなく、過去の自分をまねるのでもない。魂さえキープできれば、お客さまは変わらないと思ってくださる。その上で新しい環境、つまり今の作品の背景の中のシンジを、新鮮な気持ちで模索しようと心掛けています。



守るべきもの。コンテンツの未来のために


松村は、日本文化が海外で愛されている意味について、聞いてみたいと思っていた。
「会場の熱気をお感じになったと思いますが」。そう切り出した。

すると意外にも、緒方は少しだけ厳しい表情になった。
手元の水筒でゆっくりとのどを潤す。しばらく沈黙したあと、言葉を選んで語りだす。

緒方恵美

日本のコンテンツが海外で受け入れられていることは事実で、ありがたいです。ファンには感謝しかないのですが、そこにコンテンツが届くまでのところは、少し整理されないといけないんじゃないかと思うんです。

松村は居住まいを正し、言葉が続くのを待った。

緒方恵美

国によってはいまだに違法アップロードの海賊版として、ファンに届いているところもあります。権利を守る部分で、日本は国がサポートしてくれる部分もあまりない。

松村沙友理

なるほど…。

緒方恵美

世界のファンにコンテンツを届けるという意味では、日本が世界的なプラットフォームを持っていないというところも、問題だと思っています。海外のサービスが買い取ってくれても、向こうの相場で売るから価値が下がってしまったり、権利ごと買い取られるのでヒットしてもリターンがなかったり。

緒方恵美

大事なのはコンテンツの価値が守られること。日本のクリエーターも、正当な見返りがない状況では、いいものを作り続けることはできません。それは世界中のファンにとっても、決して幸せな状況ではない。そこが改善されないうちは、手放しで「日本のコンテンツが愛されてうれしい」と言うことはできません。

ふっと柔和な表情を作って、緒方は松村に語り掛ける。

緒方恵美

エヴァを心から愛してくれて、ありがとうございます。そして、日本のコンテンツの価値を守る形ができるよう、協力していただけたらうれしいです。




真剣に考えます。大好きだから


2日間かけたリポートが終わった。
松村は名残惜しそうに、しばらく会場を眺めていた。

「本当にうれしいことですよね。こんなにたくさんの方が、日本のコンテンツを愛してくださっているなんて」

「日本で人気が出てきた作品が、ほぼリアルタイムでこちらでも人気になっているのも驚きでした。きっと、ずっと飽きずに日本の流行を追い続けてくださっているからこそ、これだけ反応が早いんですよね。同じものを愛する仲間がこんなにいて、私も本当にうれしい」

くるりと振り返る。どこか決然とした表情。
誰ともなく、松村はつぶやく。

「だからこそ、日本のコンテンツの価値が守られていくことについて、私も考えていきたいと思います」

JAPAN EXPO2019「エヴァンゲリオンステージ」より

エヴァンゲリオンシリーズのDVDは、全作品分買いそろえている。

一方で「なぜ、ネットでは最近まで見られなかったんだろう」と不思議に思うこともあった。それだけに、緒方の話は「なるほど」と胸に落ちた。

「アニメが好きだから、余計にお話が胸に刺さりました。私も演じる身ですが、どんな形であれアウトプットが世に出ればいいとしか思ってこなかった。でも、緒方さんは一緒にものを作っているスタッフの皆さん、業界全体のことまで考えていらっしゃった」



梅雨の日本よりも一足早く、パリには夏が訪れていた。
会場を出ると、白い頰にまぶしい日差しが降りそそぐ。青い空を見上げて、松村は言う。

「これからは、私も真剣に考えます。日本のコンテンツが大好きだから」


【取材・撮影・文=塩畑大輔(LINE NEWS編集部)、取材協力=JAPAN EXPO、株式会社カラー、東映株式会社】

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