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「好き」を仕事にする方法、オレが教えます。木梨憲武の"ライフワーク"とは

2018年11月1日 11:00 LINE NEWS編集部

 
「LINE NEWSみたいなところが、ジジイに一体何の用ですか?」

初手で聞き手を困らせて、ニヤリと笑う。
港区、ポニーキャニオン本社。会議室の中央で、木梨憲武が相好を崩す。

56歳。とんねるず結成、芸能界入りから38年がたつ。
それでも今年に入り、ロンドンでの絵画個展の開催、映画「いぬやしき」での主演と、今も活躍の幅を広げ続ける。

「でもね、いぬやしきなんか、演じる上で自分の意思なんかまったく出してないですからね。その日の昼メシ、個々に食べるべきなのか、全員分のロケ弁当が準備されているのか。それを確認するのが主な仕事で」

「最初に台湾で身体のCGデータを取ったんですが、それを基にかなりの部分をCGで作りました。だからおそらく、続編があったとしてもオレなしで作れると思うんですよね。声優として参加する感じでね。ほぼファインディング・ニモと一緒で」

淡々とした語り口で、けむに巻き続ける。
どこまでが冗談で、どこからが真意なのか。

そう訝(いぶか)しがる様子すら楽しむように。
ハイテンポで、言葉を紡ぎだす。



老化メイク、落としても変わらない?


――映画「いぬやしき」は11月にブルーレイ・DVD化もされた。久々に銀幕の仕事を受けた理由は

「理由もなにも、ずっと事務所の電話の前で映画の話を待っていたんですけどね、なかなか来ないから(笑い)。この作品は子どもたちが原作のファンで『パパ、いぬやしきやるの?』って盛り上がっちゃったので」

――立場の弱い父親を演じる上で、心掛けたもの

「娘がいる親としては同じで、うちも『バスタオル、私のを使うな』だし、パパの風呂のあとは苦い顔をしている。それにオレは立ち向かうわけで、そこは犬屋敷家とは違いますけど、気持ちは分かる」

「年齢も主役の設定とほぼ変わらないわけで。老けて見えるために特殊メイクを1時間20分かけて、毎日やっていましたけど、撮影終えてメイクとっても変わらない。これいらねーじゃねえかと(笑い)」

――共演の佐藤健さんとは30歳近い年の差

「どうです?LINE NEWS的に佐藤健は?ウケるでしょ?かっこよすぎてね。プロ意識高いですしね。映画界の情報を網羅していて、その上で自分に求められているものを正確に把握している」

「あの年代のトッププロ。29であれですから、ダンスやっていた若い頃から、表現についていろいろよく考えてきたんだと思いますよ。もう、お見事でした」

――どう打ち解けたのか

「打ち解けてないですよ(笑い)。というのはウソですけど。でも撮影が終わってからですね。それまでは彼は役作りで節制もしていました。一切酒も飲んでなかった」

「一方僕はジジイの役だったので、節制の必要はなかった。深酒はする。メシのことしか考えていない。末期のガンがみつかるっていう役で少し痩せていくべきなのに、むしろ撮影中に若干太ってしまった(笑い)。だから、健くんとはどう会話を合わせたもんかと思いましたね」

若手俳優と共に深夜の「捜索」


――どこで距離が縮まったのか

「打ち上げでワイン飲んだときに初めて、29歳なりのリラックスした佐藤健を見せてくれたんで、ホッとしました。でも、それはもう、お別れのときで(笑い)」

「彼は真のエースクラス。俳優の世界では、彼の方がはるかに場数も踏んでいて、興行の世界のこともよく知っている。本当にいろいろ教えてもらいました」

――若い人と打ち解けるコツは

「どうなんですかね。健くんは『この映画は木梨さんのペースで回るから、僕はものすごく楽でした』と言ってくれましたけど。でもオレがやったことといえば、メシのことを気にするのと、他人に絡みまくることくらいしか思い当たらない(笑い)」

「娘役をやってくれた三吉(彩花)さんなんかは、飲み行きましょうよみたいに言ってきて、2回くらい行きましたね。昔、子役時代にオレとCMで一度共演していたので。意外に体育会系のノリで」

――どこの現場でも若手と打ち解ける

「テレビの収録だと、必ず飲みに行くから。決して反省会ではないですよ。みんなのムードを確認する、みたいな。奥さんいるんだっけ?とか、東京来て何年だっけ?くらいの」

「普段からよくメシに行くのは若手役者チーム。一度彼らが、近くで古田新太くんがいつも飲んでいるらしいから探そう、という話を始めたことがあって。絶対見つけると言うから、オレも仕方なくついて行って」

――若手のノリに付き合うのか

「1時間以上歩いて6、7軒訪ねてようやく古田くんがいた。ビンゴ!って言ってなだれ込んだら、うわ、何すか!って。何すかじゃないよ、こっちは仕方なく乾杯を我慢して歩いて探していたんだと(笑い)。その後、本当においしいお酒を飲めました」

「先日も生田斗真が連絡してきて、どうしたと言ったら、誕生日なんですけど予定がないので祝ってくださいと。うるせーなー(笑い)と言いながら、対応してしまうんですけどね」

あえてコミュニケーションコストをかける


――サラリーマン社会などでは、年長者から若い後輩に声を掛けるのが難しいところもある

「今日はどんな感じ?って言えばいいじゃないですか。『え、何がっすか?』って言われたら『どこか行くのかなー、なんて思っちゃいまして』『席があいてたら、メシ代払いに行っちゃおうかなー』みたいに」

「『あ、そういうの結構です』みたいに言われたら『あーやっぱり!ですよねー』って。そうやってふんわりさせておけば、断りやすいかなというのはありますよね。詰め過ぎないで、断る余地は残しつつも、でも『行こうよ』を待っててくれてるかもしれないから」

――木梨さんはお笑いで頂点を極める一方で、一貫して「好き」を仕事にしてきた。自分が後輩なら、その秘訣(ひけつ)を聞きたい

「長くなりますよ。ワイン4杯目くらいからの話ですね。つまり、そういうことです。ネットが普及している世の中、分からないことがあったらスマホで調べて、すぐ解決する。すごく合理的」

「でもオレは知り合いに聞く。知らない人にも聞く。時間も手間もかかる分、その中で生まれるアイデア、パイプがあるから。ワイン4杯飲んだら、その分何かシナジーが生まれるもんです」

――ハワイを紹介する番組も、絵画の個展もそうして生まれた

「そうですね。で、今度はオレが、好きでやりたいやつと、そういうやつを探してる人とをつなげたい。オレのライフワークというか。とりあえず、ラジオ番組で呼び掛けています」

「若いリスナーに、音楽やりたいの?役者になりたいの?それとも、放送作家?ってね。やりたきゃ集合しようよと。ジャンル別に。で、才能やセンスをはかるような場を作る」

――実際に集まってくるのか

「映画の脚本をやりたいという相談があって、いぬやしきのプロデューサーを紹介したら、別の映画の現場でADをやることになりました。逆に制作会社からは、作家をやりたいやつは何人でも紹介してくださいって言われるし」

「テレビとかファッション、絵画とか、やりたいことをやらせてもらう中で、人脈はできてきた。センスある若いやつと、その人たちとをつなぐのは、まあジジイの仕事かなと。結局、その若者に面倒見てもらうことになったりしてね!」

――今の若者は「何者かになりたい」と強く願っている。木梨さんはYouTubeなどとは違った形で、その思いをすくい上げている

「ラジオで人生相談やってくれ、っていうのは当たり前になっているけど、本当はそれじゃムリだよと言いたいんです。性格も生まれも育ちも知らないから。まずはここに来てみなさい!と」

「焼き肉食べて、飲んで話を聞いてからなら、ようやくなんか相談に乗れるかなと。コミュニケーションコストがかかるのは、今の流行じゃないかもしれないけど、だからこそオレはあえてそうしたい」

今の自分のヒーローはYouTuber


――人生相談も出会いもコミュニケーションも、ITで合理化されている中、"木梨式"は一周回って新しい形かもしれない

「でも、コンテンツは新しい形にすごく興味があるんですよね。今の自分のヒーローはYouTuberで。ジャングルに行って、石でオノを作って、竹で家を建てて生活する人」

「ツリーハウス作って、沢に橋を架ける。ずっと見てられるし、気が付くと気持ちのいい眠りに入っていたりする。そういうの、今はみんな好きなんですよね。再生回数は何百万回だったりするし」

――しっかりと作り込んできたテレビのコンテンツとは違う

「モヤさまくらいですかね、日本で作り込まない風に成立しているテレビ番組。よく眠れるんですよね、あれも(笑い)。オレはオンエアでは見ない。録画して、ひとりで見ないともったいない」

「うちの子ども3人もみんなそう。それぞれひとりで見て、ひとりでニヤニヤしたい。木梨家を束ねられるのはさまぁ~ずだけ。要は、ああいう番組こそが世代を超えて支持されるってことですよね。もちろん、見る人を癒やす2人の人柄あってのことだと思いますけど」

――なぜ、そうしたコンテンツが支持されると思うか

「情報が多すぎて、みんな疲れてるところもあるんですかね。いぬやしきでは、市民が手持ちのスマホ画面を通して、佐藤健くん演じる獅子神に攻撃されるシーンがある。みんなあわててスマホを捨てる」

「あれは象徴的な気もして。そういう気持ち、実はみんなの中に潜んでたりするんじゃないですかね。もちろんスマホは便利で、オレだって手放せない。でも手放せないことに疲れてもいて。だから見ながら眠れるくらいがちょうどいい」

――それを踏まえて、やりたいことは

「せっかくなら、テレビでやれないことをやりたい、ってのはありますね。例えばここから2時間、ずっと麻布十番を歩いてみようとか。どこまでいけるのかな、ってだけ。基本、情報は入れない」

「古田くんを、みんなで飲み屋めぐって探す様子をLINE LIVEでやったら数字とれるかも、とかって考えはもってのほかで。数字ほしさがにじんじゃうから」

「ダイヤモンドヘッドからワイキキまで、ただ歩くとか。おいしいお店の情報なんか入れません。編集しない。ノイズそのままみたいな。そういうのをやってみたいかなというのは、ずっとありますね」



デビュー当初から「あえて作り込み過ぎない芸風」で異彩を放った。

賛否はあったが、タモリなどには「そのままでいい」と背中を押された。
テレビ的なコンテンツ作り全盛の時代を、自然体で飄々(ひょうひょう)と生き抜いてきた。

40年近くがたった。
今は世の中の方が「あえて作り込み過ぎないこと」を求めるようになった。

時代を先取るニューパワー。

木梨憲武56歳。
プロデューサーとして、クリエーターとして、新しい境地を求め続ける。


【取材・文=塩畑大輔(LINE NEWS編集部)、撮影=宮川勝也、ヘアメイク=北一騎、スタイリング=大久保篤志】


お知らせ

「いぬやしき」ブルーレイ・DVD

発売&レンタル中
発売元:フジテレビジョン/販売元:ポニーキャニオン
(C)2018 映画「いぬやしき」製作委員会 (C)奥浩哉/講談社

PARTY LIVE 木梨の会。

11月28日(水)&29日(木) 開場18:15/開演19:00
会場:恵比寿 act*square
お問い合わせ:キョードー東京 0570-550-799

「木梨憲武展 Timing―瞬間の光り―」

公式サイト:http://www.kinashiten.com

詳細はスマートフォンから

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