「放牧はすごく勇気と覚悟のいることだった」いきものがかり独占インタビュー

2019年1月1日 11:00 LINE NEWS編集部

「お久しぶりです!いきものがかりですー!」

2018年12月31日、NHK紅白歌合戦。
はつらつとしたあいさつのあと、聴き慣れた歌声がお茶の間に響く。

水野良樹、吉岡聖恵、山下穂尊。
いきものがかりの3人が、約2年ぶりにステージへ帰ってきた。


ちょうど2年前、2016年12月31日。
同じ紅白のステージで、彼らは大きな桜の木を背に、デビュー曲「SAKURA」を披露した。

この年は、記念すべきデビュー10周年でもあった。

デビューシングルが発売された2006年3月15日、3人はお互いのCDにサインし合った。
吉岡のCDに書かれた水野のサインには「10年後もCDを出しましょう…」と添えられていた。

10年続けることはグループにとって目標であり、合言葉のように3人が言い続けてきたことでもあった。

そして10年後の2016年3月15日、ベストアルバム「超いきものばかり〜てんねん記念メンバーズBESTセレクション〜」を発売。
目標は現実となった。

その後も彼らの地元である神奈川県厚木市、海老名市で野外スタジアム公演を行うなど、精力的に活動した。

10周年を走り終え、年が明けた2017年1月5日。

「それぞれの未来を、もっと広げるために。
3人の物語を、もっと長く、もっと楽しく、続けるために」

彼らは「放牧宣言」と称して、グループとしての活動を休止することを発表した。

放牧から約2年。
何を思い、どんな変化があったのか。

活動再開を告げる「集牧宣言」を経て、紅白でのステージ復帰を直前に控えた12月19日。
都内のスタジオで、3人が語った。


みんな自分のことだけで精いっぱいだった


水野 : デビュー10周年を多くの人に愛される状態で迎えられたというのは、3人にとって良かったし、すごく達成感がありました。

山下 : 1年以上前から10周年に向けて準備していって、地元で大きなライブをやりたいというのも話していましたね。

吉岡 : 「10年やれたらすごいね」って言ってたのが現実になり、区切りになった部分もあって。それが放牧につながっていったのかなとも思います。

水野 : これからも長く続けていくためにはどうすればいいんだろうって。どんなスピード感でどんなものを作っていけばいいかとか、3人はどんな関係性であるべきかとか、いったん見直さないといけないよねっていうのは、デビュー10周年の前くらいから3人の会話では出ていましたね。

山下 : それぞれ考えがあったと思うんです。ちょっと休みたい人もいれば、個人の活動をしたいとか、違うやり方をやってみたいとか。

水野 : 手前みそなんですけど、お互い気を使う性格だから、他のメンバーに迷惑を掛けたくないんですよ。例えば吉岡にどんなにプレッシャーが掛かっていても、それを僕らに言うことはない。「それは私の仕事だから」って。

吉岡 : すごいスピードで、いろいろなことが回っていたので、ひとりひとりがそれぞれの持ち場で踏ん張って、一生懸命やっている感じでしたね。全員が走っていたからこそ、ここまで積み上げてこれた。でも、みんな自分のことだけで精いっぱいだったというか。

水野 : 特に放牧までの後半5年間はいろんなものごとが大きくなって、3人の中に常に緊張感があった。それを一回、解かないとなって。

山下 : それで2015年の後半くらいからかな。休むためにどうしようかっていうのを、1年くらいかけて話していましたね。

水野 : デビュー10周年イヤーをおしまいまで走ろうみたいな思いは、3人ともあったんじゃないですかね。

吉岡 : 年末には紅白に出させてもらうのが決まって、走り切ったぞっていうのは自分たちも感じたかった。あと少しでも周りの人やファンの人たちに納得してもらうような形を探していたのかも知れないですね。

山下 : それで、お正月も落ち着いて、世間が動きだすタイミングが一番いいんじゃないかって話し合った結果、1月5日に発表することになりました。

水野 : ただ、ネガティブな感じで伝えたくないよねっていうのは、ずっと相談していました。不仲なんじゃないかとか、どうしてもいろんな誤解や不安が生まれてしまうものだっていうのも分かっていたので、それをちょっとでも少なくしたい。

山下 : 変にゴシップっぽく出ないようにしたいねって。

吉岡 : じゃあ黙っておこうかって意見もあったんですけど、逆に心配掛けるかなとか。

水野 : そんなときに、吉岡がたまたま「放牧」ってワードを出してきたんです。そこから自分たちなりに、ちゃんとメッセージが伝わるように考えた結果が、ああいう形になったのかな。


放牧後、半年ほど歌うことから離れていた吉岡は、旅行をしたりライブを見に行ったりと、自由気ままに過ごしていた。

その後、音楽活動を再開。
ボーカリストとしての自分と向き合い、カバー曲を集めたソロアルバムをリリースした。

水野はそれまで以上に、音楽漬けの毎日だった。
数々のアーティストに楽曲を提供し、放牧中に作った曲は70〜80曲にも及ぶという。

さらにメディアを通して、さまざまなジャンルの著名人と対談し、視野を広げていった。

アウトドア好きな山下はキャンピングカーを購入し、これまでなかなか行けなかった地域にも足を伸ばした。

一方で舞台の曲を書き下ろしたり、フェスのナビゲーターを務めたりといった音楽活動のほか、エッセイを執筆。
自らの思いを言葉にし、1冊の本にまとめた。

いきものがかりである前に、ひとりの人間だから


水野 : それぞれ枠を設けることなく活動して、お互いに意見することもなかったですね。

山下 : これまでずっと、いきものがかりとして仕事や生活をしてきたのが、一回外れてすごく身軽になった気がしました。

水野 : 10代の多感な頃から、ずっといきものがかりとして生きてきたことは、すごく幸せなことだと言い切れます。でも視野が狭くなっていたり、何かを失っていたりした部分も、少なからずあると思うんです。

水野 : それをいまさら取り戻そうってわけではないんですけど、いきものがかりや自分たち自身と長く楽しく付き合っていくためには、視野を広げることが必要だと思うんですよね。

山下 : それぞれが大きくなると、いきものがかりっていう存在がより強固になる。だからこそ、ひとりでやる仕事もすごく意味があるし、その面白さをすごく見いだせた2年だった気がしています。それはこれからも続けていきたいし。

吉岡 : それぞれの活動は3人とも、集牧してからもやっていけたらいいねって話してるよね。

水野 : いきものがかりである前にひとりの人間だから、その軸の部分を強くしていく意味では、個人での活動を続けることも3人にとって大事なのかなって思っています。


また3人だけの三角形に戻った


デビュー以降、いきものがかりという存在が大きくなっていく中で、3人でゆっくりと話す機会は極端に少なくなっていた。
しかし放牧中は3人だけで会う回数が増え、関係性も少しずつ変化していったという。

水野 : 放牧してからは、よく会ってました。仲良かったよね(笑)。

吉岡 : 恥ずかしい(笑)。

水野 : 僕の作業場に来てもらったりとか、飲みに行ったりとか。3人で飲みに行くことは、ずっとなかったので。

吉岡 : 高校の頃は本当に小さな三角形だけで動いてたけど、この三角形にたくさんの人が入ってきてくれて、大きい丸になっていった。それが今回、3人だけで気軽に集まって、歌ってるときや曲を作ってるときのプレッシャーとかを割りとざっくばらんに話して、心の中のガス抜きする時間を持てたように思います。

吉岡 : それで風通しも良くなって、また3人だけの三角形に戻ったような。

山下 : 高校の頃にやっていたような作戦会議みたいだったよね。

吉岡 : 3人だけでデモテープを録ったりね。1周回っただけなんですけど、すごく心地良い感じがしました。

山下 : だから始め方も3人で決めようって、すごく話しましたね。いきものがかりの作り方というか。

水野 : 始まるって言ったら、事務所がツアー切っちゃうんじゃないかとか。また同じスピードでやるのはつらいよねとか(笑)。

吉岡 : みんな驚くかも知れないですけど、本当に期限も何も決めないで放牧したんですよ。

水野 : ガチで決めてなかったよね(笑)。だから、お互い探り合ってたんじゃないかな。聖恵、歌いたそうになってきたかなとか。いきものがかりに対して、誰がどのくらい前向きなんだろうとか。

吉岡 : しゃべりながら、心の中で「そろそろやれそうかな」「まだかな」ってね(笑)。

水野 : それが2018年に入ったくらいに、そろそろかなって。そこから実際に始まる時期を決めていって。

吉岡 : いくつか記念日があるからね。

水野 : どうやら元号も変わるらしいし(笑)。それでいろいろ計算した結果、結成記念日の11月3日がよろしいんじゃないかって。


放牧したまま活動再開したい


2018年11月2日、いきものがかりは「集牧宣言」と称し、翌11月3日から活動再開することを発表した。
約2年という放牧期間は「ちょうど良かった」と口をそろえる。

水野 : 体力的には、とにかくきつかったけどね(笑)。

吉岡 : めっちゃ仕事受けてたからでしょ(笑)。

水野 : グループの活動も始まって、放牧中にやっていた活動もそれまでと同じ分量でやってるから、さらに忙しくなってる。そろそろ個人放牧したい(笑)。

吉岡 : 知らんがな(笑)。ほっち(山下)は逆に「心はいつでも放牧中」って言ってるもんね。

山下 : うん(笑)。

水野 : 以前、聖恵がポロッと「放牧したまま活動再開したいんだよね」って言ったんだよね。

吉岡 : あー、言ってたね。

水野 : それがすごくいいなって思ったんだよね。緊張感のある状態に戻るだけだと、繰り返しになっちゃうから。ちゃんと楽しく、気持ちが開けている状態で続けていけたらいいなって。次の課題はそこだよね。

吉岡 : 放牧が必要だったってことは、何かに縛られていたってことだからね。でも人間だし、常に心を解放してあげることが、グループにとっても個人にとっても大事なんじゃないかなって。

山下 : 集牧してからファンクラブの人も結構戻ってきてくれたり、予想を超えた反響がありましたね。

水野 : そもそも話題にしてくれていること自体が幸せというか。世の中には新しい曲や素晴らしい新人のアーティストさんがどんどん出てくるから、すぐに忘れ去られてもおかしくない。だから実はすごく勇気と覚悟のいることだったんですよね。


11月3日には、3人そろってラジオ番組に生出演。
ここで新曲「太陽」がオンエアされた。

「少しだけ距離が遠くて 不安にさせてしまっても
君がわたしを照らしてる 太陽みたいに」

「こんなに好きでいてくれる 今言うよアリガトウ」
(「太陽」より)

初めて「いきものがかり」名義で作詞・作曲された楽曲。
後日、この曲を収録したCDがファンクラブ会員にプレゼントされた。

特定の誰かに向けてメッセージを込めたのも、それをファンクラブだけに配布したのも、彼らにとっては異例のことだった。

今までの僕らからすると、びっくりなやり方


水野 : いきなりアルバムを出しちゃおうかとか、いろんなことを考えたんです。でもやっぱり、2年間の活動休止期間にもファンクラブにずっと入ってくれていた方がいたから、まずはそこにあいさつするべきだよねって、3人で一致しました。

吉岡 : それまで、いきものがかりは結構、外へ外へって姿勢で活動してきたから。

水野 : 一方でファンクラブに入ってコアに応援してくださっている人たちに対して、ちょっと冷たくなっているところがあった。だから、その人たちだけに届ける手紙のような新曲があってもいいかもなって。

水野 : そんな曲を作るなら、3人名義で作ろうかとか。今までの僕らからすると、びっくりなやり方でした。

吉岡 : 私が歌詞の種みたいなのを作って、ほっちがそれをまとめてくれて、リーダー(水野)が曲をつけたんです。

山下 : ファンの皆さんに向けたメッセージをストレートに書きました。相手がファンの人だからこそ、素直に書いていいかなって。

吉岡 : リーダーがメロディをつける時点で、3人のコーラスを入れてくれたんですよ。

水野 : 3人でやってるってことがちゃんと伝わった方がいいと思って、最初から男子が参加する想定でメロディを作っていったんです。3人で歌ってる方が、今回の楽曲が伝えようとしていることとしては正しいのかなって。

新曲「WE DO」レコーディングの様子(いきものがかり提供)


もっとワケ分からないグループにしたい


これまで、より多くの人に届けるため、"自分たちの存在"を感じさせないよう心掛けながら、楽曲を制作してきた。
しかし楽曲の方向性や、グループのスタンスは、より自由になってきている。

それは2019年1月1日に発表されたばかりの新曲「WE DO」にも垣間見える。

水野 : 縛られない感じになってきている気はしますね。放牧前までの10年間に出来上がったイメージや、これまでやってきたことは、何も間違ってなかったと胸を張って言えるんです。でも、それを完成形と言ってしまうと、そんなつまらない話はない。

水野 : だからそれをちょっと崩して、そこに自分たちの考えを入れてみるっていう作り方も全然ありかなって。

吉岡 : 「WE DO」は外向きでありながらも、自分たちの気持ちやテンションがちゃんと入っているのが面白い。リスナーも主役になれるけど、「いきものがかり参上」みたいにも聴こえる曲だと思うんですよ。

水野 : 自分たちの状況を曲に重ね合わせることは、かなり勇気を持って、ちゃんと考えた上でじゃないとできなかった。それを今は、自然と考えずにやれているんです。

水野 : 個人的には、もっとワケ分からないグループにしたいですね。いきものがかりってこうだよねとか、エンタメってこういうもんだよねとか、思った瞬間につまらなくなっちゃう。

吉岡 : それを、ぶち壊しにいくかってね。

水野 : 音楽的な面でも、まだやってないタイプの曲は山ほどあるから、これからだいぶ変わっていくかも知れないですよ。それくらいじゃないと、ワクワクしないと思うんです。

山下 : 自分たちなりの自由というか、わがままを発揮していってもいいのかなっていう段階なのかも知れないですね。

水野 : 曲もたくさんできてはいるけど、出すことがルーティーンになってもつまらないから、ちゃんと納得できる形で出すっていうのを繰り返していくんじゃないかな。一球一球を大事に。

山下 : まだ具体的にアルバムの構想はないですけど、これが積み重なっていくと、結果的にアルバムになるのかな。

水野 : …そもそもアルバムって出す(笑)?

吉岡 : ああ(笑)。

山下 : シングルは出すの(笑)?

吉岡 : 結構そういう細かいところから、なんでも話し合って決めているんですよね。今は。

水野 : 世の中変わってきているから、それにフィットしながら、形にこだわらず、ちゃんと皆さんに作品を聴いていただけるようにしたいなと思っていますね。


いきものがかりは、どんなグループであるべきか


放牧中には、自分たちの「何が核だと思うか」といったことも、3人だけで話し合ったという。
その中で導き出された結論とは。

吉岡 : 3人とも、まずは健康でいることが大事(笑)。

水野 : それが100点満点だよね(笑)。でもこのグループがどんなものであるべきかっていう本質みたいなところは、結局、話し合っても分からないんですよね。答えを出しがちだけど、簡単に答えが出るものではないっていうのが、分かっただけでも大きいというか。

山下 : 受け入れられたいというのは、ずっと変わってないですけどね。

吉岡 : そこに戻っちゃうよね。

水野 : ずっと愛されたい願望はある。

吉岡 : もちろん自分たちも楽しみたいけど、結局は振り向いてくれたら超うれしい。そこは3人とも共通しているから、一緒にやってて面白いし、結びつきが強くなる。

水野 : だから「他の人がどう思うか関係ない」とまでは言えない(笑)。

吉岡 : 「大きい路上ライブ」をやってる感覚っていうのは、ずっと変わってないところなのかな。やっぱり、立ち止まってくれたらうれしいんだよね。

水野 : 誰も聴かなくなっても続けられるかって言ったら、そうは思わないというか。聴いてほしいっていう気持ちから始まっているのは間違いない。だから、リスナーの人がいて初めて成立するグループなんです。


インタビューから12日後の12月31日。
いきものがかりは、通算10回目となる紅白歌合戦のステージに立っていた。

「じょいふる」の演奏が終わる。
吉岡は右手を突き上げ、目をつむり、天を仰ぐ。

3人はその場で一礼し、顔を上げる。
その表情には、一点の曇りもない。

長らく背負っていたものを一度下ろして、再び彼らは歩き始めた。
これからまた、日本のポップスシーンのど真ん中で、新たな足跡を残していく。


【取材・文 : 前田将博(LINE NEWS編集部)、写真・動画編集 : 二宮ユーキ、動画撮影 : 水島英樹】

いきものがかり お知らせ

集牧(活動再開)後、初の配信シングル「WE DO」を2019年1月1日にリリース!
1月1日からオンエアされ、いきものがかりも出演しているソフトバンク新CMシリーズ第一弾「しばられるな」篇のために書き下ろされた、力強いメッセージをはらんだロックチューン!

いきものがかりの最新情報は「いきものがかりオフィシャルサイト」まで。
https://ikimonogakari.com/
いきものがかりの公式LINEアカウントでは、最新情報を配信中です。ぜひ、友達登録してくださいね。
https://line.me/ti/p/%40ikimonogakari

詳細はスマートフォンから

続きはアプリで、快適に LINENEWS