3月7日。
都内のクラブで行われたゲーム「デビル メイ クライ 5」発売前夜イベント。
同作の日本語声優を担当する2人が壇上に現れると、ひときわ大きな歓声が送られる。
1人は、森川智之。
トム・クルーズやキアヌ・リーブスの吹き替えの他、アニメやゲームでも多くの作品で声優を務め、30年以上にわたり業界をけん引する。
そして石川界人。
まだ25歳ながら、「ハイキュー!!」影山飛雄や「僕のヒーローアカデミア」飯田天哉など、人気作で主役級の役を演じている。
司会者は最後に、もう1人の人物を呼び込む。
勢いよくステージに登場すると、悲鳴のような歓声が会場に響く。
HYDE。
L'Arc~en~Cielのボーカルを務める一方、ソロ名義でも活動。
同作ではイメージソングを手がける。
イベント終了後、控室横のソファ。
ステージから戻った3人の表情が緩む。
フロアにはまだ観客が残り、DJが流す音楽に体を預けている。
その熱気に誘われるように、3人は再び話に花を咲かせる。
森川智之
僕は今、こうしてHYDEさんと同じ空間にいること自体が、すごくうれしいですね。HYDEさんと同世代なので、時を経て同じ作品に携われているのは光栄です。
石川界人
僕が生まれた次の年に、L'Arc~en~Cielさんがメジャーデビューしたんです。周りにもHYDEさんを好きな人がたくさんいますし、今回の共演は僕自身も「まさか!」って驚いたので、舞台上で改めて感動していました。
HYDE
僕もこの作品に携われて、ものすごくうれしかったですね。このシリーズが大好き過ぎるので、僕でいいのかなって気持ちもありました。選んでもらえて良かったです。
「声が出ない」ときの怖さ
ボーカリストと声優は、ともに「声」を使うという共通点がある。
体調が表現に直結するため、他の職業以上に「敏感になる」という。
HYDE
風邪をひくと、歌は一気に鼻声になったり、ガラガラになったりするので、損だなって思いますね。ギターやドラムとかは、別に演奏できるじゃないですか(笑)。
森川智之
ボーカリストは、裸一貫ですもんね。僕は結構、風邪をひきやすいタイプだったんですけど、この仕事をするようになってから敏感になりましたね。喉の奥の方がちょっと荒れてるなって思ったら、早めにケアするようにしています。
HYDE
声が出ないときは、寿命が縮まりますよね。
森川智之
HYDEさんの場合は、何万人っていうオーディエンスがいますしね。
HYDE
この間の東京ドーム公演2日目の朝、起きたら声が出なかったんです。5万人の前でどうすんのって、めちゃくちゃ怖かったですね。穴があったら入りたかった。
石川界人
そういうときは、どう対処されるんですか?
HYDE
いろんな病院に行って、何とか声が出ましたね。でも、もうあんな目には遭いたくないです(苦笑)。
森川智之
そもそもHYDEさんのように、マイク1本でパフォーマンスしないといけない大変さって、尋常じゃないと思うんですよ。メンタルとかって、どういうふうに鍛えたりしてるんですか?
HYDE
何もないですね。適当です(笑)。
森川智之
滝に打たれるとか?
HYDE
しないしない(笑)。
石川界人
あははは(笑)。
HYDE
まあでも、いつもお酒は飲んでますけどね。テキーラ以外を(笑)。テキーラは飲むと、次の日に喉の調子が悪くなるので。
森川智之
お酒が結構、大事なんですかね。
HYDE
そうそう。1日の中でちゃんとリセットするのが、メンタル的に重要なのかなって思いますね。それができたら、休みは要らないです。
音楽も、アニメを見習いたい
3人とも以前から、それぞれの立場でアニメやゲームに接してきた。
HYDEは1994年にバンドでメジャーデビューして以降、これまで多くの主題歌を手がけている。
森川もここ30年ほどで、数々の作品に出演。
一方の石川は、ファンとしてそれらの作品を愛してきた。
その間、アニメを取り巻く状況は大きく変わった。
日本ではより一般化し、世界にも認められる文化となった。
森川智之
声優としてデビューして今年で32年目なんですけど、やっぱり最初は声優って言うと「どこのスーパーですか?」って言われることもありました。仕事自体がマイナーというか、なかなか理解されない部分もありましたね。
石川界人
僕が声優を目指し始めた頃も、まだ世間はアニメに対して偏見もあったと思います。
石川界人
でも声優になる直前くらいから、世間の風当たりみたいなものもだいぶ変わってきました。
森川智之
そうだよね。
石川界人
僕らが、胸を張って「声優になりたい」って、やっと言えるようになった最初の世代だと思います。
HYDE
日本人はアニメが大好きなんですよね。アニメはその中で、他の影響をあまり受けずに、独特の進化を遂げてきた。それが今は、世界中で愛されるようになったんですよね。だから僕は、れっきとした芸術だと思うし、誇るべきことだと思います。
森川智之
うれしいですね。本当に。今はアニメや漫画を楽しんで育った世代が中心になってきていると思うので、そこの世代が日本をリードしている部分もあるのかなって思いますね。だからこそ、世界に認められてきているのかなって。
HYDE
だから僕らとしては、次にやらないといけないのは音楽ですよね。音楽の輸出はまだまだうまくいってないので、アニメに続いていけるような形にしたいなと。見習いたいなと思っています。
石川界人
アニメやゲームも、もっともっと可能性はあると思うんです。HYDEさんたちと手を取り合って、音楽とも親和性を高めながら、もっと上の段階に持っていけるんじゃないかって。僕らの世代も、いろいろと考えながら動かないといけないなと思います。
音楽活動を続ける中でHYDEは、タイアップに対する考え方も変わっていったという。
HYDE
ラルクはアニメタイアップが多くて、正直言うと、昔はもっと他のタイアップもやりたいと思っていたんですよ。他のバンドを見て「化粧品いいな」とか。
森川智之
そうだったんですね。
HYDE
でも、僕らが日本人で初めて、マディソン・スクエア・ガーデンでワンマンライブができたんですけど、あれはアニメのおかげですよ。
HYDE
当時は気づかなかったけど、アニメの主題歌をやれたから、あのステージに立てたんですよね。だから、今となっては光栄ですよね。時代が変わったんだよなって思います。
トップに立ち続けるために必要なこと
HYDEと森川は、長らくそれぞれの業界の第一線で活躍し続けている。
そんな2人が表現の仕事をする上で、心がけていることがある。
森川智之
僕は、どんな仕事でも引き受けちゃうところがありますね。あとで自分が大変になっちゃうんだけど、それが自分の中のモチベーションになる。忙しくするのが好きなんですよ。
HYDE
僕も演出とかデザインとか、携わるもの全てが気になるので、時間はいくらあっても足りないですね。
森川智之
あとは、何にでも好奇心を持つといいのかなって思いますね。
HYDE
情報を仕入れるのはすごく重要だと思います。それをやらないと井の中の蛙になっちゃって、世の中とずれていくんですよね。
HYDE
そうすると、どんなに曲を一生懸命作っても、どんどん採用されなくなっていく。そういうセンサーっていうのは、やっぱり生き残るのに大事なんじゃないですかね。
石川は深くうなずきながら、2人の話に耳を傾ける。
彼もすでに、声優界の未来を担う存在となりつつある。
石川界人
僕もそういうアンテナは、大事にしないといけないですね。
HYDE
若いから、それが自然とできてるんですよ。ただ普通だったら、そこからどんどん感度が鈍くなっていくんですよね。
石川界人
今はこういうものが伸びているんだなって、積極的に感じ取っていかないとダメですね。
HYDE
楽しみながらね。今、何がはやってるのかなとか、これは面白そうだなって。そうやってセンスや感度を磨くことが、芸術家には必要だなって思いますね。
【取材・文 : 前田将博(LINE NEWS編集部) 写真 : メトロ。 写真アシスタント : 紬 動画 : 水島英樹】
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http://madqualia.hyde.com/
「HYDE」最新情報に関してはオフィシャルサイトまで
https://www.hyde.com/
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