cat_12_issue_premium-fujirock18 @linenews_0_9302561a8a69_奥田民生×シャムキャッツ夏目 スペシャル対談 "変わりゆくフェス文化" 9302561a8a69 0

奥田民生×シャムキャッツ夏目 スペシャル対談 "変わりゆくフェス文化"

2018年7月19日 11:00 LINE NEWS編集部

「僕、初めて買ったCDが奥田民生さんなんですよね」

初夏の日差しが窓から差し込む木曜日。
シャムキャッツの夏目知幸がフラリと1人で入ってくる。

ソファに掛け、そわそわと手を泳がせながら"憧れの人"を待つ夏目。すると扉がガチャリと開く。

── そう、奥田民生だ。
隣に腰を下ろす奥田を見つめ、目を輝かせながら夏目は語る。

「小学4〜5年生くらいの頃かな、お小遣いで初めて買おうと思ったCDが『股旅』だったんです」

20年前に発売されたアルバムの名を聞き、奥田は「へへっ」と照れくさそうに笑う。


"奥田民生が好き"と気づいた少年時代──

2009年にデビューし、若い世代を中心に人気を集めるバンド・シャムキャッツ。ボーカルの夏目が育った家庭では、家や車で常にヒットソングがかかっていたという。

夏目は子ども時代を思い浮かべるように目を細め、懐かしそうに語る。

夏目知幸

流れている曲について「これ誰?」って聞くたびに民生さんの曲っていうのが続いて、少年心に「あ、僕は奥田民生っていう人が好きなんだな」っていうのが蓄積されていったんです。



── 2人が初めて会ったのは2016年。奥田がくるり・岸田繁、元SAKEROCK・伊藤大地と共に結成したバンド"サンフジンズ"のツアーで、シャムキャッツと共演した時だ。

夏目は頭をかきながら「今もなんですけど、緊張しました」と振り返る。

夏目知幸

テレビやライブでずっと眺めていた人のリハーサルを見て、舞台袖でライブを見て…声やギターの音がよりダイレクトに届くんですよ。パンチ力というか、馬力というか、そういうものが「強いな」って感じました。

奥田民生

僕はもともとシャムキャッツのことを知らなかったんですよ。岸田が対バン相手として探してきてくれて、存在を知ったんです。若いし、僕らみたいな年の離れている人たちとの対バンって嫌だろうな、やりづらいだろうな、って思ってましたね(笑)。

夏目知幸

いやいやいや、全然そんなことないですよ!


"奥田節"のおかげか、空気がふわりと和らぐ。一気にリラックスした様子で、思い出話に花が咲く。


昔はとにかく目立たないといけなくて──

ユニコーンとシャムキャッツは今年、フジロックに初出演する。1997年のフジロック始動よりも前から、長らく音楽活動を続けている奥田に、過去の「フェス文化」について聞く。

奥田民生

昔からロックフェスはあったんですよ。僕らの世代より前ぐらいかなあ。ただ、その頃は「フェス」ではなく「イベント」って呼んでいて。中身は一緒なんですけどね。

夏目知幸

へえ〜。僕は物心ついた時にはフジロックが始まっていて。YouTubeにあがっている昔の映像などを見て、フェスっぽいイベントがあったんだなっていうのをぼんやり知ってたくらいでした。

奥田民生

ちょうどバンドブームで、イベントがわーっと増えたんです。昔はすっごいたくさんバンドがいたから、とにかく目立たないといけない時代で。フェスは宣伝の場というか…



── そう言って奥田は腕を組み、目を伏せながら続ける。

奥田民生

常に出まくらないといけなかったんですよ。逆に出てないってだけで「落ちたか」みたいなムードにもなりがちで。今でもフェスに出ないと忘れられそうな気がするんですよね。

奥田民生

それに、フェスだと自分たちのことを知らない、通りすがりの人たちもライブを見てくれるので、そういう出会いが大事かなと。

夏目知幸

うんうん。

奥田民生

俺らの世代はもろにそういう考えを持ってると思うんですよね。もうちょっと上の世代の人たちはそんなんじゃないかもしれないし、若い人は若い人で別の考え方もあるかと思うんですけど。



若手にとって「紅白」みたいな特別感──

これまで小中規模のフェスへの出演が多かったシャムキャッツ。フジロックという大規模なステージへの出演に何を思うのか。

夏目知幸

僕ら世代にとってのフジロックは、出ると親も「すげーじゃん」って言ってくれる感じというか。「紅白」みたいな特別感があるんですよね。

夏目知幸

オーディションを勝ち抜いたバンドがフジに出られる「ROOKIE A GO-GO」っていう若手の登竜門的なステージがあって、やっぱりバンドやり始めた頃はみんなそこを目指していて。

奥田民生

なるほど。

夏目知幸

逆に、規模が小さめのフェスも面白いんですよ。香川のちっちゃい島でやるフェスに、トリで出させてもらったことがあるんですけど、フェリーの出港時間が近づくにつれて、次第に人が減っていって。

奥田民生

あはは(笑)。

夏目知幸

最後には島の人しかいなくなって、面白かったですね。地域密着型みたいな…そのフェスでは食券がもらえるんですけど、メニューは自動的にうどんって決まってたり。

夏目知幸

島にあるロッジに泊まるっていうのもセットになってて、夜はスーパーで買い物して自炊して寝るっていう。フェスによっても全然違って、かなり楽しいですね。

奥田民生

俺もギター1本の弾き語りで呼ばれたりして、石垣島のフェスとかに出ますけど、そういう時は気楽でいいですね。リハもいらないし、曲順も考えてないくらい。

夏目知幸

ええ〜!すごい!

奥田民生

砂浜が客席っていうか、海に面してステージがあるので、音楽を聴きながら泳いだりして。そういう特徴があるフェスは面白いですよね。

奥田民生

海外のフェスとかも、日本と雰囲気が違いますよね。前にシカゴ・ブルース・フェスティバルを見た時、お客さんが「ここのドラムはあいつがやってるのか」みたいに、ボーカル以外も見ていて。

夏目知幸

へえ〜。

奥田民生

ギターのいちプレイ、ドラムのいちプレイに沸く!みたいなのは、日本とはちょっと雰囲気が違うなと思いましたね。



やっぱり日本人が頑張らないとね──

フジロックをきっかけとして、変わった部分はあるのだろうか。過去と現在の「フェス文化」を比較してもらう。

奥田民生

フジロックが始まった時、海外アーティストを呼んで一緒にやるっていうのは新しかったなあ。当時は洋楽ファンと邦楽ファンが、ちょっと分かれていた時代だったんですよね。

奥田民生

今でも分かれている部分はあると思うけど、当時は"フジロックのお客さん=洋楽を聴きに行くんだ"みたいな空気があって。それが最近になって、だんだんまざってきたのかなというイメージはあります。

夏目知幸

本当にそう思います。僕、台湾のフェスに出たり、アジアツアーをまわったりした時に思ったんですけど、地元のバンドが元気な土地って、その国や地域も盛り上がってるんですよね。

夏目知幸

だから、やっぱりフジロックでも地元のバンドや日本のアーティストのライブが盛り上がることで、海外から来たアーティストも「日本いいじゃん」ってなる気がします。

奥田民生

それはあるよね。"日本にはこんな音楽がある"みたいなことを海外のアーティストに知ってもらえると思うし。ヘッドライナーは洋楽だとしても、やっぱり日本人が頑張らないとね。

夏目知幸

海外といえば、中国とかって超フェスバブルらしくって。聞いた話だとあっちでは9月か10月頃まで月イチでROCK IN JAPAN FESTIVALぐらいの規模のフェスがあるんですって。

奥田民生

へー!フェスにしても単独にしても、アジアでライブって、考えたこともなかったな。

夏目知幸

ユニコーンさんってそういう、どこへライブしに「行く」「行かない」みたいなの、みなさんで話して決めてるんですか?

奥田民生

一応みんなで決めるよ。昔はそういう話って出なかったけど、今だったら誰かがアジアに行こうって言うのかな…まあ多数決で決まると思う。

夏目知幸

多数決なんですね。



「席を陣取って」みたいな人は減った──

大型フェスの開催が定番化してきたことにより、音楽ファンにも変化はみられるのだろうか。ステージから見る景色とは。

奥田民生

席を陣取って"目当てのアーティストしか見ない"みたいな人が昔より減ってきた気がしますね。全アーティストのライブを楽しむお客さんが増えて。「フェス自体が好き」って人が多くなったのかな。

夏目知幸

特にフジロックはそうですよね。大学生の頃、お客さんとして初めて見に行った時はびっくりしました。本当にフェスティバルというか。

夏目知幸

どこでお酒飲んでもいいし、寝ながら聴いてもいいし、前のめりに「見よう!」っていうスタイルじゃなくても見れるっていう。

奥田民生

他のフェスと雰囲気が違うのは、場所もあるのかな。

夏目知幸

そうですね。正直、大学生がフジロックに行くってめちゃくちゃハードル高くて。3〜4カ月頑張ってバイトして、フジロックのために10万円くらいお金ためないといけないんですよね。

奥田民生

そっか、大変だ。

夏目知幸

だからまあ、気合が入ってますよね。10万円分楽しんで、バイト代を取り返さないといけないんで。

奥田民生

あはは(笑)。合宿や旅行みたいなもんですよね。


ユニコーンは小走りしないと(笑)──

ユニコーンとしてはフジロック初出演だが、ソロでは何度も出演している奥田。今回、バンドで出演することになったのは、なにか理由があってのことなのか?そう尋ねると奥田はあっけらかんと答える。

奥田民生

今回なぜユニコーンなのかは、僕も知らないですね。誘われたのか、バンド側の誰かがプレゼンしたのか…。正直、出るモチベーションなどもソロと変わらないです。曲が違うだけで。

夏目知幸

あっはっは(笑)。

奥田民生

「この年はユニコーンで動くから、急にここでソロをやれって言われても難しい」とか、「ソロのツアーをやってる時は、急に5人集まるのめんどくせえな」とか、そういう都合はあるんですよ。

夏目知幸

うんうん。

奥田民生

だけど今年は俺、ソロツアーをやってるのになぜかフジロックはユニコーンで。混在してるからちょっとややこしいんですよね。

奥田民生

個人的にはソロよりちょい楽なんですよ、分散されるから。ユニコーンだと、ちょっとだけハンドマイクで小走りぐらいはしないといけないんだけど(笑)。

夏目知幸

たしかに小走りしてるイメージありますね(笑)。



初のフジロック、どんなステージに──

いよいよ来週開催となるフジロック。ユニコーンとシャムキャッツは、どんなステージを企画しているのか。

夏目知幸

僕らは朝イチなんで、いい朝にできたらなって思ってます。ただ、「いえーい!!」って盛り上げるようなバンドでもないんで「どうしようかなぁ〜」って。

夏目知幸

「自分たちらしい朝イチってどういう感じかな?」というのを考えていて。とにかく、初めてなので、フレッシュにやりたいですね。

奥田民生

ユニコーンはね、いつも通りにやるだけでしょうね。空気が良くなればいいかなと。俺らの次にステージに立つ人につなげられるように、手を抜かずに頑張ろうと思います。

そう言って奥田は笑う。つられて夏目も「ふふっ」と顔をほころばす。

すっかり打ち解けた様子の2人は、取材後も音楽談議が止まらない。たばこをくわえ語り合う姿を眺め、フジロックへの期待は膨らむばかりだ。

(取材・文:奥村小雪、撮影:春田周平、動画:森下大、編集:LINE NEWS編集部)


お知らせ

●FUJI ROCK FESTIVAL '18からのお知らせ
今年はユニコーン、シャムキャッツのほか、ボブ・ディランやN.E.R.D、ケンドリック・ラマーなど豪華アーティストが出演。苗場開催20周年を記念して、スペシャル企画も。
7月27日(金) 28日(土) 29日(日) 新潟県湯沢町 苗場スキー場にて開催。
チケット発売中。詳細は公式サイトにて。

●奥田民生さんからのお知らせ
53歳のバースデー公演でもある「MTRY TOUR 2018」川崎公演のライブ映像をAmazon Prime Videoで独占配信中。10月には、15年ぶりとなる日本武道館2days公演が開催されます。また、公式YouTubeチャンネルで公開中のプロジェクト"カンタンカンタビレ"で誕生した曲も配信中。ポップなデザインのオリジナルモデルラジカセも予約を受け付けています。詳細は公式サイトにて。

●シャムキャッツさんからのお知らせ
ニューシングル「カリフラワー」販売中。Spotify、Apple Music、iTunesでも配信しています。9月には全国5都市で2マンツアーを敢行。また、台湾のシティポップバンド、雀斑 Frecklesとの2マンライブを8月24日に京都で開催します。詳細は公式サイトにて。

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