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BACK DROP BOMB・Jinは、なぜアイドルをプロデュースするのか?

2018年6月21日 11:00 LINE NEWS編集部

5月24日夜、新宿の地下にある老舗ライブハウス・ANTIKNOCKのPA席に、真剣な表情でステージを見つめる男の姿があった。ロックバンドBACK DROP BOMBのギタリスト・Jin Tanakaだ。


BACK DROP BOMBはもちろん、BRAHMANが結成直後にライブを行うなど、パンク・ハードコアの聖地としても知られる同会場。しかしこの日、Jinの視線の先、ステージの中心にいたのは、まだあどけない表情を見せるアイドルの姿だったーー。

そのアイドルとは、ほのか(19)、しなもん(15)による女性2人組「みんなのこどもちゃん」。Jinは彼女たちの全楽曲の作曲・編曲のほか、サウンドプロデューサーを務めている。

ミクスチャーロックの象徴がアイドルプロデュース


1994年に結成されたBACK DROP BOMBは、ハードコアサウンドにヒップホップ的なアプローチを取り入れるなど、多彩な要素を融合した音楽性で注目を集め、いわゆる「ミクスチャーロック」の象徴的な存在となった。

後にDragon Ash、マキシマム ザ ホルモン、RIZEなどの音楽も、たびたびミクスチャーと称されるようになった。そのシーンのパイオニア的存在でありながら、Jinはそう呼称されることに「昔からあまりピンとこなかった」という。

「当時は自分たちみたいなバンドはあまりいなかった。ちょっと聴いただけのヒップホップを混ぜ込んでいるようなバンドはいたけど、うまくできている人はいない。ただ、それをミクスチャーっていうと、なんとなく軽く聞こえちゃうんですよね。いいとこ取りというか。いろんな音楽をやってはいるけど、ハードコアと呼ばれる方がしっくりくる」

「くくりにされるのはすごく嫌だった」


1998年にはHi-STANDARDを中心に企画されたロックフェス「AIR JAM '98」に出演。2年後に千葉マリンスタジアム(現ZOZOマリンスタジアム)で行われた「AIR JAM 2000」には彼らのほかにBRAHMAN、THE MAD CAPSULE MARKETS、bloodthirsty butchersといったそうそうたるバンドがそろい、日本の音楽シーンに大きなインパクトを与えた。

当時、このフェスに出演したバンドがひとつのシーンのように語られることもあった。Jinは「バンドはどれもかっこいいし、すごいなと思っていた」と前置きした上で、「AIR JAMってくくりにされるのはすごく嫌だった。(音楽的には)違うのになって」と振り返る。なにかにカテゴライズされること自体、彼には違和感があったのだ。


2006年ごろよりメンバーの個人活動も活発になった。バンドでほとんどの楽曲を制作していたJinは、益若つばさの歌手活動名義「Milky Bunny」などほかのアーティストへの楽曲提供やプロデュースも行うようになった。

関わるアーティストはすべて、クライアントからのオファーを受けて手がけるようになった。レコーディングを少し手伝うこともあったが、基本的には与えられた仕事にプロとして応える「レコード会社的な仕事」だった。


みんなのこどもちゃんも、最初はそのなかのひとつだったが、次第にアーティストとプロデューサーという関係以上に踏み込んで関わるようになっていった。現在ではレコーディングはもちろん、ワンマンライブなどではPAを担当し、撮影に同行することもある。

「運転もするし、PV撮影のときはタオルを持って横で待機していたり。こういう感じははじめてですね。気がついたら、すごくどっぷりやっているっていう。踏み込まざるを得ないというか、ぼくがハマっていった。ハメられたというか(笑)」

「ひきこもり」から「アイドル」に


みんなのこどもちゃんは「生きにくい今を生きる子供たちの心の叫び」をコンセプトに、2016年より活動開始。ライブでは文字通り"心の壁"を背負ってパフォーマンスしている。ほのかとしなもんは小学校の頃から学校には行っておらず、結成当時は、ひきこもりだったという。

ほのか「本当にわたしが病んでて、『死にたい』ってツイッターにしょっちゅう書いて、運営の人とかに怒られたりしてたんですよ。2人とも学校に行ってなかったしね。キャラとかコンセプトというより、そのまんまだった」

Jin「それがおもしろいなって思いますね。自然体。普通少しは作るじゃないですか」


最新アルバム「壁のない世界」ではしなもんも歌詞を書いているが、それまではほのかが全曲の作詞を担当していた。以前からつけていた日記をもとに書いた歌詞。心の叫びがつづられた生々しい言葉のなかに、それでも生きようとする強い思いも垣間見える。

ほのかは「文章を書きたいんです。でも書く場所がほかにない。それを誰かに見せたいってだけなので、自己満です」と語るが、Jinは「すごくおもしろい歌詞」と評価する。

「いまはぶっちゃけないと誰にも響かない」


「ぼくはこれまで曲を作るときに、歌詞はどうでもいいとずっと思っていたんですよ。メロディーも音楽として捉えていたので。でも、ほのかの歌詞はおもしろいなって気づいて。やっぱり、うそがないのがいいですね。自分の本当の言葉というか、体験を歌っているので。90年代のバンドとかは、インタビューでも多くを語らないことがかっこいいみたいな風潮があった。でもいまは、ぶっちゃけないと誰にも響かないと思うんですよ」

「『起きたら死んでたい』って曲のなかに〈お星さまみんなキラキラキラ〉って歌詞があるんですけど、普通は〈きれいだな〉って続くと思うんです。でも〈鬱陶しいな〉って書いてて。そういうおもしろい表現がいくつもある。しかも暗いことを歌っているのに、メロディーに乗せたときにポップになる。自分みたいな40過ぎたおっさんにも、がんがん入ってくるというか。19歳の女の子が作った歌詞に、『おれもわかるわ』って。たぶん、2人のパーソナルがポップなんですよ」


楽曲はBACK DROP BOMBにも通じるラウドなサウンドが基調だが、アイドルとしては異質だ。

「ぶっちゃけバンドだろうがアイドルだろうが、作る曲はフラットなので。ほのかの歌詞と、ぼくから見た2人の印象を1曲に仕上げたら、ああいう感じになった。あとはBACK DROP BOMBではやれないような、ベタな曲とかもやるようにしてる」

「アイドルはフォーマットが広い」


ミクスチャー・ハードコアシーンでその地位を確立し、現在も現役で活動を続けるBACK DROP BOMB。20年以上、ロックバンドで活動してきたJinから見ても、アイドルならではの魅力があるという。

「とにかくなんでもありじゃないですか。例えば彼女たちは、壁を背負って街中を歩き回ったり、いきなりライブをはじめたりするんですよ。それってなかなか、ロックバンドっていう枠組みではできないんです。でもアイドルはフォーマットが広いというか、もっと振り切ったこともできる。とにかく、思いついたことはなんでもできるんです」

「みんなのこどもちゃんは、ぼくがやりたいことをとにかく全部出せるし、メンバーもそれに応えてくれる。運営さんもめちゃくちゃ動くし。ある意味、バンドをやっているような感覚ですね。動かしている人間の熱量と、応える人の熱量がうまくかみ合っていて、本当にいいチームだなって思います」

「アイドル」というだけで聴かない人にも届けたい


Jin自身も、これまでアイドルをほとんど知らなかった。だからこそ、そういう層にも届けたいと語る。

「ぼくみたいにアイドルを知らないとか、アイドルってだけで聴かないみたいな人がいっぱいいるじゃないですか。その人たちにも、いまの感じを持ったまま届けられるようなものを作りたいなって思ってるんですよ。本当の言葉で歌っているので、彼女たちの同世代にも響くと思いますし」


今年1月26日、みんなのこどもちゃんはロックの聖地・新宿LOFTで初のワンマンライブを開催、約300人を動員した。この日はバックバンドを迎えた編成を披露。以降、冒頭の5月24日のANTIKNOCK公演を含め、多くのライブをバンド編成で行っている。

「バンドになったし、頭のなかでは1万人くらいに伝わるような世界観でやっているので、そのくらいまで持っていけたらいいなって。作ってる段階では、こぢんまりしているのではなく、広いところでやっているイメージがあります。そこまで届けられればいいなって思いますね」

活動を続けることで変化した"いま"


アイドル活動を続けることで、ほのかとしなもんは、ひきこもりではなくなった。

ほのか「いまは、ひきこもりじゃなさすぎるよ(笑)。生きるのは楽じゃないけど、みんなのこどもちゃんの活動は苦ではないですね。気を遣わないでできるし、私たちにはこれしかないから」

しなもん「辞めたら、ほかになにもなくなっちゃう。たまに、ひきこもりたくなるけどね(笑)」

ほのか「最近、病んでないもんね。歌詞にも『死にたい』って書かなくなった気がする」

Jin「文章や歌詞もおとなになった。それはそれで、これからどう変わっていくのか楽しみだよね」

(取材・文 : 前田将博、撮影 : 二宮ユーキ、動画編集 : 滝梓、取材協力 : 新宿LOFT、編集 : LINE NEWS編集部)

BACK DROP BOMBライブ情報

「1[wˈʌn] -ワンマンライブ-」
2018年10月26日(金)
渋谷WWW X
開場 18:30 / 開演 19:30
前売り : 3300円(ドリンク代別)
BACK DROP BOMB オフィシャルサイト
Jin Tanaka オフィシャルサイト

みんなのこどもちゃんライブ情報

「壁のない世界 -結合-」
2018年6月28日(木)
新宿ANTIKNOCK
開場 19:00 / 開演 19:30
入場 : CD特典の優待券or当日券
当日 : 2500円(ドリンク代別)
みんなのこどもちゃん オフィシャルサイト

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