本記事は、坪田充史氏の著書『総理大臣の通訳が教える! マルチリンガルになるための”英語”最速マスター術』(合同フォレスト)の中から一部を抜粋・編集しています
原因は日本人の耳にあった
いくら努力しても日本人には英語が向いていないということが、科学的に証明されています。そういうとかなりショックですよね。しかし、事実なのです。
聴覚・心理・音声学国際協会会長であるアルフレッド・トマティス博士の研究により、それが明らかにされました。トマティス博士は次の3つの原則を唱えています。
(1)耳で聴き取れない音は発音できない
(2)聴覚の改善によって発音にも変化があらわれる
(3)聴覚の改善後、発音の改善も定着させることができる
さらに、トマティス博士は、言語として優先的に使われる音の周波数帯があり、この周波数帯を「言語のパスバンド」とよびました。
周波数とは、音の波です。空気を振動させて伝わるこの波により、言葉や音が伝わるわけです。
生まれたばかりの赤ちゃんは、人間の耳が聴き取れる20〜2万ヘルツの間のパスバンドを持ち、そのすべてを聴き取れるだけの潜在能力があることがわかっています。
しかし、2歳になるころまでに、周りの話す人の言語を聞いているうちに、日本人の場合は日本語の周波数帯にパスバンドが固定され、不要とされる帯域を聴き取るのに必要な脳細胞は死滅してしまいます。そうなると、日本語のパスバンドと同じ帯域ではない言語を聞いても「言語」として認識できず、ただの「雑音」になってしまうのです。聴き取れず、言語として認識できなければ、当然、発音できるようになりません。
つまり、日本人は英語の発音が雑音のようにしか聞こえないということなのです。
実際、幼児期に英語を覚えさせると簡単に話せるようになりますが、それを過ぎるとかなり困難になります。それは、日本語の周波数帯にパスバンドが固定される前ならばいいのですが、その後だと困難になるということです。
トマティス博士の研究によって発見された各言語の周波数帯は、図1–2の通りです。
英語のパスバンドは2000〜1万5000ヘルツ。一方、日本語のパスバンドは125〜1500ヘルツ。つまり、トマティス博士の研究により、日本語と英語ではパスバンドに大きな溝があり、日本人の脳では英語が聴き取れないことがわかったのです。
アメリカ人やイギリス人の声って、日本人よりも少し高い気がしませんか?頭の上でキンキン鳴っているような感じです。日本語と英語は周波数帯に交わる部分がちっともないのですから、当たり前ですよね。そのため、日本人には英語は雑音にしか聞こえず、聴き取れないので発音することもできません。
これが、日本人の実に7割以上の人がどれだけ努力しても英語ができない理由の真相です。こればかりは脳細胞レベルの話なので、どうしようもありません。幼少時代に英語に触れることができて、脳細胞の死滅を防げた帰国子女やハーフの方を別とすれば、日本人は英語を言語と認識しない脳を持っているために英語ができなかったということ。努力が足りなかったり、自分が悪かったわけではないのです。
日本人が英語ができない理由には、実はこのような真相があったのです。ただ、ここだけを聞くと、「英語ができない=外国語ができない」と勘違いして語学マスターをあきらめてしまう人が出てしまうかもしれません。
安心してください。このデータは、単純に「日本人の脳では、英語を言語として認識できない」といっているだけで、すべての外国語ができないわけではありません。むしろ、日本語の「パスバンド」と同じ周波数帯の外国語であれば、日本人は簡単に理解でき、話せるようになるのです。
「英語以外で習得して役に立つ外国語があるのか?」と疑問に思う人もいるでしょう。実は、それがあるのです。世界20ヵ国以上で4億人以上の人たちが使い、アメリカのロサンゼルスでは47%もの人が日常的に話している言語が、いま「未来の言語」として世界的に注目されているスペイン語なのです。
図1–2をもう一度見てください。日本語とスペイン語は完全に重なっています。つまり、周波数帯が近いということです。発音もかなり日本語に近いのです。
信じられないかもしれませんが、スペイン語は、ローマ字読みで普通に発音すればちゃんと相手に通じます。実際に、スペイン語圏の人と話してみてください。伝わることにびっくりするはずです。
たとえば、次の4つの単語をスペイン語で発音してみてください。
(1)PERFECTO
(2)CHOCOLATE
(3)AMIGO
(4)GRANDE
(1)「パーフェクト」と読もうとする必要はありません。そのままローマ字読みで、「ペルフェクト」です。意味は英語と同じ「完璧」。英語から想像しやすいですね。
(2)「チョコレート」と読みたいところですが、ローマ字読みだと「チョコラテ」。この読み方で完璧なスペイン語になります。意味は同じ「チョコレート」です。
(3)「アミーゴ」。この言葉は聞いたことがある人も多いと思いますが、スペイン語で「友達」という意味です。
(4)「グランデ」。有名コーヒーショップでサイズの大きいものを指しますが、これはスペイン語で「大きい」という意味です。
このように「ローマ字読みでそのまま発音できる」のがスペイン語の大きな特徴です。スペイン語をまだ勉強していない人でも、単語を見たまま発音して、ネイティブの人から「発音が上手だね!」と絶賛されます。日本人はスペイン語を完璧に発音することが可能なのです。
英語が話せない最大の原因が日本人の耳にあったわけですが、それを克服する鍵が実はスペイン語にあります。スペイン語は聴き取りやすいし、発音しやすい言語ですから日本人でも話せるようになります。
スペイン語が話せるようになったら、外国語に対するコンプレックスが消えていくはずです。
坪田充史(つぼた・あつし)
コロンビア・ハベリアナ大学国際関係学部大学院修士課程卒。一般社団法人ことばインターナショナル代表理事。プレジデンシャルアカデミー校長。安倍総理とコロンビア大統領の拡大首脳会議同時通訳(2014年)、高円宮妃殿下、各国大使、大臣などの通訳経験を生かし、語学の習得だけでなく、語学スキルを仕事にして世界で活躍する方法を教えるプレジデンシャルアカデミーを立ち上げる。その後、わずか3年で、日本全国はもちろん世界18ヵ国で5万人以上(スペイン語では日本一)の会員数に。現在、各国大使館の信頼を得て、多岐にわたる事業を積極的に展開。日本と世界を結びつける事業の一方で、オリンピックをはじめとする国際イベントでの通訳の育成・輩出を行っている。2020年東京オリンピック・パラリンピック:コロンビア、アルゼンチン選手のスポンサー。2020年東京オリンピック:日本政府内閣官房ホストタウンアドバイザー。