世界で活躍する知られざる日本人を取材し、ナゼそこで働くのか、ナゼそこに住み続けるのかという理由を波瀾万丈な人生ドラマと共に紐解いていく「世界ナゼそこに?日本人~知られざる波瀾万丈伝~」(毎週月曜夜9時)。「テレ東プラス」では、毎回放送した感動ストーリーを紹介していく。
漂流物の家で暮らし、砂で体を洗う驚きのゼロ円生活
放送開始以来、135カ国以上の国々を取材し、秘境や辺境で暮らす日本人を紹介してきた「ナゼそこ」。実は日本にも「ナゼそこに?」と思わずにはいられない、秘境で暮らす人々がいる。彼らが秘境に住み続ける理由を探ると、そこには衝撃の物語が!
今回はそんな秘境の一つ、沖縄の離島で「0円生活」を送る日本人に注目。島の人から"仙人"と呼ばれているというその人物が住んでいる、沖縄県東部に位置する宮城島で聞き込みを開始。
すると、いきなり仙人を知る島の人を発見! 仙人のところに案内してくれるとのことだが、歩き始めて1分で休憩し始め、泡盛をグビリ。そのまま泥酔してしまったので、別の人を探すことに。
近くの港で話を聞くと、仙人がいるのは海からしか行けない場所らしい。カヤックを借りて漕ぎ続けること40分、目的地の海岸に到着!
浜辺には釣り竿が立ててあり、人が生活している気配。森の奥に分け入ると、まさに仙人のような長いヒゲを蓄えた男性が!
この人物こそ、沖縄で「0円生活」を送っている、じょうぐち はるおさん(74歳)。通称は名字からとってジョージさん。よく海に潜っているので「亀仙人」とも呼ばれているそう。
仙人の0円生活1:家は漂流物ハウス
早速はるおさんの自宅に伺うと、なんと台風などで海に流れ着いたものを使い手作りした、漂流物ハウス! 材料費、建築費はもちろん0円。電気も通っていないので電気代もなし。
生活用品も、捨てられていた物や漂流物を再利用。例えば釣り竿は折れていた竿を修理して使っている。食料も、芋を植えたりミカンを採ったりと、自給自足。
「人間一人で生きようと思えば何でもできるよ」というはるおさん。聞けば、この生活を続けてもう45年になるとか。しかも、年金も生活保護も一切もらっていない。陸の孤島でたった一人、自給自足の0円生活を続けてきたのだ。
仙人の0円生活2:砂は石鹸よりいい
そんなはるおさんのお気に入りの場所は、美しい海。1日の大半を浜辺で過ごすという。すると突然服を脱ぎ出し、全裸で海にダイブ! 気持ち良さそうに泳ぎ始めた。
と、ここではるおさんが驚きの行動に! なんと砂で体をこすり始めたのだ。砂の摩擦によって脂気がキレイに取れるのだとか。
日々限られた物で生活するはるおさん。しかし、一体ナゼ45年間も一人で「0円生活」を続けてきたのか? 「人間は信用しない、お金に操られる生き物」というはるおさんだが、彼に何があったというのか? その謎を探るべく生活に密着した。
朝5時、まだ暗い中ではるおさんが手作りランプに火をつける。石油を吸い上げる芯は、細く切ったTシャツにラジオのアンテナを縛って作ったもの。
仙人の0円生活3:落ちていたホースで水を引く
日が昇ると水汲みへ。水道がないので湧き水を汲んでいるのだが、落ちていたホースを使い、自ら山の水源から水を引いているのだとか。
この湧き水には石灰が多く含まれており、45年間同じ所にバケツを置いていたら徐々に石灰が固まっていき......なんとプラスチックだったバケツが化石のようになってしまったという。
そしてここでもまた服を脱ぎ始めたはるおさん。この場所での洗濯と水浴びが、朝の日課なのだ。
朝食は、島の人からもらったお米。サトウキビの収穫を手伝ったお礼にもらっているそうで、このお米を煮込んでお粥を作る。現在はるおさんには歯がほとんどなく、数年前から柔らかいものしか食べられない。
実は、主食にしていた魚が、台風の影響か3ヶ月ほど獲れていないという。そのため、自生したサツマイモの葉と、島の人にもらったお米でなんとかしのいでいる。
仙人の0円生活4:灯油で虫除け
そんなはるおさんが、また驚きの行動に! 取り出した瓶に入った液体を、顔に塗り始めた。これはなんと灯油! はるおさん曰く、灯油を塗ると蚊が寄ってくる成分が薄まり、虫除けになるのだとか(決して真似をしないで下さい)。
ある時、木の下でのんびりと過ごそうと、浜辺に向かったはるおさん。
「人生もう全て嫌になってしまって、こうやって一人暮らしやるんだからね」
スタッフとのやり取りの中ではるおさんが口にした言葉。一体何があったのか......?
お手製の煙管でもらい物のタバコをふかしていると、突如大量の鳥が! 3ヶ月ぶりに魚が来ているかもしれないと、期待に胸を膨らませて海岸へ。網を投げると、なんと大漁! ミズンという沖縄の小魚で、ニシンのような味がするという。
早速流木と、漂流物の雑誌で火を起こし、獲れた小魚を網焼きに。味付けは海水の塩味のみだ。はるおさんは早速久々の小魚を頬張り、「歯がなくてもイケる」と満足気。
こうして、年金も生活保護もなく、陸の孤島で45年間一人暮らしをしてきたはるおさん。しかし、一体ナゼこの自給自足のゼロ円生活をすることになったのか? その裏には、波瀾万丈の人生ドラマがあった。
伯父に振り回された人生
1945年、現在も暮らしている沖縄県宮城島に生まれたはるおさん。父はアメリカの先住民で米軍の大工、母はこの島の人だ。はるおさんが生まれてすぐ両親は離婚、母子家庭で育った。
当時は終戦直後で、青い瞳を持つはるおさんはいじめられていたという。さらに母親が新しいアメリカ人の夫と蒸発し、行き場を失った5 歳のはるおさんは親戚の伯父の元へ。この伯父に人生をかき回されることになる。
学校にも行かせてもらえず、畑などで働かされること10年。15歳の時に転機が訪れる。伯父が、突然米軍の兵隊の養子になれと言い出したのだ。しかしこの話には裏が。
実は、沖縄在住のアメリカ人が、自分の息子の身代わりとして戦争に行く養子を探しており、その話を知った伯父がはるおさんを売ったのだ。こうして日本国籍でありながら、当時戦争中だったベトナムに送られてしまう。
21歳の時、戦争から戻り宮城島の伯父さんの家に帰ってきたはるおさん。ある日アメリカの弁護士から、蒸発した母親が亡くなったと電話があり、そこで衝撃の事実を知ることに。
なんと、母親がはるおさんのために学費を送っていたという。そしてそのお金は、はるおさんに知らされることなく伯父さんが使い込んでいたのだ。
この一件で人間不信に陥ったはるおさんは、その後マグロ漁船の船員に。朝から晩まで働き手にした大金で、陸に戻ればクラブで豪遊三昧。周囲からチヤホヤされ、いつしかお金のことばかり考えるように。嫌いだった伯父と同じ、お金に囚われる人間になってしまっていた。
そんな状況から逃げ出すため、そして自分がどういう生き方をすればいいか確かめるため。誰にも縛られず、お金にも縛られない、人に操られることもない山奥に向かったはるおさん。
お金は人を変える。本当に大切なものとは何なのか。その答えを探すため、はるおさんは29歳の時に、この陸の孤島で暮らし始めたのだ。
この生活を45年続けたはるおさん。今の生活は全てのものに縛られない、自由で最高だという。では、最終的にはどうなりたいと考えているのか?
「どうにもならん。ただ人間が自然界と一体化して終わる。母親が生まれた島でうちは終わろう」
沖縄の宮城島には、お金に縛られず、大自然の中で人生の生きがいを見つけた一人の日本人がいた。